遺産分割調停・遺留分侵害額請求調停の流れ
守谷・取手・つくばみらいの申立先はどこ?
主な取扱分野:相続・遺産分割・遺留分、離婚・親権、交通事故、企業法務
| 01 | 遺産分割調停とは — 話し合いが決裂したときの家庭裁判所の手続 |
遺産分割調停とは、相続人同士の協議で遺産の分け方が決まらないときに、家庭裁判所で裁判官と調停委員の関与のもと話し合いを行い、合意による解決を目指す手続です。民法は、協議が調わないとき、または協議をすることができないときは、各共同相続人が遺産分割を家庭裁判所に請求できると定めています。
申立てができるのは、共同相続人のほか、包括受遺者や相続分の譲受人です。相続人のうちの1人(または複数人)が、自分以外の相続人全員を相手方として申し立てる形になります。「相手方」と表現されますが、訴訟のように誰かを訴えるものではなく、あくまで裁判所を介した話し合いです。
調停期日では、申立人と相手方が交互に調停室へ入り、調停委員(通常は男女2名)に話をします。待合室も別々に用意されるのが通常で、相手と顔を合わせずに手続を進めることができます。親族間で感情的な対立が激しい事案でも、冷静に協議しやすい仕組みです。
なお、遺言によって遺産のほとんどを特定の相続人が取得することになった場合に、最低限の取り分(遺留分)の支払いを求める手続は、遺産分割調停とは別の「遺留分侵害額の請求調停」です(05・06で解説します)。どちらの手続をとるべきかは事案によって異なりますので、迷った場合は弁護士にご相談ください。
| 02 | どこの家庭裁判所に申し立てる? — 守谷・取手は龍ケ崎支部、つくばみらいは土浦支部 |
家事調停の申立先は、「相手方の住所地」を管轄する家庭裁判所、または当事者が合意で定める家庭裁判所です(家事事件手続法245条1項)。ここでよく誤解されるのですが、基準になるのは自分(申立人)の住所地ではなく、相手方の住所地です。相手方が複数いる遺産分割調停では、相手方のうち1人の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てることができます。
相手方となる相続人がこの地域に住んでいる場合、家事事件の管轄は次のとおりです(裁判所公表の管轄区域表に基づく2026年7月時点の情報です)。
| 相手方の住所地 | 管轄の家庭裁判所(家事) |
| 守谷市・取手市・龍ケ崎市・牛久市・稲敷市・河内町・利根町 | 水戸家庭裁判所龍ケ崎支部(龍ケ崎市4918) |
| つくばみらい市・つくば市・土浦市・かすみがうら市・石岡市・阿見町・美浦村 | 水戸家庭裁判所土浦支部 |
| 常総市・坂東市・境町・下妻市・古河市・結城市・筑西市・八千代町・五霞町ほか | 水戸家庭裁判所下妻支部 |
| 柏市・我孫子市・野田市・松戸市・流山市・鎌ケ谷市 | 千葉家庭裁判所松戸支部 |
実務上の悩みどころは、この地域の相続では相続人が首都圏各地に分散していることが多い点です。たとえば被相続人が守谷市に住んでいても、相手方となるきょうだいが都内や県外に住んでいれば、その相手方の住所地の家庭裁判所に申し立てることになり得ます。逆に、都内にお住まいの方が、守谷市・取手市在住の相続人を相手方として申し立てる場合の申立先は水戸家庭裁判所龍ケ崎支部です。
| 03 | 遺産分割調停の流れ — 申立てから調停成立まで |
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1
申立て
申立書+戸籍・遺産資料を家裁へ提出
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2
調停期日
おおむね月1回ペースで争点を順に協議
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3
成立/不成立
成立→調停調書/不成立→審判へ自動移行
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申立てには、申立書(相手方の人数分の写しも必要)のほか、主に次の書類を添付します(裁判所公表の標準的な添付書類です。事案により追加書類が必要になることがあります)。
・相続人全員の戸籍謄本/住民票または戸籍附票
・遺産に関する証明書(不動産登記事項証明書・固定資産評価証明書、預貯金通帳の写しまたは残高証明書、有価証券の写し等)
・事情説明書・進行に関する照会回答書
申立費用は、被相続人1人につき収入印紙1,200円分と、連絡用の郵便切手(金額は裁判所ごとに異なります)です。戸籍に代えて「法定相続情報一覧図の写し」を提出できる場合もあります。
申立てから1〜2か月ほどで第1回期日が指定され、以後おおむね1か月〜1か月半に1回のペースで期日が重ねられます。遺産分割調停の実務では、多くの家庭裁判所で、次の順序で争点を一つずつ確定させていく段階的進行の運用が定着しています。
(2) 遺産の範囲:何が遺産か(使途不明金・名義預金などが争点化しやすい)
(3) 遺産の評価:不動産・非上場株式などをいくらと見るか
(4) 特別受益・寄与分:生前贈与や介護等の貢献をどう反映するか
