【相続・遺産分割】
相続人が行方不明・遺産分割を進める方法・守谷市・つくばみらい市・取手市・つくば市など・弁護士吉津和輝・不在者財産管理人・失踪宣告
弁護士 吉津和輝(茨城県弁護士会所属)市川法律事務所に所属する弁護士です。
「兄と10年以上連絡が取れない」「相続が止まったまま、もう何年も何もできていない」——こうしたご相談は実務でも珍しくありません。遺産分割は相続人全員の合意が必要なため、一人でも行方不明だと手続きが完全に止まってしまいます。ただ、法律にはそのような場合に手続きを前に進めるための制度が用意されています。状況によって使える手段が異なりますので、以下で整理します。
Q相続人の一人が行方不明の場合、遺産分割はできませんか?
A
遺産分割協議は共同相続人全員の参加と合意が必要です。そのため、相続人の一人でも行方不明の場合、その人を除いたまま協議を進めることはできず、仮に進めて遺産分割協議書を作成しても、その協議は無効となるおそれがあります。
ただし、民法には行方不明者がいる場合でも手続きを前に進めるための制度として、①不在者財産管理人の選任と②失踪宣告の2つが用意されています。いずれも家庭裁判所への申立てが必要です。
⚠️ 「連絡がとれない」というだけでは不十分な場合があります。どちらの制度が使えるかは、行方不明の期間や状況によって異なります。
Q「不在者財産管理人」とはどのような制度ですか?
A
不在者財産管理人とは、従来の住所・居所を去って行方不明になった人(不在者)に代わって、その財産を管理する人を家庭裁判所が選任する制度です。
選任された管理人は、不在者の代わりに遺産分割協議に参加することができます。ただし、遺産分割協議への参加は財産の処分を伴うため、家庭裁判所の許可を別途取得する必要があります。
民法(明治29年法律第89号)第25条第1項「従来の住所又は居所を去った者(以下「不在者」という。)がその財産の管理人(以下この節において単に「管理人」という。)を置かなかったときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、その財産の管理について必要な処分を命ずることができる。本人の不在中に管理人の権限が消滅したときも、同様とする。」
民法(明治29年法律第89号)第28条「管理人は、第103条に規定する権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる。」
申立てができるのは「利害関係人」です。共同相続人はこれに該当します。申立先は不在者の従来の住所地または居所地を管轄する家庭裁判所です。
【実務上のポイント】
管理人には弁護士や司法書士が選任されることが多く、その報酬は不在者の財産から支出されます。また、申立ての際に予納金(数十万円程度)が必要になる場合があります。さらに、遺産分割協議への参加には選任申立てとは別に「権限外行為許可」の申立てが必要で、選任から許可取得まで数か月を要することがあります。
Q行方不明の期間が非常に長い場合、別の方法はありますか?
A
不在者の生死が7年間にわたって不明な場合は、「失踪宣告」を申し立てることができます。失踪宣告が認められると、その人は法律上「死亡したもの」とみなされます。その結果、死亡したものとみなされた時点で相続が開始し、遺産分割を行えるようになります。
民法(明治29年法律第89号)第30条第1項「不在者の生死が7年間明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求により、失踪の宣告をすることができる。」
民法(明治29年法律第89号)第31条「前条第1項の規定により失踪の宣告を受けた者は同項の期間が満了した時に(中略)死亡したものとみなす。」
失踪宣告後に行方不明者が生存していたことが判明した場合、家庭裁判所は本人または利害関係人の請求により失踪宣告を取り消すことができます(民法第32条)。
ただし取消しの効果には限界があります。民法第32条は、失踪宣告後・取消し前に「善意でした行為」の効力は影響を受けないと定めており、すでに遺産分割が完了し不動産が第三者に売却されているような場合、その取引自体は保護されることがあります。一方、失踪宣告によって財産を取得した者は、現に利益を受けている限度で返還義務を負います。実際に生存者が帰還した場合の清算は複雑になるため、失踪宣告を選択する際は弁護士と事前に見通しを確認しておくことが重要です。
なお、戦地に臨んだ者、沈没した船舶の中にあった者その他死亡の原因となるべき危難に遭遇した者の生死が、それぞれ戦争が止んだ後・船舶が沈没した後・その他の危難が去った後1年間明らかでないときも失踪宣告を申し立てることができ、その危難が去った時に死亡したものとみなされます(民法第30条第2項、第31条)。
Q不在者財産管理人と失踪宣告、どちらを選べばよいですか?
A
どちらを利用するかは、行方不明の期間と状況によって異なります。
① 不在者財産管理人
主な要件
住所・居所を去り、行方不明であること
法的効果
管理人が不在者に代わり遺産分割協議に参加(裁判所の許可が必要)
向いているケース
行方不明だが生存の可能性がある・失踪から7年未満の場合
② 失踪宣告(民法30条1項)
主な要件
生死が7年間不明であること
法的効果
不在者が死亡したものとみなされ、相続が開始
向いているケース
7年以上生死不明で、もはや戻る見込みがない場合
いずれの手続きも書類の収集や申立て書類の作成が必要であり、時間がかかることや手続が複雑なため、弁護士への相談をおすすめします。
Q手続きを進めるにあたって、まず何をすればよいですか?
A
最初のステップとして、以下の点を整理しておくと手続きをスムーズに進めやすくなります。
① 相続人の範囲を確認する——被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を取り寄せ、法定相続人を確定させます。行方不明者の現住所が戸籍上どこになっているかも確認が必要です。
② 行方不明の期間と経緯を把握する——最後に連絡があった時期、生死の手がかりがあるかどうかを確認します。7年間の生死不明という要件を満たしているかどうかが手続き選択の分岐点になります。
③ 遺産の内容を把握する——不動産・預貯金・負債などの財産を調査し、財産目録を準備します。
いずれの手続きも家庭裁判所への申立てが必要であり、添付書類の収集に時間がかかる場合があります。状況をお聞きした上で、適切な手続きについてご説明します。
「相続人の一人と何年も連絡がとれない」「行方不明のまま相続の手続きが止まっている」といったお悩みがあれば、状況をお聞きした上でどの手続きが適切かご説明します。お気軽にご相談ください。
弁護士 吉津和輝
茨城県弁護士会所属
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本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別事案への法的アドバイスではありません。具体的なご相談は弁護士にお問い合わせください。なお、本記事の内容は令和8年(2026年)4月時点の情報に基づいています。法律・実務の取り扱いは今後変更される可能性があります。