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【注文書・契約書がない請負代金を回収したい】

YOSHITSU LAW · COLUMN

契約書なしの請負代金回収
— 口頭発注・追加工事の証拠と手順

守谷・取手・常総の中小事業者の方へ
弁護士 吉津和輝 / 茨城県弁護士会所属
弁護士 吉津和輝(よしつ かずき)
茨城県弁護士会所属(登録番号57714)/2018年12月弁護士登録
主な取扱分野:企業法務・債権回収・契約書整備・建設業法務・顧問弁護士業務
守谷・取手・常総・つくばみらいで建設・リフォーム・製造下請け・IT受託などをされている中小事業者の方へ。「いつもの取引先だったから注文書を交わさなかった」「追加工事を口頭で頼まれて進めたら、後から払えないと言われた」といった請負代金トラブルについて、契約書がない場合でも請求できるかどうか、どんな証拠で立証するか、どの順序で動くかを整理しました。
— 請負代金・売掛金回収のご相談を承っています —
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弁護士 吉津和輝(茨城県弁護士会所属)/〒302-0128 茨城県守谷市けやき台3-28-7

よくあるご質問

Q 注文書も契約書も交わしていません。それでも請負代金を請求できますか?
A
結論として、請負契約は口頭でも成立するため、契約書がなくても請求できる場合があります。ただし合意の存在と代金額の立証は請求する側に必要です。

請負契約とは、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその結果に対して報酬を支払うことを約することによって効力を生ずる契約です(民法632条)。契約は申込みと承諾の意思表示が合致すれば成立し、書面の作成は法令に特別の定めがある場合を除き要件ではありません(民法522条2項)。

つまり「注文書がないから契約していない」とは法的にはなりません。「やっておいて」「分かりました」というやり取りだけでも、内容が特定されていれば請負契約として成立し得ます。

もっとも、契約の存在と代金額の立証責任は請求する側にあります。書面がない以上、メール・LINE・見積書・入金履歴などの周辺資料で「いつ・誰と・どんな仕事を・いくらで合意したか」を再現していくことになります。

【根拠】民法(明治29年法律第89号)
第522条 契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。
2 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。

第632条 請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
Q 契約書がない場合、どんな資料が証拠になりますか?
A
結論として、メール・LINE・見積書・納品書・請求書の送付履歴・入金履歴・担当者との録音などが代表的な証拠です。一つで決まるものではなく、複数を組み合わせて立証します。

実務でよく使う証拠を整理すると次のとおりです。一つひとつは断片でも、複数が同じ事実を指していれば、契約と代金額の合理的な再現が可能になることがあります。

契約書がないときに使える主な証拠
1
メール・LINE・チャットの履歴
発注内容・金額・納期・追加指示などのやり取り。「よろしく」「OK」も積み重なれば材料になります。
2
見積書とそれに対する承諾
見積書を提示し、相手から「進めてください」と返信があれば、金額合意の有力な証拠になります。
3
納品書・作業完了報告書
仕事を完成させたことの証拠。相手のサインや受領印があるとより強くなります。
4
請求書の送付履歴と相手の対応
過去に同じ条件で請求書を送り、相手が異議なく受領していた事実は、合意の存在を推認させます。
5
過去の入金履歴・取引実績
同種の仕事に対して過去に支払いが行われていたことは、本件の代金合意の間接証拠になります。
6
担当者との会話の録音
「払います」「もう少し待ってください」といった発言の録音。自分が当事者として参加している会話の録音は、原則として違法ではないと解されています。
7
現場写真・日報・搬入記録
建設・リフォーム・設置工事などでは、施工前後の写真、作業日報、資材搬入記録が、仕事の内容と完成を示す証拠として機能します。
— 複数の資料が同じ事実を裏付けるほど立証力が高まる —
いずれも単独では決め手にならないことが多く、「合意の存在」「代金額」「仕事の完成」をそれぞれどの資料で示すかをセットで設計するのが実務上の進め方です。
Q 口頭で頼まれた追加工事の代金を「そんな話はしていない」と言われました。請求できますか?
A
結論として、追加工事の指示があった事実と、その分の合意(または相当な報酬)を立証できれば、請求できる場合があります。

追加工事は本工事の途中で口頭で指示されることが多く、書面化されないままトラブル化しやすい類型です。立証の中心は、追加分を発注者側が「指示した」または「指示されていることを知りながら止めなかった」事実です。

