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遺産分割調停・遺留分侵害額請求調停の流れ|守谷・取手・つくばみらいの申立先はどこ?

相続・遺産分割

遺産分割調停・遺留分侵害額請求調停の流れ
守谷・取手・つくばみらいの申立先はどこ?

管轄裁判所(龍ケ崎支部・土浦支部)・必要書類・特別受益の10年ルール・遺留分の1年時効まで
弁護士 吉津和輝 / 茨城県弁護士会所属
弁護士 吉津和輝(よしつ かずき)
茨城県弁護士会所属(登録番号57714)/2018年12月弁護士登録
主な取扱分野:相続・遺産分割・遺留分、離婚・親権、交通事故、企業法務
守谷市・取手市・つくばみらい市・常総市など茨城県南部、柏市・我孫子市・野田市など千葉県北西部にお住まいで、相続人同士の話し合いがまとまらずお困りの方へ。相続争いは、いきなり「裁判」になるのではなく、まず家庭裁判所の調停という話し合いの手続を使うのが一般的です。申立先は守谷市・取手市なら水戸家庭裁判所龍ケ崎支部、つくばみらい市なら同・土浦支部と、隣り合う市でも分かれます。この記事では、遺産分割調停と遺留分侵害額請求調停について、この地域の申立先の裁判所、手続の流れ、必要書類と費用、注意すべき期間制限(特別受益・寄与分の10年ルール、遺留分の1年の時効)までを、条文の根拠とあわせて解説します。
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弁護士 吉津和輝(茨城県弁護士会所属)/〒302-0128 茨城県守谷市けやき台3-28-7
01 遺産分割調停とは — 話し合いが決裂したときの家庭裁判所の手続

遺産分割調停とは、相続人同士の協議で遺産の分け方が決まらないときに、家庭裁判所で裁判官と調停委員の関与のもと話し合いを行い、合意による解決を目指す手続です。民法は、協議が調わないとき、または協議をすることができないときは、各共同相続人が遺産分割を家庭裁判所に請求できると定めています。

【根拠】民法(明治29年法律第89号)第907条2項:「遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その全部又は一部の分割を家庭裁判所に請求することができる。」

申立てができるのは、共同相続人のほか、包括受遺者や相続分の譲受人です。相続人のうちの1人(または複数人)が、自分以外の相続人全員を相手方として申し立てる形になります。「相手方」と表現されますが、訴訟のように誰かを訴えるものではなく、あくまで裁判所を介した話し合いです。

調停期日では、申立人と相手方が交互に調停室へ入り、調停委員(通常は男女2名)に話をします。待合室も別々に用意されるのが通常で、相手と顔を合わせずに手続を進めることができます。親族間で感情的な対立が激しい事案でも、冷静に協議しやすい仕組みです。

なお、遺言によって遺産のほとんどを特定の相続人が取得することになった場合に、最低限の取り分(遺留分)の支払いを求める手続は、遺産分割調停とは別の「遺留分侵害額の請求調停」です(0506で解説します)。どちらの手続をとるべきかは事案によって異なりますので、迷った場合は弁護士にご相談ください。

02 どこの家庭裁判所に申し立てる? — 守谷・取手は龍ケ崎支部、つくばみらいは土浦支部

家事調停の申立先は、「相手方の住所地」を管轄する家庭裁判所、または当事者が合意で定める家庭裁判所です(家事事件手続法245条1項)。ここでよく誤解されるのですが、基準になるのは自分(申立人)の住所地ではなく、相手方の住所地です。相手方が複数いる遺産分割調停では、相手方のうち1人の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てることができます。

