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生命保険金は特別受益になる?|守谷・取手・常総・つくばみらい・柏 — 遺産分割での「持ち戻し」と最高裁の判断枠組み

相続・遺産分割 | 守谷・取手・常総・つくばみらい・柏

生命保険金は特別受益になる?
— 遺産分割での「持ち戻し」と最高裁の判断枠組み

弁護士 吉津和輝 / 茨城県弁護士会所属
弁護士 吉津和輝(よしつ かずき)
茨城県弁護士会所属(登録番号57714)/2018年12月弁護士登録
主な取扱分野:相続・遺産分割・家族法・企業法務
親御さんの相続に直面している方へ。「きょうだいの一人だけが多額の生命保険金を受け取っていた」「自分が受取人になっているが、他の相続人から不公平だと言われている」——遺産分割では、こうした生命保険金の扱いがよく問題になります。本記事では、生命保険金が特別受益(持ち戻し)の対象になるのかについて、民法の条文と最高裁の判断枠組みをもとに、考え方を整理します。
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弁護士 吉津和輝(茨城県弁護士会所属)/〒302-0128 茨城県守谷市けやき台3-28-7
Q 親の生命保険金は、遺産分割の話し合いに含めなければいけませんか?
A
結論として、受取人が指定された生命保険金は、原則として受取人固有の財産であり、遺産分割の対象にはならず、特別受益にもあたらないと考えられています。

特別受益とは、共同相続人の中に、被相続人から遺贈を受けた人や、結婚・養子縁組のためあるいは生計の資本として贈与を受けた人がいる場合に、その分を相続分の前渡しとして計算に反映させる仕組みのことです。

死亡保険金は、被相続人の死亡によって受取人がはじめて取得する権利であり、被相続人が生前に持っていた財産そのものではありません。そのため、原則として遺産には含まれず、特別受益(民法903条1項が対象とする生前贈与等)にもあたらないと整理されています。

【根拠】民法(明治29年法律第89号)第903条第1項:「共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。」
なお、相続税の計算では、死亡保険金は「みなし相続財産」として課税対象に含まれます。ただしこれは相続税の計算上のルールであり、遺産分割で誰がいくら取得するかという問題とは別に考えます。
Q 相続人の一人だけが多額の保険金を受け取りました。「不公平だ」と主張できますか?
A
結論として、相続人間に生じる不公平が著しい場合には、例外的に、民法903条の類推適用により、保険金を特別受益に準じて持ち戻しの対象とできる場合があります。

原則は前のQ1のとおりですが、保険金がきわめて高額で、受け取った相続人とそれ以外の相続人との間の差があまりに大きいといった場合にまで、すべて原則どおりに処理すると、かえって不公平が生じることがあります。

この点について、最高裁判所は、保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が、民法903条の趣旨に照らして到底是認することができないほどに著しいと評価すべき「特段の事情」がある場合には、民法903条の類推適用により、その保険金を特別受益に準じて持ち戻しの対象とする、という枠組みを示しました。

原則
受取人固有の財産
遺産分割の対象外。特別受益にもあたらず、持ち戻しの計算には入れない。
例外
特別受益に準じる
不公平が著しいという「特段の事情」があれば、903条の類推適用で持ち戻しの対象に。
— 生命保険金の遺産分割上の扱い(原則/例外) —
【根拠となる判例】最高裁判所第二小法廷決定 平成16年10月29日(平成16年(許)第11号、民集58巻7号1979頁)。被相続人を保険契約者・被保険者とし、共同相続人の一部を保険金受取人とする養老保険契約に基づく死亡保険金請求権と民法903条が問題となった事案で、上記の判断枠組みが示されました。
Q 保険金がいくら以上なら、特別受益に準じて扱われますか?
A
結論として、「いくら以上なら持ち戻す」という明確な金額・比率の基準はなく、個別の事案ごとの総合判断になります。

最高裁は、前述の「特段の事情」があるかどうかについて、次のような事情を総合考慮して判断するとしています。保険金の額だけで自動的に決まるわけではありません。

「特段の事情」の主な考慮要素
① 保険金の額 ② その額の遺産総額に対する比率
③ 被相続人との同居の有無 ④ 介護等への貢献の度合い
⑤ 各相続人の生活実態など、その他の諸般の事情
— 最高裁が示した総合考慮の視点 —

保険金が遺産総額に対してかなり大きな割合を占めるケースほど、不公平が問題になりやすい傾向はあります。一方で、比率が大きくても、同居して介護を担っていたといった事情が重視され、持ち戻しが認められなかった例もあります。実務では比率はあくまで重要な一要素にとどまり、結論は事案ごとに変わります。