使える資料の例は、現場監督・発注担当者からのLINEやメール、口頭指示を社内でメモ化した内部記録、追加分が反映された日報や写真、現場での打合せ議事録、追加分の見積書を提示した経緯のやり取りなどです。

建設工事については、請負契約の当事者は契約締結に際して書面を作成する義務があります(建設業法19条1項)。これは契約の成立要件ではありませんが、書面化義務違反は発注者側にもある問題なので、書面化されていないこと自体を一方的に下請側の不利として扱うべきではない、という交渉材料になります。

請負代金回収を進めるうえで、契約成立や代金額の立証で迷う場面では、当職の企業のお客様へのご案内ページもあわせてご覧ください。

⚠️ 追加工事の代金を別途払うのか本工事代金に含めるのかが曖昧なまま進めると、後で必ずもめます。少額でも追加が出た時点で、短文メールやLINEで「〇〇の追加分は××円で進めます。問題なければスタンプでもよいので返信ください」と確認を取る運用が現実的です。
Q 請求しても支払われない場合、どんな順序で進めますか?
A
結論として、一般的には、証拠の整理→内容証明郵便→交渉→法的手続→強制執行という順で進みます。事案により省略・前倒しすべき段階があるため、最初の段階で全体設計を立てるのが重要です。
契約書なし請負代金回収の一般的な流れ
STEP 1
証拠の整理・内容証明郵便の送付
手元の資料を時系列で整理し、抜けている事実を補強できる資料がないか確認します。そのうえで、弁護士名義の内容証明郵便を送り、相手に任意の支払いを促します。この段階で動く相手も少なくありません。
STEP 2
交渉・分割払いの協議
相手の資金繰りや言い分を踏まえ、一括または分割払いで合意できないかを協議します。合意できた場合は債務承認文書を取り付け、後日の蒸し返しや時効リセットを意識した形で残します。
STEP 3
法的手続(支払督促・少額訴訟・通常訴訟)
交渉がまとまらないとき、または相手が無視するときは裁判所を利用します。請求額が60万円以下なら少額訴訟、それ以上は通常訴訟が選択肢です。争いがほとんどない事案では支払督促を使うこともあります。
STEP 4
強制執行(差押え)
判決等の債務名義が出たあと、相手が任意に払わない場合は預金口座・売掛金・不動産などへの差押えを検討します。差押え対象財産の調査も含めて準備が必要です。
— 事案により最適な手続は異なるため、初期の設計が結果を左右する —
どの段階に進めるべきかは、相手の支払能力・態度・証拠の強さ・回収希望時期などで変わります。少額訴訟や支払督促は手続が比較的シンプルですが、相手が異議を出すと通常訴訟に移行するので、最初から通常訴訟で組み立てる方が結果的に早いケースもあります。
Q 相手が払わない・連絡が取れない状態が続いています。時効は気になりますか?
A
結論として、時効は気にする必要があります。請負代金などの債権は、原則として権利を行使できることを知った時から5年で消滅時効にかかります(令和2年4月1日以降に発生した債権の場合)。

消滅時効とは、一定期間権利を行使しないと、その権利を主張できなくなる制度のことです。民法166条1項により、債権は、債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき、または権利を行使することができる時から10年間行使しないときに、時効によって消滅します。

令和2年4月1日施行の改正民法により、職業別の短期消滅時効(例:旧170条で2年・3年とされていた類型)は廃止され、原則5年・10年に統一されました。それ以前に発生した債権には旧法の時効期間が適用される場合があります。

また、時効だけでなく、相手の経営悪化による財産散逸も大きなリスクです。「最近、振込が遅れがち」「担当者と急に連絡が取れなくなった」「事業を縮小・譲渡する話が出ている」といった兆候があるときは、保全手続(仮差押え)を含めて早めの対応を検討する必要があります。

【根拠】民法(明治29年法律第89号)
第166条 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。
⚠️ 「あと少し待てば払うと言っている」と何度も先延ばしされている間に時効が迫っている、というご相談は珍しくありません。相手が支払いを認める文書や入金があれば時効が更新(リセット)されますが、口頭の約束だけでは更新できないこともあります。時効間際の事案は、早めにご相談ください。
Q 商法に基づく報酬請求という方法もあると聞きました。どんなときに使いますか?
A
結論として、商人がその営業の範囲内で他人のために行為をしたときは、相当な報酬を請求できる、という商法512条の規定が、明示の代金合意の立証が難しい場合の補完的な根拠になります。