相手方となる相続人がこの地域に住んでいる場合、家事事件の管轄は次のとおりです(裁判所公表の管轄区域表に基づく2026年7月時点の情報です)。

相手方の住所地 管轄の家庭裁判所(家事)
守谷市・取手市・龍ケ崎市・牛久市・稲敷市・河内町・利根町 水戸家庭裁判所龍ケ崎支部(龍ケ崎市4918)
つくばみらい市・つくば市・土浦市・かすみがうら市・石岡市・阿見町・美浦村 水戸家庭裁判所土浦支部
常総市・坂東市・境町・下妻市・古河市・結城市・筑西市・八千代町・五霞町ほか 水戸家庭裁判所下妻支部
柏市・我孫子市・野田市・松戸市・流山市・鎌ケ谷市 千葉家庭裁判所松戸支部
— 茨城県南部・千葉県北西部の家事調停の管轄裁判所 —
見落とされやすいのがつくばみらい市です。守谷市の隣接市で、TX(つくばエクスプレス)で1駅(守谷駅の隣がみらい平駅)という近さですが、家事調停の管轄は守谷市と同じ龍ケ崎支部ではなく、土浦支部です。「隣の守谷と同じだろう」と龍ケ崎支部に申し立ててしまうと、管轄のある土浦支部への移送や申立ての出し直しが必要になり、その分時間がかかることがあります。つくばみらい市の相手方に対する遺産分割調停・遺留分調停は、水戸家庭裁判所土浦支部(土浦市)が申立先になります。

実務上の悩みどころは、この地域の相続では相続人が首都圏各地に分散していることが多い点です。たとえば被相続人が守谷市に住んでいても、相手方となるきょうだいが都内や県外に住んでいれば、その相手方の住所地の家庭裁判所に申し立てることになり得ます。逆に、都内にお住まいの方が、守谷市・取手市在住の相続人を相手方として申し立てる場合の申立先は水戸家庭裁判所龍ケ崎支部です。

龍ケ崎支部は関東鉄道竜ヶ崎線・竜ヶ崎駅から徒歩約20分の場所にあり、TX(つくばエクスプレス)沿線からは複数回の乗換えが必要です。遠方の裁判所が管轄になる場合や平日の出頭が難しい場合には、裁判所の判断によりウェブ会議・電話会議の方法で期日に参加できることがあるほか、弁護士が代理人として出席する対応も可能です。
03 遺産分割調停の流れ — 申立てから調停成立まで
1
申立て
申立書+戸籍・遺産資料を家裁へ提出
2
調停期日
おおむね月1回ペースで争点を順に協議
3
成立/不成立
成立→調停調書/不成立→審判へ自動移行
① 申立て — 必要書類と費用

申立てには、申立書(相手方の人数分の写しも必要)のほか、主に次の書類を添付します(裁判所公表の標準的な添付書類です。事案により追加書類が必要になることがあります)。

・被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本
・相続人全員の戸籍謄本/住民票または戸籍附票
・遺産に関する証明書(不動産登記事項証明書・固定資産評価証明書、預貯金通帳の写しまたは残高証明書、有価証券の写し等)
・事情説明書・進行に関する照会回答書

申立費用は、被相続人1人につき収入印紙1,200円分と、連絡用の郵便切手(金額は裁判所ごとに異なります)です。戸籍に代えて「法定相続情報一覧図の写し」を提出できる場合もあります。

② 調停期日 — 争点を「段階的に」確定していく

申立てから1〜2か月ほどで第1回期日が指定され、以後おおむね1か月〜1か月半に1回のペースで期日が重ねられます。遺産分割調停の実務では、多くの家庭裁判所で、次の順序で争点を一つずつ確定させていく段階的進行の運用が定着しています。

(1) 相続人の範囲:誰が相続人か(戸籍で確定)
(2) 遺産の範囲:何が遺産か(使途不明金・名義預金などが争点化しやすい)
(3) 遺産の評価:不動産・非上場株式などをいくらと見るか
(4) 特別受益・寄与分:生前贈与や介護等の貢献をどう反映するか
(5) 分割方法:現物分割・代償分割・換価分割・共有のいずれによるか

この順序には意味があります。前の段階を飛ばして「分け方」だけを議論しても、遺産の範囲や評価が固まっていなければ話が振り出しに戻るからです。逆にいえば、主張はそれぞれの段階で出す必要があり、段階が進んでから前の論点を蒸し返すことは原則として困難です。どの主張をどのタイミングで、どの証拠とともに出すかの見極めが、調停の結果を左右します。

③ 合意成立 — 調停調書の効力

相続人全員が合意すれば調停成立となり、合意内容を記載した調停調書が作成されます。遺産分割調停の調停調書の記載は、確定した審判と同一の効力を持ちます(家事事件手続法268条1項)。この調書に基づいて不動産の相続登記や預貯金の払戻しを進めることができ、金銭の支払いなどの給付条項については強制執行も可能です。

期間の目安は事案によって大きく異なり、争点が少なければ半年前後で終わることもあれば、遺産の範囲や評価、特別受益をめぐって争いがある事案では1〜2年、それ以上かかることもあります。

