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相続・ビットコインやイーサリアム・リップル・ソラナなどの暗号資産が取り出せない 秘密鍵がわからない場合の対処法・弁護士吉津和輝

 

相続・遺産分割

相続・ビットコインやイーサリアム・リップル・ソラナなどの暗号資産が取り出せない 秘密鍵がわからない場合の対処法

弁護士 吉津和輝(茨城県弁護士会所属)市川法律事務所に所属する弁護士です。

相続手続きを進める中で「故人がビットコインやイーサリアムなどの暗号資産を持っていたようだが、パスワードや秘密鍵がわからず取り出せない」というケースが増えています。管理の方法によって対応が大きく異なります。状況別の対処法を解説します。

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Q「秘密鍵」とは何ですか?なぜ重要なのですか?
A
秘密鍵(プライベートキー)とは、暗号資産の所有者であることを証明し、資産を移転・引き出すために必要な暗号コードです。銀行のキャッシュカードの暗証番号に相当しますが、銀行と異なり、秘密鍵を紛失した場合に取引所や第三者が代替手段を提供することができない点が根本的に異なります。

暗号資産の管理方法には大きく2種類あります。
管理方法 内容 秘密鍵不明時の対応
取引所管理
(ホステッドウォレット)
Coincheck・bitFlyerなど国内取引所のアカウントで管理。取引所が秘密鍵を管理する 取引所への相続手続きで対応可能。IDやパスワードが不明でも、相続人として必要書類を提出すれば手続きできることがある
個人管理
(アンホステッドウォレット)
ハードウェアウォレット(Ledger・Trezor等)やソフトウェアウォレット(MetaMask等)で自ら管理。秘密鍵は本人のみが保有 秘密鍵またはリカバリーフレーズ(シードフレーズ)がわからなければ、技術的に取り出すことは事実上困難
故人がどちらの方法で管理していたかを確認することが最初のステップです。スマートフォンやパソコンに取引所アプリがインストールされていれば取引所管理の可能性が高く、USBデバイス(ハードウェアウォレット)が遺品の中にあれば個人管理の可能性があります。
Q国内取引所で管理していた場合、パスワードがわからなくても手続きできますか?
A
国内の暗号資産取引所(暗号資産交換業者)に口座があった場合、多くの取引所ではIDやパスワードが不明であっても、相続人として必要な書類を提出することで相続手続きを進められます。ただし、取引所によって対応状況は異なり、相続手続きに対応していない取引所や手続きが煩雑な取引所もあります。また取引所がすでにサービスを終了している場合は手続き自体ができないケースもあります。書類の不備や相続人間の調整により数か月以上かかることもあるため、早めに各取引所の公式サイトで手続き方法を確認することをお勧めします。

一般的に必要な書類は以下のとおりです。
  • 被相続人の死亡を証明する書類(死亡診断書・戸籍謄本等)
  • 相続人全員が確認できる書類(戸籍謄本・法定相続情報一覧図等)
  • 遺産分割協議書または遺言書(相続人が複数の場合)
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 代表相続人の本人確認書類
取引所によって手続き書類・方法が異なります。まず取引所の公式サイトで「相続手続き」のページを確認し、問い合わせ窓口に連絡するところから始めてください。取引所名がわからない場合は、故人のメール受信履歴・スマートフォンのアプリ・銀行口座への入出金履歴(取引所への送金履歴)から特定できることがあります。
Q個人ウォレットで管理していた場合、秘密鍵を見つける方法はありますか?
A
個人ウォレット(ハードウェアウォレットやMetaMask等)で管理していた場合、秘密鍵またはリカバリーフレーズ(12〜24個の英単語で構成されるバックアップコード)がわかれば資産を取り出せる可能性があります。以下の場所を確認してください。
  • 遺品・書類の中:リカバリーフレーズは紙に印刷・手書きして保管していることが多いです。手帳・ノート・金庫の中・貸金庫を確認してください。
  • パソコン・スマートフォンの中:メモ帳・テキストファイル・パスワード管理アプリの中に保存されている場合があります。ただしスマートフォンのロック解除ができない場合は、メーカーや通信キャリアへの問い合わせ、または専門業者への依頼が必要です。※専門業者等でも必ずロックが解除できるとは限りません。
  • ハードウェアウォレット本体:遺品の中にUSBデバイスがあればハードウェアウォレットの可能性があります。
  • クラウドストレージ・メール:故人がGoogleドライブ・Dropbox等に保存していた場合があります。Googleアカウント等の引き継ぎについては各サービスの相続・アカウント引き継ぎ手続きを確認してください。
⚠️ リカバリーフレーズが見つからない場合、原則として秘密鍵の復元は不可能です。ただし端末にログイン情報が残っている場合など、ごく例外的にアクセスできるケースもあります。有効な手がかりがない場合、専門業者でも復元は極めて困難です。また、費用を請求しながら実際には対応できない悪質な業者も存在するため、依頼前に慎重に確認することをお勧めします。
Q秘密鍵がわからず取り出せない場合でも、相続税はかかりますか?
A
これは実務上も論点となっている問題です。国会での政府答弁では「秘密鍵がわからず取り出せない場合でも、財産的価値がある以上、原則として相続税の課税対象になる」という方向性が示されています。
現時点での実務的な対応としては、取り出せない可能性が高い場合でも申告が必要かどうか、どのような申告が必要なのかについては、税理士に個別に相談することをお勧めします。
Q取り出せない暗号資産があるからといって、相続放棄すればよいですか?
A
相続放棄は慎重に検討する必要があります。相続放棄は、プラスの財産・マイナスの財産(借金等)を含む被相続人の全財産を対象とするものであり、「暗号資産だけを放棄する」ことはできません(民法第938条・第939条)。