(5) 分割方法:現物分割・代償分割・換価分割・共有のいずれによるか
この順序には意味があります。前の段階を飛ばして「分け方」だけを議論しても、遺産の範囲や評価が固まっていなければ話が振り出しに戻るからです。逆にいえば、主張はそれぞれの段階で出す必要があり、段階が進んでから前の論点を蒸し返すことは原則として困難です。どの主張をどのタイミングで、どの証拠とともに出すかの見極めが、調停の結果を左右します。
相続人全員が合意すれば調停成立となり、合意内容を記載した調停調書が作成されます。遺産分割調停の調停調書の記載は、確定した審判と同一の効力を持ちます(家事事件手続法268条1項)。この調書に基づいて不動産の相続登記や預貯金の払戻しを進めることができ、金銭の支払いなどの給付条項については強制執行も可能です。
期間の目安は事案によって大きく異なり、争点が少なければ半年前後で終わることもあれば、遺産の範囲や評価、特別受益をめぐって争いがある事案では1〜2年、それ以上かかることもあります。
| 04 | 特別受益・寄与分と「10年ルール」(民法904条の3) |
特別受益とは、共同相続人の中に、被相続人から遺贈を受けた者や、婚姻・養子縁組のためもしくは生計の資本として贈与を受けた者がいる場合に、その贈与等の価額を相続財産に持ち戻して各人の相続分を計算する仕組みです(民法903条)。寄与分とは、被相続人の事業への労務提供や療養看護などにより、被相続人の財産の維持・増加に特別の寄与をした相続人の取り分を上乗せする仕組みです(民法904条の2)。
「兄だけ住宅資金を出してもらっていた」「自分だけが親の介護を担ってきた」といった主張は、この特別受益・寄与分の問題として調停で扱われます。ただし、どちらも主張するだけでは足りず、証拠による裏付けが不可欠です。贈与を示す預金の取引履歴や振込記録、介護の内容・期間を示す記録などを、早い段階から収集しておく必要があります。
| 05 | 遺留分侵害額請求とは — 1年の時効に注意 |
遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人(配偶者・子・直系尊属)に法律上保障された、遺産に対する最低限の取り分です(民法1042条)。「財産はすべて長男に相続させる」という遺言があっても、他の相続人は遺留分に相当する金銭の支払いを請求できます。これを遺留分侵害額請求といいます(民法1046条1項)。
| 相続人の構成 | 遺留分(全体) |
| 直系尊属(父母など)のみが相続人の場合 | 遺留分算定の基礎となる財産の3分の1 |
| それ以外の場合(配偶者や子が相続人に含まれる場合) | 同財産の2分の1 |
| 兄弟姉妹 | 遺留分なし |
令和元年(2019年)7月1日施行の改正民法により、遺留分の権利行使は「金銭の支払請求」に一本化されました。不動産そのものの持分を取り戻すのではなく、侵害額に相当するお金を請求する制度です(同日より前に開始した相続には、改正前の遺留分減殺請求の制度が適用されます)。侵害額の計算では、遺贈や生前贈与、遺留分権利者自身が受けた特別受益、承継する債務などを踏まえる必要があり(民法1046条2項)、計算の前提の置き方によって金額が大きく変わります。
| 06 | 遺留分侵害額請求調停の流れと落とし穴 |
最大の落とし穴はここです。家庭裁判所に調停を申し立てただけでは、相手方に対する遺留分侵害額請求の意思表示にはなりません(裁判所も手続案内で明示しています)。1年の時効期間内に、調停の申立てとは別に、内容証明郵便などで「遺留分侵害額を請求する」という意思表示を相手方に到達させておく必要があります。
遺留分侵害額請求について訴えを提起しようとする場合は、原則として、まず家庭裁判所に調停を申し立てる必要があります(調停前置主義・家事事件手続法257条1項)。申立先は相手方の住所地の家庭裁判所または合意で定める家庭裁判所で、申立費用は収入印紙1,200円分と連絡用の郵便切手です。
調停では、遺留分を算定するための財産(遺産・生前贈与など)の範囲と評価、侵害額の計算、支払方法(一括か分割か)などを協議します。とくに不動産の評価と生前贈与の範囲・評価は争いになりやすく、資料に基づく緻密な計算の主張が求められます。
調停が不成立になった場合、遺留分侵害額請求は(遺産分割と違って)審判に自動移行せず、訴訟を提起することになります。ここで知っておきたいのが、不成立の通知を受けた日から2週間以内に訴えを提起すれば、調停申立ての時に訴えの提起があったものとみなされるという規定です(家事事件手続法272条3項)。時効・期間との関係で意味を持つことがあるルールで、不成立後の動き出しの速さが問われます。
| 07 | 調停が不成立になったらどうなる? |
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遺産分割調停
審判へ自動移行
調停申立ての時に審判の申立てがあったものとみなされ(家事事件手続法272条4項)、裁判官が一切の事情を考慮して分割内容を決定します。
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遺留分調停
