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デジタル遺産(暗号資産・ポイント・マイル)は相続できるか 種類別の扱いと生前にできる対策・弁護士吉津和輝

相続・遺産分割

デジタル遺産(暗号資産・ポイント・マイル)は相続できるか
種類別の扱いと生前にできる対策

弁護士 吉津和輝(茨城県弁護士会所属)市川法律事務所に所属する弁護士です。

キャッシュレス化が進む中、亡くなった方がビットコインなどの暗号資産や大量のポイント・マイルを保有していたケースが増えています。これらは相続できるのか、相続税はかかるのか、また気づかないまま失ってしまうリスクはないか——種類ごとに整理して解説します。

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Qそもそも「デジタル遺産」とは何を指しますか?
A
明確な法律上の定義はありませんが、一般的にデジタル遺産とは、亡くなった方がインターネット上やスマートフォン・パソコン内に保有していた財産的価値のある電子データ・アカウントをいいます。主なものとして以下が挙げられます。
種類 具体例 相続の可否(概要)
暗号資産 ビットコイン、イーサリアム等 原則・相続可
ネット銀行・ネット証券 楽天銀行、SBI証券等の口座 原則・相続可
電子マネー(QR・交通系) PayPay、Suica等 原則・相続可
マイル ANAマイル、JALマイル等 規約次第で可
ポイント 楽天ポイント、Vポイント、PayPayポイント等 原則・相続不可
電子マネー(小売系) WAON、nanaco等 規約次第
SNSアカウントや有料サービスの購読(サブスクリプション)なども広い意味でデジタル遺産に含まれますが、財産的価値の観点からは上表のものが特に問題になります。
【根拠】民法(明治29年法律第89号)第896条:「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。」
Q暗号資産(ビットコイン等)は相続できますか?相続の方法を教えてください。
A
はい、暗号資産は相続財産として扱われ、相続の対象となります。暗号資産は資金決済に関する法律(資金決済法)上、財産的価値を持つものとして定義されており、現金や有価証券と同様に遺産分割の対象となります。相続人が複数いる場合は遺産分割協議を行います。

ただし、暗号資産の相続には実務上の大きな落とし穴があります。
  • 秘密鍵・ウォレット情報がわからないと実質的に取り出せない:取引所(国内の暗号資産交換業者)で管理されている場合は取引所への相続手続きで対応できますが、個人のウォレットで管理している場合、秘密鍵やパスワードがわからなければ法律上は相続財産でも実質的に取り出せません。
  • 海外取引所の場合は手続きが困難:日本の法制度が及ばない海外取引所では、相続手続きの対応が難しいケースがあります。
  • 相続税の評価は死亡時の時価、遺産分割時の評価はずれることがある:相続税の計算は相続開始日(被相続人が亡くなった日)の時価で行います。一方、遺産分割協議での具体的な分配額の取り決めに際して、当事者間で分割時の時価を参考にするケースもあり、死亡から分割成立まで数か月以上かかる場合に価格が大きく変動すると、「相続税は高い価格で計算されているのに実際の資産価値は暴落していた」というズレが生じることがあります。価格変動の激しい暗号資産では特に注意が必要です。
  • 慎重な検討が必要な場合:特に暗号資産については、被相続人に債務がある場合や相続財産全体の内容によっては、相続放棄限定承認(相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務を弁済する制度・民法922条)を含めた検討が必要となる場合があります。税務上の負担についても含め、安易に承認せず、まず弁護士・税理士に相談することをお勧めします。
実務上、スマートフォンのロックが解除できず、暗号資産や電子マネーの存在自体を把握できないケースが見られます。故人のスマートフォンのロック解除ができない場合は、専門業者への依頼を検討してください。なお、メーカーや通信キャリアへの問い合わせでは対応が難しいケースがほとんどです。
Qポイントは相続できますか?(楽天ポイント・Vポイント・PayPayポイント等)
A
原則として、ポイントは相続できません。多くのポイントサービスでは利用規約により相続・譲渡が禁止されており、会員が死亡した時点でポイントが失効する扱いとなることが一般的です。

法律上の根拠としては、ポイントは「その会員資格を持つ本人だけが受け取れるサービス」として付与されるものであり、民法第896条の「被相続人の一身に専属したもの」に該当する可能性があるとして相続の対象外とする考え方が取られています。ただしこれは法律上確定した解釈というよりも、各事業者が利用規約で相続・譲渡を禁止することによって実質的に相続できない扱いとなっているという側面が強いといえます。

ただし、一部のサービスでは家族間でのポイント合算・移転を認めている場合もあります。
ポイントの扱いはサービスごとに規約が異なり、また規約が改定されることもあります。インターネット上の情報が古い場合があるため、各サービスの公式サイトで最新の規約を確認してください。
Q航空会社のマイル(ANAマイル・JALマイル等)はどうなりますか?
A
マイルは、航空会社の会員規約によって相続できる場合があります。ANAおよびJALについては、法定相続人が所定の手続きを行うことで、亡くなった会員のマイルを承継できる旨を規約に定めています。