04 特別受益・寄与分と「10年ルール」(民法904条の3)

特別受益とは、共同相続人の中に、被相続人から遺贈を受けた者や、婚姻・養子縁組のためもしくは生計の資本として贈与を受けた者がいる場合に、その贈与等の価額を相続財産に持ち戻して各人の相続分を計算する仕組みです(民法903条)。寄与分とは、被相続人の事業への労務提供や療養看護などにより、被相続人の財産の維持・増加に特別の寄与をした相続人の取り分を上乗せする仕組みです(民法904条の2)。

「兄だけ住宅資金を出してもらっていた」「自分だけが親の介護を担ってきた」といった主張は、この特別受益・寄与分の問題として調停で扱われます。ただし、どちらも主張するだけでは足りず、証拠による裏付けが不可欠です。贈与を示す預金の取引履歴や振込記録、介護の内容・期間を示す記録などを、早い段階から収集しておく必要があります。

⚠️ 相続開始から10年を経過すると、原則として特別受益・寄与分の主張ができなくなります(民法904条の3)。令和5年4月1日に施行された改正民法で新設されたルールで、施行前に開始した相続にも経過措置を設けたうえで適用されます。10年経過前に家庭裁判所へ遺産分割を請求した場合などの例外はありますが、古い相続を「いつか話し合えばよい」と放置することには法的なリスクがあります。
【根拠】民法第904条の3:「前三条の規定は、相続開始の時から十年を経過した後にする遺産の分割については、適用しない。ただし、次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。一 相続開始の時から十年を経過する前に、相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。(以下略)」
05 遺留分侵害額請求とは — 1年の時効に注意

遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人(配偶者・子・直系尊属)に法律上保障された、遺産に対する最低限の取り分です(民法1042条)。「財産はすべて長男に相続させる」という遺言があっても、他の相続人は遺留分に相当する金銭の支払いを請求できます。これを遺留分侵害額請求といいます(民法1046条1項)。

相続人の構成 遺留分(全体)
直系尊属(父母など)のみが相続人の場合 遺留分算定の基礎となる財産の3分の1
それ以外の場合(配偶者や子が相続人に含まれる場合) 同財産の2分の1
兄弟姉妹 遺留分なし
— 遺留分の割合(民法1042条1項)。各相続人の遺留分は、これに法定相続分を乗じて算定します —

令和元年(2019年)7月1日施行の改正民法により、遺留分の権利行使は「金銭の支払請求」に一本化されました。不動産そのものの持分を取り戻すのではなく、侵害額に相当するお金を請求する制度です(同日より前に開始した相続には、改正前の遺留分減殺請求の制度が適用されます)。侵害額の計算では、遺贈や生前贈与、遺留分権利者自身が受けた特別受益、承継する債務などを踏まえる必要があり(民法1046条2項)、計算の前提の置き方によって金額が大きく変わります。

⚠️ 遺留分侵害額請求権は、相続の開始および遺留分を侵害する贈与・遺贈があったことを知った時から1年間行使しないと時効により消滅します。相続開始の時から10年を経過したときも同様です(民法1048条)。遺言の内容に疑問を感じたら、まず期間の確認を優先してください。
06 遺留分侵害額請求調停の流れと落とし穴
① まず内容証明郵便などで権利行使の意思表示をする

最大の落とし穴はここです。家庭裁判所に調停を申し立てただけでは、相手方に対する遺留分侵害額請求の意思表示にはなりません(裁判所も手続案内で明示しています)。1年の時効期間内に、調停の申立てとは別に、内容証明郵便などで「遺留分侵害額を請求する」という意思表示を相手方に到達させておく必要があります。

意思表示は口頭でも法律上は可能ですが、後日「聞いていない」と争われると、期間内に行使した証拠が残りません。到達の時期と内容を証拠化できる配達証明付き内容証明郵便によるのが実務の定石です。
② 協議がまとまらなければ調停を申し立てる(調停前置)

遺留分侵害額請求について訴えを提起しようとする場合は、原則として、まず家庭裁判所に調停を申し立てる必要があります(調停前置主義・家事事件手続法257条1項)。申立先は相手方の住所地の家庭裁判所または合意で定める家庭裁判所で、申立費用は収入印紙1,200円分と連絡用の郵便切手です。