訴訟を提起する
審判への移行はなく、地方裁判所(請求額によっては簡易裁判所)に訴訟を提起します。不成立通知から2週間以内の提訴には272条3項の特則があります。
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遺産分割の審判では、当事者は主張と証拠を出し合い、最終的には裁判官が判断します。話し合いによる柔軟な解決(たとえば「この不動産は長男が取得し、代わりに代償金を分割で支払う」といった調整)が難しくなり、当事者の希望どおりにならない結果もあり得ます。なお、調停が成立しない場合でも、家庭裁判所が相当と認めるときは「調停に代わる審判」(家事事件手続法284条)によって解決が図られることもあります。
いずれにしても、不成立後の手続は長期化・複雑化しやすく、審判・訴訟を見据えた主張の組み立てを調停の段階から行っておくことが、時間・費用・精神的負担のどの観点からも重要です。
| 08 | 弁護士を入れるメリットと、弁護士なしで臨むリスク |
① 主張を「段階」と「証拠」に落とし込める。03で述べたとおり、遺産分割調停は争点を段階的に確定させて進みます。「特別受益がある」「この不動産の評価はおかしい」という主張を、どの段階で、どの資料とともに出すか。ここを外すと、正しい主張でも取り上げられないまま次の段階へ進んでしまうことがあります。
② 証拠収集の手段が広がる。金融機関の取引履歴の取り寄せ、不動産登記・固定資産評価の確認、必要に応じた弁護士会照会制度(弁護士法23条の2)の活用など、調停前の準備段階から資料を固めることができます。特別受益・寄与分は証拠がなければ認められません。
③ 調停委員への伝わり方が変わる。調停委員は中立ですが、法的根拠と証拠が整理された主張と、感情の混じった主張とでは、協議の進み方が変わってきます。弁護士は、依頼者の言い分を法律上の主張として構成し、書面と資料で示します。
④ 期日対応の負担が減る。弁護士は代理人として期日に出席できます。平日に何度も裁判所へ足を運ぶことが難しい方、相手方と同じ建物に入ること自体が精神的に負担な方にとって、この意味は小さくありません。
⑤ 審判・訴訟への移行が途切れない。不成立後の審判・訴訟は、調停段階での主張・証拠の積み上げの延長線上にあります。最初から関与している弁護士であれば、経緯を把握したまま連続して対応できます。
調停は本人だけでも申し立てられる手続で、実際にご自身で進める方もいらっしゃいます。ただし、次の点には注意が必要です。
⚠️ 特別受益・寄与分・10年ルールなどの主張の機会を逃すおそれがあります。知らなければ主張できず、主張しなければ調停には反映されません。
⚠️ 相手方にだけ弁護士がついている場合、主張の構成・証拠の整理・期日対応の各場面で差が生じることがあります。
よくあるご質問(Q&A)
・申立先は「相手方の住所地」基準。守谷市・取手市の相手方なら水戸家裁龍ケ崎支部、つくばみらい市なら同・土浦支部
・遺産分割調停は「相続人の範囲→遺産の範囲→評価→特別受益・寄与分→分割方法」の順に段階的に進む
・相続開始から10年で特別受益・寄与分の主張は原則不可に(民法904条の3)
・遺留分侵害額請求は知った時から1年の時効。調停申立てだけでは意思表示にならず、内容証明等が必要
・調停調書は確定した審判等と同一の効力。不利な合意は原則覆せないからこそ、調停段階からの準備が結果を左右する
「調停を申し立てたいが何から始めればよいか分からない」「相手方から調停を申し立てられた」「遺言の内容に納得がいかない」——そのような場合は、まず状況とご希望をお聞きしたうえで、当職が取り得る手続と見通しをご説明します。相続に関する初回の法律相談は無料で承っています(面談またはZOOM)。
📞 050-3623-1320
守谷市・取手市・つくばみらい市・常総市・坂東市など、TX(つくばエクスプレス)沿線・常磐線沿線の地域からのご相談に対応しています。お住まいの地域のページもご覧ください。
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・民法(明治29年法律第89号)(e-Gov法令検索)
・家事事件手続法(平成23年法律第52号)(e-Gov法令検索)
・遺産分割調停(裁判所ウェブサイト)
・遺留分侵害額の請求調停(裁判所ウェブサイト)
・水戸家庭裁判所管轄一覧表(家事)(裁判所ウェブサイト・PDF)
2026年7月5日:全面リライト(管轄裁判所の詳細、特別受益・寄与分の10年ルール、遺留分の意思表示と2週間ルール、Q&Aを追加)
2026年2月28日:初版公開
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別事案への法的アドバイスではありません。具体的なご相談は弁護士にお問い合わせください。なお、本記事の内容は令和8年(2026年)7月時点の情報に基づいています。法律・裁判所の運用は今後変更される可能性があります。
公開日:2026年2月28日|最終更新日:2026年7月5日
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