ただし、手続きには期限があります。ANAの会員規約では、亡くなってから一定期間内に手続きを行わない場合にマイルが失効する旨が定められています(手続きの詳細は各社の公式サイトでご確認ください)。

マイルは長年の旅行や出張で相当額が積み上がっている場合があります。相続手続きの中でも見落とされやすい資産ですので、故人のマイレージ会員登録の有無を早めに確認することをお勧めします。
マイルは相続できる場合でも、遺産分割協議の対象としてどう取り扱うか(相続人間での公平な分配方法)については別途検討が必要です。マイルは現金と異なり、分割しにくい性質がある点に注意が必要です。
QPayPayなどの電子マネーは相続できますか?(PayPay・Suica・WAON等)
A
電子マネーは種類によって扱いが異なります。
種類 代表例 相続の扱い
QR決済系 PayPay、楽天Pay等 残高は財産的価値を持ち、相続手続きの対象になることが多い
交通系電子マネー Suica、PASMO等 残高は相続財産として扱われることが多い。手続きは各事業者に確認
小売系電子マネー WAON等 相続・払い戻しを認めていないケースがある。各社の規約を確認する必要がある
電子マネーの残高は、チャージした金額(現金の代替)という性質から、暗号資産やポイントとは異なり相続財産として扱いやすい側面があります。ただし手続き方法は各事業者によって異なるため、残高が多額の場合は早めに各社の問い合わせ窓口に確認することをお勧めします。
Qデジタル遺産を見落とさないために、生前にできる対策はありますか?
A
デジタル遺産は、通帳や不動産登記簿のように紙で残らないため、相続人が存在を把握できないまま失われてしまうリスクがあります。以下の生前対策が有効です。
  • 「デジタル資産リスト」を作成しておく:利用している取引所・サービス名・おおよその残高・ログインに必要な情報(取引所名・登録メールアドレス等)をまとめておく。パスワードそのものの記載は情報漏えいのリスクがあるため、パスワードマネージャーを活用するなど安全な管理方法を検討する。
  • 暗号資産は国内取引所に集約する:個人のウォレットで管理している暗号資産は、相続人がアクセスできない場合に実質的に失われます。可能な範囲で国内の暗号資産交換業者の口座で管理することで、相続手続きが容易になります。
  • ポイントは生前に使い切るか移転する:相続できないポイントは、生前に使い切るか、移転・合算できるサービスを活用して家族に移しておくことが有効です。
  • エンディングノートや遺言書に記載する:デジタル資産の存在と保管場所をエンディングノートに記載したり、遺言書で特定の相続人に承継させる旨を記載したりすることで、相続人が把握しやすくなります。
  • マイルは手続き期限を家族に伝えておく:相続できるマイルには手続き期限があります。家族が期限内に手続きできるよう、事前に伝えておくことが重要です。
【参考】相続放棄の熟慮期間は、相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならないとされています(民法第915条第1項)。デジタル資産に多額の負債が付随するケース(暗号資産の損失等)では、相続放棄の検討が必要な場合もあります。
Q家族が亡くなり、デジタル遺産があると気づいた場合、どのように対応すればよいですか?
A
以下の順で対応することをお勧めします。
  • 故人のスマートフォン・パソコンを確認する:インストールされているアプリ(取引所アプリ・電子マネーアプリ等)やメールの受信履歴から、デジタル資産の存在を把握します。
  • 取引所・サービス各社に相続開始の連絡をする:国内の暗号資産取引所や電子マネー事業者に連絡し、必要な手続き書類を確認します。一般的に戸籍謄本・除籍謄本・相続人全員の印鑑証明書・遺産分割協議書等が必要です。
  • マイルの手続き期限を確認する:期限内に手続きが必要なため、早期に各航空会社の公式サイトで確認します。
  • 相続税申告に含める:暗号資産・電子マネーの残高は相続税の対象となります。相続開始日の時価で評価し、相続税申告書に計上が必要です。相続税の申告期限は相続開始を知った日の翌日から10か月です(相続税法第27条第1項)。
デジタル遺産が多額の場合や、暗号資産の税務処理が複雑な場合は、弁護士・税理士の双方に相談することをお勧めします。弁護士は遺産分割協議の進め方や相続放棄の検討を、税理士は相続税・所得税の申告を担当します。

「故人が暗号資産を持っていたようだが手続きがわからない」「デジタル資産を含む遺産分割で揉めている」「生前にデジタル資産の対策をしておきたい」など、相続に関するご相談はお気軽にどうぞ。状況をお聞きした上でご説明します。

弁護士 吉津和輝
茨城県弁護士会所属
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本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別事案への法的アドバイスではありません。具体的なご相談は弁護士にお問い合わせください。