③ 調停での協議事項

調停では、遺留分を算定するための財産(遺産・生前贈与など)の範囲と評価、侵害額の計算、支払方法(一括か分割か)などを協議します。とくに不動産の評価と生前贈与の範囲・評価は争いになりやすく、資料に基づく緻密な計算の主張が求められます。

④ 不成立なら訴訟へ — 「2週間ルール」

調停が不成立になった場合、遺留分侵害額請求は(遺産分割と違って)審判に自動移行せず、訴訟を提起することになります。ここで知っておきたいのが、不成立の通知を受けた日から2週間以内に訴えを提起すれば、調停申立ての時に訴えの提起があったものとみなされるという規定です(家事事件手続法272条3項)。時効・期間との関係で意味を持つことがあるルールで、不成立後の動き出しの速さが問われます。

07 調停が不成立になったらどうなる?
遺産分割調停
審判へ自動移行
調停申立ての時に審判の申立てがあったものとみなされ(家事事件手続法272条4項)、裁判官が一切の事情を考慮して分割内容を決定します。
遺留分調停
訴訟を提起する
審判への移行はなく、地方裁判所(請求額によっては簡易裁判所)に訴訟を提起します。不成立通知から2週間以内の提訴には272条3項の特則があります。
— 不成立後の手続は2つの調停で大きく異なる —

遺産分割の審判では、当事者は主張と証拠を出し合い、最終的には裁判官が判断します。話し合いによる柔軟な解決(たとえば「この不動産は長男が取得し、代わりに代償金を分割で支払う」といった調整)が難しくなり、当事者の希望どおりにならない結果もあり得ます。なお、調停が成立しない場合でも、家庭裁判所が相当と認めるときは「調停に代わる審判」(家事事件手続法284条)によって解決が図られることもあります。

いずれにしても、不成立後の手続は長期化・複雑化しやすく、審判・訴訟を見据えた主張の組み立てを調停の段階から行っておくことが、時間・費用・精神的負担のどの観点からも重要です。

08 弁護士を入れるメリットと、弁護士なしで臨むリスク
弁護士に依頼するメリット

① 主張を「段階」と「証拠」に落とし込める。03で述べたとおり、遺産分割調停は争点を段階的に確定させて進みます。「特別受益がある」「この不動産の評価はおかしい」という主張を、どの段階で、どの資料とともに出すか。ここを外すと、正しい主張でも取り上げられないまま次の段階へ進んでしまうことがあります。

② 証拠収集の手段が広がる。金融機関の取引履歴の取り寄せ、不動産登記・固定資産評価の確認、必要に応じた弁護士会照会制度(弁護士法23条の2)の活用など、調停前の準備段階から資料を固めることができます。特別受益・寄与分は証拠がなければ認められません。

③ 調停委員への伝わり方が変わる。調停委員は中立ですが、法的根拠と証拠が整理された主張と、感情の混じった主張とでは、協議の進み方が変わってきます。弁護士は、依頼者の言い分を法律上の主張として構成し、書面と資料で示します。

④ 期日対応の負担が減る。弁護士は代理人として期日に出席できます。平日に何度も裁判所へ足を運ぶことが難しい方、相手方と同じ建物に入ること自体が精神的に負担な方にとって、この意味は小さくありません。

⑤ 審判・訴訟への移行が途切れない。不成立後の審判・訴訟は、調停段階での主張・証拠の積み上げの延長線上にあります。最初から関与している弁護士であれば、経緯を把握したまま連続して対応できます。

弁護士なしで臨む場合のリスク

調停は本人だけでも申し立てられる手続で、実際にご自身で進める方もいらっしゃいます。ただし、次の点には注意が必要です。

⚠️ 不利な内容で合意しても、原則として後から覆せません。調停調書は確定した審判と同一の効力を持つため、「早く終わらせたい」という気持ちから安易に合意することには重大なリスクがあります。
⚠️ 特別受益・寄与分・10年ルールなどの主張の機会を逃すおそれがあります。知らなければ主張できず、主張しなければ調停には反映されません。
⚠️ 相手方にだけ弁護士がついている場合、主張の構成・証拠の整理・期日対応の各場面で差が生じることがあります。

よくあるご質問(Q&A)

Q 調停の期日には、毎回自分で裁判所に行かないといけませんか?
A
結論として、弁護士に依頼すれば代理人として期日に出席してもらえるため、毎回ご本人が出頭する必要はありません。