取り出せない暗号資産があっても、他に不動産・預貯金・有価証券など価値のある財産がある場合は、相続放棄をすることでそれらも失うことになります。

なお、相続放棄の熟慮期間は、相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から原則3か月です(民法第915条第1項)。暗号資産の調査・手続きに時間がかかり熟慮期間が足りない場合は、家庭裁判所に期間の伸長を申し立てることができます。
取り出せない暗号資産のみが問題であれば、相続放棄よりも「限定承認」(プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐ制度)を選択する方が有利な場合もあります。ただし限定承認は相続人全員で行う必要があるため、実務上の難易度は高くなります。いずれも3か月の期間内に判断する必要があるため、早めに弁護士に相談することをお勧めします。
【根拠】民法(明治29年法律第89号)第915条第1項(熟慮期間)・第938条(相続放棄の方式)・第939条(相続放棄の効力)・第922条(限定承認)
Q海外取引所に口座があった場合はどうなりますか?
A
海外の取引所(海外に拠点を置く暗号資産交換業者)の場合、日本の法制度が直接及ばないため、相続手続きが困難になるケースがあります。

具体的には以下のような問題が生じます。
  • 手続きがすべて外国語(英語等)で行われる
  • 日本の戸籍謄本・印鑑証明書等が受け付けられない場合がある
  • 取引所によっては相続手続き自体に対応していない場合がある
  • 本人確認(KYC)が未完了の場合、相続人による手続きが事実上困難になることがある
  • 口座が突然凍結されるリスクがあり、その場合の解除手続きも複雑になる
  • 取引所が秘密鍵を管理していない場合は、秘密鍵が必要になる
海外取引所の場合は、当該取引所のサポートページを確認し、相続手続きの対応状況を問い合わせることが先決です。対応が困難な場合は、弁護士に相談の上で対応を検討することをお勧めします。
Q今後のために、暗号資産を持っている人が生前にできる対策はありますか?
A
暗号資産を保有している方は、以下の生前対策をとることで、相続人の負担を大幅に軽減できます。
  • 利用している取引所名・登録メールアドレスをリスト化する:取引所の名称と登録メールアドレスだけでも残しておくと、相続人が手続きの取っかかりをつかめます。
  • 個人ウォレットのリカバリーフレーズを安全な場所に保管する:紙に手書きして封筒に入れ、金庫・貸金庫に保管する方法が比較的安全です。デジタルデータのみでの保管は端末破損・紛失のリスクがあります。
  • 可能な範囲で国内取引所に集約する:個人ウォレットより国内取引所での管理の方が、相続手続きが格段に容易になります。
  • エンディングノートや遺言書に記載する:取引所名・保管場所の情報をエンディングノートに記載しておくことで、相続人が把握しやすくなります。ただしパスワードや秘密鍵そのものをエンディングノートに記載する場合は、情報漏えいのリスクとのバランスを考慮してください。
暗号資産は価値が大きく変動します。特に高額の暗号資産を保有している場合は、相続税・所得税の観点も含めて、生前に弁護士・税理士に相談しておくことをお勧めします。

「故人がビットコインを持っていたようだが秘密鍵がわからない」「取引所への相続手続きの進め方がわからない」「暗号資産を含む遺産分割で相続人間で揉めている」など、相続に関するご相談はお気軽にどうぞ。状況をお聞きした上でご説明します。

弁護士 吉津和輝
茨城県弁護士会所属
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本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別事案への法的アドバイスではありません。具体的なご相談は弁護士・税理士にお問い合わせください。なお、本記事の内容は2026年4月時点の情報に基づいています。暗号資産に関する法律・税務の取り扱いは今後変更される可能性があります。