請負代金請求の主軸は、当事者間で合意された代金額(民法632条に基づく報酬)の請求です。しかし、合意金額の立証が難しい場合や、相手が「金額の合意までは存在しない」と争ってきた場合に、商法512条による相当報酬の請求を補完的に主張する組み立てがあります。

商法512条による請求では、(1)請求者が商人であること、(2)その営業の範囲内で他人のために行為をしたこと、(3)相当な報酬額、を立証する必要があります。建設業者・リフォーム業者・製造下請け事業者・IT受託事業者など、事業として継続的に同種の仕事を引き受けている事業者は基本的に商人に当たります。

実務では、民法632条に基づく代金請求を主位的請求とし、仮に合意金額の立証が認められない場合に備えて、商法512条による相当報酬を予備的請求として組み立てるケースが多くあります。

【根拠】商法(明治32年法律第48号)
第512条 商人がその営業の範囲内において他人のために行為をしたときは、相当な報酬を請求することができる。
Q 今後の取引で同じトラブルを防ぐにはどうすればよいですか?
A
結論として、最低限「発注内容と金額をやり取りで確定する」「追加分はその都度確認をとる」「完了時に報告書を残す」という三点を運用に組み込むことが現実的です。

取引の実情に合わせて、まずは負担の少ない運用から始めることをおすすめします。完璧な契約書を毎回作る必要はなく、メール一通でも金額と発注内容が明示されていれば、後の立証は格段に楽になります。

最低限整備したい書面・運用
① 注文書または発注メール(発注内容・金額・納期を一文で書く)
② 見積書とそれに対する承諾の返信(スタンプや「了解」だけでも残す)
③ 追加分が出たときの短文確認メール(「〇〇分は××円で進めます」)
④ 完了時の作業完了報告書または完了メール

長年の取引先でも、担当者が変わったり、経営陣が交代すると、過去の口頭合意が通じなくなるのが現実です。「あの会長と握っていたから大丈夫」が通用しなくなった瞬間に、これまでの履歴がない取引はトラブルに直結します。

件数の多い取引や金額の大きい取引には、自社の運用に合った契約ひな形を整備しておく方法もあります。顧問弁護士契約の中で、契約書のチェック・追加工事覚書のひな形作成・取引先との交渉対応をまとめて任せることもできます。企業のお客様へのご案内ページもご参照ください。

守谷・取手・常総・つくばみらいの中小事業者の方へ
TX沿線(守谷・つくばみらい)と常磐線沿線(取手・龍ケ崎)を中心とした県南エリアは、首都圏向けの建設・リフォーム・設備工事、製造下請け、物流、IT受託など、口頭発注ベースの取引が今も多く残る業種が集積しています。長年の取引関係に支えられて事業が回ってきた一方で、元請の代替わりや経営悪化のタイミングで「契約書がないこと」が一気に問題化するのもこのエリアの特徴です。請負代金トラブルは、水戸地方裁判所の本庁ではなく、龍ケ崎支部・土浦支部・下妻支部のいずれか(市町村により管轄が分かれます)が窓口になりますので、地元の弁護士に依頼するメリットは比較的大きいといえます。
CONTACT

「証拠が十分か分からない」「内容証明から始めたいが文面が不安」「相手の経営状況が悪化しているので保全も含めて検討したい」といったご相談に対応しています。状況をお聞きしたうえで、お持ちの資料で何がどこまで立証できるか、どの順序で進めるのが現実的かを率直にご説明します。初回相談は面談またはZOOMで対応しています。

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参考資料・情報源

民法(明治29年法律第89号)(e-Gov法令検索・デジタル庁)
商法(明治32年法律第48号)(e-Gov法令検索・デジタル庁)
茨城県内の管轄区域表(裁判所ウェブサイト)

更新履歴

・2026年5月5日:全面改訂(Q&A形式への再構成、地域文脈の追記、商法512条の項目を追加、Jimdoインラインstyle対応)
・2026年2月28日:初稿公開

本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別事案への法的アドバイスではありません。具体的なご相談は弁護士にお問い合わせください。なお、本記事の内容は令和8年(2026年)5月時点の情報に基づいています。法律・実務の取り扱いは今後変更される可能性があります。
公開日:2026年2月28日/最終更新日:2026年5月5日