⚠️ インターネット上では「遺産の半分を超えると持ち戻し」といった目安が紹介されることがありますが、これは確立した基準ではありません。同じような比率でも結論が分かれるため、ご自身のケースに当てはまるかどうかは個別の検討が必要です。
Q 受取人だった私(保険金をもらった側)は、何に注意すればよいですか?
A
結論として、生前の対策としては「持ち戻し免除の意思表示」や遺言での手当てを検討することが考えられます。受け取った後にもめている場合は、なるべく早い段階で弁護士に相談することが考えられます。

民法903条3項は、被相続人が前2項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思に従うと定めています。これは「持ち戻し免除の意思表示」と呼ばれ、被相続人が「この財産は相続分の計算に含めなくてよい」という意思を示していた場合には、その意思が尊重されるという趣旨です。生命保険金を特定の相続人に確実に残したいという意向がある場合には、遺言などで意思を明確にしておくことが対策として考えられます。

【根拠】民法(明治29年法律第89号)第903条第3項:「被相続人が前二項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思に従う。」
相続税の計算上、死亡保険金には非課税枠(法定相続人の数に応じた一定額)が設けられているなど、税務上の取り扱いがあります。相続税の具体的な計算や申告については税理士にご相談ください。
Q 死亡退職金や遺族年金も、生命保険金と同じように考えますか?
A
結論として、死亡退職金や遺族年金は、受給権者固有の権利として遺産分割の対象や特別受益にあたらないと扱われることが多いものの、制度や規程の内容によって判断が分かれ得るため、個別の確認が必要です。

死亡退職金は、勤務先の退職金規程などで受給できる人の範囲や順位が定められていることがあり、その定め方によって、被相続人の遺産として扱うべきか、受給権者固有の権利として扱うべきかの判断が変わり得ます。

公的な遺族年金などの遺族給付も、受給権者自身の権利として支給されるもので、原則として遺産分割の対象にはならないと考えられます。いずれも、生命保険金と同様に「原則は遺産分割の対象外だが、事情によっては別途の検討が必要」という整理になり、ケースごとに確認することが大切です。

Q 保険金をめぐって遺産分割でもめています。どこに相談すればよいですか?
A
結論として、相続人同士の話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所の遺産分割調停を利用する方法があります。その前提として、見通しの整理のために弁護士に相談することが考えられます。

保険金が特別受益に準じて持ち戻しの対象になるかどうかは、前述のとおり多くの事情を総合して判断されるため、証拠の整理や主張の組み立てがポイントになります。話し合いで解決しない場合には、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立て、調停委員を交えて協議を進めることになります。

茨城県南部・千葉県北西部では、家事事件を取り扱う家庭裁判所は地域によって分かれています。

守谷市・取手市・龍ケ崎市・牛久市
→ 水戸家庭裁判所 龍ケ崎支部
つくばみらい市・つくば市・土浦市
→ 水戸家庭裁判所 土浦支部
常総市
→ 水戸家庭裁判所 下妻支部
柏市・我孫子市・野田市(千葉県側)
→ 千葉家庭裁判所 松戸支部
— 家事事件を取り扱う家庭裁判所(地域別) —
遺産分割調停の申立先は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所、または当事者が合意で定める家庭裁判所が原則です。事件の種類によって提出先が異なる場合もあるため、実際の申立てにあたっては、お近くの裁判所に確認するか、弁護士にご相談ください。
守谷・取手・常総・つくばみらいエリアの相続でよくあるご相談

TX沿線・常磐線沿線のこのエリアでは、ご両親が長く住まわれた自宅の土地建物が遺産の大半を占め、預貯金は多くない、というご家庭が少なくありません。そうしたケースで、親と同居していたお子さんが生命保険金の受取人になっていると、不動産を分けにくい分だけ、保険金の有無が相続人同士のバランスに大きく影響しやすくなります。「自宅は残したいが、きょうだい間の公平も保ちたい」というご相談は、まさにこの地域で多く寄せられるテーマです。

CONTACT

生命保険金が遺産分割でどう扱われるかは、保険金の額や相続人の状況など、個別の事情によって結論が変わります。当職が、まず状況をお聞きした上で、考えられる見通しと進め方をご説明します。受取人になった方からのご相談も、不公平を感じておられる方からのご相談も、いずれもお受けしています。

弁護士 吉津和輝
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参考資料・情報源

e-Gov法令検索 民法(明治29年法律第89号)(デジタル庁)
茨城県内の管轄区域表(裁判所ウェブサイト)
・最高裁判所第二小法廷決定 平成16年10月29日(平成16年(許)第11号、民集58巻7号1979頁)

更新履歴

・2026年6月2日 記事を公開しました。

本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別事案への法的アドバイスではありません。具体的なご相談は弁護士にお問い合わせください。なお、本記事の内容は令和8年(2026年)6月時点の情報に基づいています。法律・実務の取り扱いは今後変更される可能性があります。
公開日:2026年6月2日/最終更新日:2026年6月2日