配偶者の不貞(不倫)で慰謝料を請求したい方へ
— 請求相手・相場・時効と「離婚慰謝料」との違い
主な取扱分野:離婚・不貞慰謝料・親権などの家族法/相続/刑事弁護/交通事故
| Q | そもそも「不貞慰謝料」とは何ですか。夫(妻)本人と不倫相手の両方に請求できますか。 |
| A |
結論として、不貞慰謝料とは、配偶者の不貞行為によって受けた精神的苦痛に対する損害賠償のことで、不貞をした配偶者本人と不倫相手(第三者)の双方に請求できます。ただし合計額には上限があり、二重取りはできません。
不貞行為(配偶者以外の相手との性的関係)は、婚姻共同生活の平和という法律上保護される利益を侵害する不法行為にあたります(民法709条・710条)。この「侵害される利益」について、最高裁は「他方の配偶者の夫又は妻としての権利」であると述べています(最高裁昭和54年3月30日判決)。 配偶者と不倫相手は、共同不法行為者として連帯して責任を負う関係(実務上「不真正連帯債務」と呼ばれます)に立ちます(民法719条)。そのため、どちらか一方だけに請求することも、両方に請求することもできます。「離婚するかどうかまだ決めていない」という段階でも、請求は可能です。 もっとも、二人は連帯して同じ損害を負うため、認められた慰謝料の総額を超えて二重に受け取ることはできません。この点はQ7でもう少し具体的に触れます。
【根拠】民法(明治29年法律第89号)第709条:「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」/第710条:財産以外の損害(=精神的苦痛)についても賠償の対象となります。
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| Q | 「不貞慰謝料」と「離婚慰謝料」は違うのですか。不倫相手に、離婚したこと自体の慰謝料も請求できますか。 |
| A |
結論として、「不貞慰謝料(不倫という行為への慰謝料)」と「離婚慰謝料(離婚という結果への慰謝料)」は法的に別物です。不倫相手に対しては、原則として「離婚したこと自体」の慰謝料は請求できません(最高裁平成31年2月19日判決)。
ここは誤解が生じやすいところです。慰謝料には、大きく分けて①不貞という行為そのものによる精神的苦痛への慰謝料(不貞慰謝料)と、②離婚という結果そのものによる精神的苦痛への慰謝料(離婚慰謝料)があると考えられています。 最高裁は、離婚するかどうかは本来夫婦の間で決められるべき事柄であることを理由に、不倫相手が「単に不貞行為に及ぶにとどまらず、夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして離婚のやむなきに至らしめた」といえる特段の事情がない限り、不倫相手に対して離婚に伴う慰謝料を請求することはできない、と判断しました(最高裁平成31年2月19日判決)。 重要なのは、この判決が制限したのは「離婚そのもの」を理由とする慰謝料であって、不貞行為自体を理由とする不貞慰謝料の請求まで否定したものではないという点です。つまり、不倫相手に請求するのは、あくまで「不貞行為」への慰謝料である、という整理をしておくことが実務上とても大切になります。
— 不倫相手に請求できるのは「不貞行為」への慰謝料。「離婚そのもの」は原則対象外 —
【判例】最高裁判所第三小法廷平成31年2月19日判決(平成29年(受)第1456号)。裁判所ウェブサイトの裁判例情報でも公表されています。
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| Q | 慰謝料はいくらぐらいになりますか。金額は何で決まりますか。 |
| A |
結論として、不貞慰謝料は事案により幅がありますが、裁判例ではおおむね数十万円〜300万円程度の範囲に収まることが多いとされます。金額は「固定の計算式」ではなく、事情の積み重ねで決まります。
慰謝料には自動車事故のような明確な計算式がなく、婚姻期間、子の有無、不貞の期間や態様、婚姻関係にどのような影響が生じたか、といった事情を総合して判断されます。この幅が広いのは、そのためです。 一般的な傾向としては、不貞が原因で離婚や別居に至った場合は高めに、婚姻関係が維持された場合は低めに評価されやすいと説明されます。もっとも、これはあくまで傾向であり、同じ「不倫」でも事情次第で大きく変わります。金額を左右する主な要素を整理すると、次のとおりです。
— 金額は個別事情の積み重ねで決まり、同じ「不倫」でも結論は変わります —
上記はあくまで一般的な傾向であり、具体的な金額を保証するものではありません。実際の見通しは、証拠の内容や相手方の対応によっても変わります。
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| Q | 「もう夫婦仲は冷え切っていた」「別居していた」と反論されました。それでも請求できますか。 |
| A |
結論として、不貞の当時すでに婚姻関係が「破綻」していたと客観的に認められる場合には、不倫相手が責任を負わないことがあります(最高裁平成8年3月26日判決)。もっとも裁判所は破綻を厳格に判断するため、この反論(婚姻破綻の抗弁)が認められる場面は限られます。
慰謝料が認められる根拠は「婚姻共同生活の平和の維持」という利益の侵害にあります。したがって、不貞の時点でその平和がすでに失われていた(破綻していた)といえる場合には、侵害される利益がないと評価され、不倫相手が責任を負わないことになります。これは不倫慰謝料を請求された側からしばしば主張される反論です。 ただし、「破綻していたかどうか」は当事者の気持ちではなく、別居の有無やその期間、生活の実態などの客観的な事情から判断されます。裁判では破綻が厳格に認定される傾向があり、単なる不仲や一時的な喧嘩別居では破綻とは認められにくいのが実情です。 TX沿線・常磐線沿線では、都内勤務にともなう単身赴任で別居しているご家庭も珍しくありません。もっとも、単身赴任のような別居は、それだけで婚姻関係の破綻を意味するものではないと整理されています。別居の理由や、その間の連絡・生活の実態が重要になります。
【判例】最高裁判所第三小法廷平成8年3月26日判決(民集50巻4号993頁)。「婚姻関係がその当時既に破綻していたときは、特段の事情のない限り、不法行為責任を負わない」と判示しています。
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| Q | 慰謝料を請求するには、どんな証拠が必要ですか。 |
| A |
結論として、不貞行為(またはそれと同視できる関係)があったことを示す証拠が必要です。合法的に得た証拠であることも重要で、違法な手段で集めた証拠は、かえって不利になったり別の責任を問われたりするおそれがあります。
典型的な証拠としては、ホテルへの出入りが分かる写真・動画、メッセージアプリやメールのやり取り、探偵事務所の調査報告書などが挙げられます。「怪しいとは思うが決め手がない」という段階でも、どの証拠にどれだけの意味があるかを整理しておくことは、その後の交渉の見通しに役立ちます。 一方で、証拠の集め方には注意が必要です。相手のスマートフォンを無断で操作する、車などにGPSを無断で取り付ける、無断で家宅に立ち入るといった方法は、プライバシー侵害などの別の問題を生むおそれがあります。集め方を誤ると、証拠として使いにくくなるだけでなく、逆にご自身が責任を問われる場面もあり得ます。 相手方の勤務先や住所が分からず請求先を特定できない、といった場合には、弁護士会照会などの制度の利用を検討できます。証拠が十分か不安な段階から相談しておくと、方針を早めに整理できます。
⚠️ 無断でのスマホ操作・GPS設置・住居への立入りなどは、プライバシー侵害等の別の責任につながるおそれがあります。証拠収集は慎重に行ってください。
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| Q | 時効は何年ですか。「離婚してから請求しよう」と待つのは危険ですか。 |
| A |
結論として、不貞慰謝料の請求権は、不貞の事実とその相手を知った時から3年で時効消滅します(民法724条1号)。不貞から長期間気づかなかった場合でも、不貞の時から20年で消滅します(同条2号)。「離婚が成立してから」と待つ間に3年が過ぎてしまうケースがあり、注意が必要です。
不貞が一定期間続いていた場合でも、時効は「不貞が終わった時」ではなく、「配偶者がその不貞と相手を知った時」から進行すると理解されています(最高裁平成6年1月20日判決)。したがって、発覚から時間が経つほど、時効の点で不利になっていきます。 かつては、時効が過ぎてしまった場合に「離婚という結果への慰謝料」と構成して離婚時を起算点にする、という考え方が議論されたこともありました。しかし、Q2で述べた最高裁平成31年2月19日判決により、不倫相手に対して離婚自体の慰謝料を求めることは原則としてできなくなりました。この「逃げ道」が実務上ふさがれた形です。 そのため、不貞とその相手を知ったら、離婚するかどうかの結論を待たずに、3年という期間を意識して動くことが大切です。時効が迫っている場合には、内容証明郵便の送付など、時効の完成を一時的に妨げる手段を検討することもあります。
【根拠】民法(明治29年法律第89号)第724条:不法行為による損害賠償の請求権は、①被害者等が「損害及び加害者を知った時」から3年間、②「不法行為の時」から20年間、行使しないときは時効によって消滅します。/【判例】最高裁平成6年1月20日判決。
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| Q | 夫(妻)本人と不倫相手、どちらに請求すればよいですか。 |
| A |
結論として、どちらにも請求できますが、二人は連帯して責任を負う関係にあるため、認められる総額を超えて二重に受け取ることはできません。誰に・いくら請求するかは、離婚するかどうかや回収の見込み、今後の関係などをふまえて検討します。
離婚する場合は、財産分与や養育費などの離婚条件と併せて、配偶者に対して慰謝料も含めて話し合うことが多くあります。離婚しない場合には、配偶者との関係を保ちつつ、不倫相手に対してのみ不貞慰謝料を請求する、という形も考えられます。ご家庭の状況によって、取り得る選択肢は変わります。 なお、連帯して責任を負う関係のため、たとえば不倫相手が全額を支払った場合には、支払った不倫相手が、不貞をした配偶者に対して負担部分を求める(求償する)という問題が生じることがあります。誰にいくら請求し、どのように清算するかは、こうした後日の求償も見据えて考えておくと安心です。 また、示談で解決する場合には、示談書に清算条項(この件について今後は互いに請求しないという確認)や口外禁止条項をどう盛り込むかも重要です。条項の作り方によって、後日の蒸し返しや新たなトラブルを防ぐことができます。 |
| Q | 守谷市・取手市エリアで請求する場合、どこの裁判所を使うことになりますか。 |
| A |
結論として、請求の相手方と種類によって窓口が分かれます。配偶者に対する「離婚に伴う慰謝料」は家庭裁判所(調停・人事訴訟)で、不倫相手のみに対する「不貞慰謝料」は通常の民事訴訟(訴額140万円以下は簡易裁判所、140万円を超える場合は地方裁判所)で扱われます。
守谷市・取手市にお住まいの方の場合、家庭裁判所は水戸家庭裁判所龍ケ崎支部、地方裁判所は水戸地方裁判所龍ケ崎支部が管轄です(いずれも龍ケ崎市に所在します)。もっとも、多くのケースは訴訟に入る前に、内容証明郵便での請求や示談交渉によって解決します。折り合いがつかない場合に、これらの手続へ進むことになります。 参考までに、Q2で紹介した「不倫相手への離婚慰謝料を原則として否定した」最高裁平成31年2月19日判決は、その第一審(原々審)が水戸地方裁判所龍ケ崎支部で争われた事案でした。守谷・取手エリアの家事事件・民事事件を管轄する裁判所から、全国の実務に影響する判断が生まれている——不貞慰謝料は、そうした身近な地域とつながりのある分野でもあります。
管轄は事件の種類等によって異なる場合があります。つくばみらい市・つくば市・土浦市の方は水戸家裁・水戸地裁の土浦支部、常総市・坂東市・境町の方は同下妻支部が家事・民事の窓口です。柏市・野田市・我孫子市など千葉県側の方は、千葉家裁・千葉地裁の松戸支部が窓口となります。
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不貞慰謝料は、「誰に・何を・いつまでに」請求するかで進め方が変わります。証拠が十分か不安な段階でも、状況をお聞きしたうえで、取り得る選択肢と見通しをご説明します。当職(弁護士 吉津和輝)が、離婚・不貞慰謝料に関するご相談を承っています。
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・民法(明治29年法律第89号)(e-Gov法令検索・デジタル庁)第709条・第710条・第719条・第724条
・最高裁判所平成31年2月19日判決(裁判所ウェブサイト 裁判例情報)
・最高裁判所平成8年3月26日判決(民集50巻4号993頁)/最高裁判所昭和54年3月30日判決(民集33巻2号303頁)/最高裁判所平成6年1月20日判決
・茨城県内の管轄区域表(裁判所ウェブサイト)
・2026年2月28日 公開
・2026年7月5日 「不貞慰謝料」と「離婚慰謝料」の違い(最高裁平成31年判決)、婚姻破綻の抗弁(最高裁平成8年判決)、時効の起算点、守谷・取手エリアの管轄裁判所に関する解説を追記し、全面的に加筆・更新
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別事案への法的アドバイスではありません。具体的なご相談は弁護士にお問い合わせください。なお、本記事の内容は令和8年(2026年)7月時点の情報に基づいています。法律・実務の取扱いは今後変更される可能性があります。
公開日:2026年2月28日|最終更新日:2026年7月5日