弁護士は代理人として調停期日に出席し、ご本人に代わって主張や協議を行うことができます。また、裁判所が認める場合には、ウェブ会議・電話会議の方法で期日に参加できることもあります。

ただし、ご本人の意向を直接確認すべき場面(調停成立の場面など)では、出席を求められることがあります。仕事のご都合との調整も含め、進め方は個別にご相談ください。

Q 遺産分割調停を申し立てられました。放置するとどうなりますか?
A
結論として、放置は得策ではありません。欠席が続けば調停は不成立となって審判に自動移行し、ご自身の言い分を反映しないまま裁判官の判断が下される可能性があります。

呼出しを受けた事件の関係人が正当な理由なく出頭しない場合には、5万円以下の過料の定めもあります(家事事件手続法51条2項・3項。同法258条1項により調停手続に準用)。

申し立てられた側であっても、期日で主張し、資料を出すことはできます。裁判所から書類が届いたら、同封の照会書の回答期限を確認したうえで、早めに対応方針を検討することをおすすめします。

Q 調停で決まった内容を相手が守らない場合はどうなりますか?
A
結論として、調停調書に基づいて強制執行を申し立てることができます。

遺産分割調停・遺留分侵害額請求調停の調停調書の記載は、確定した審判または確定判決と同一の効力を持ちます(家事事件手続法268条1項)。「代償金として○○円を支払う」といった給付条項について支払いがなければ、預貯金や給与の差押えなどの強制執行が可能です。

逆にいえば、調停で合意する条項は、後に強制執行ができる形(金額・期限・支払方法が特定された形)で定めておくことが重要です。条項の作り込みは、まさに弁護士の専門領域です。

Q 親が亡くなってから何年も経っています。今から調停はできますか?
A
結論として、遺産分割の調停・審判の申立て自体に期限はありませんが、相続開始から10年を経過すると特別受益・寄与分の主張が原則できなくなります(民法904条の3)。

「生前に多額の援助を受けたきょうだいがいる」「自分だけが介護をしてきた」といった事情を相続分に反映させたいのであれば、10年を経過する前に家庭裁判所へ遺産分割の請求をしておく必要があります。

また、遺留分侵害額請求には、侵害を知った時から1年という短い時効があります(民法1048条)。経過年数によって取り得る手段が変わりますので、まずは時系列の整理からご相談いただくのが確実です。

守谷・取手・つくばみらいの相続で実際によくある地域事情
取手市
常磐線で都心へ通う人々のために高度経済成長期以降に開発された住宅地・団地を多く抱える街で、そこに移り住んだ世代の高齢化が進んでいます。近年は、親世代が長く暮らした団地の一室(区分所有)や戸建てが相続財産の中心となり、独立して都内などに出た子ども世代が相続人となる——というご相談が典型的です。区分所有マンションや古い戸建ての評価、実家をどう分けるかが論点になりやすい地域です。
つくばみらい市
2006年に旧伊奈町と旧谷和原村が合併して誕生した市です。TX(つくばエクスプレス)みらい平駅の周辺は宅地開発が進んで子育て世代が数多く転入した一方、旧来の地域には先祖代々の農地や自宅を受け継ぐご家庭も多く残ります。前者では親御さんが別の地域にお住まいで相続人が広域に分散しがち、後者では相続財産に市街化調整区域の農地・山林が含まれ、その評価や分け方(簡単には売れず、誰かが取得して代償金を支払う形になりやすい)が調停の争点になりやすい——という違いがあります。前述のとおり、管轄が守谷市と異なり土浦支部である点にもご注意ください。
守谷市
TX(つくばエクスプレス)で都心へ短時間というアクセスから、子育て世代の転入が続いてきた街です。都内へ通勤する世帯が多く、いざ相続となると相続人が首都圏の各地に散らばっていることが少なくありません。ご実家の自宅(戸建て・マンション)が主な相続財産で、遠方に住むきょうだい間で評価や分割方法の折り合いがつかない、というケースが目立ちます。
共通して言えること。管轄は「相手方の住所地」基準(家事事件手続法245条1項)ですので、「実家はこの地域なのに、調停は相手方のきょうだいが住む別の都県の家庭裁判所」ということも起こり得ます。そして、遺産に不動産(団地・戸建て・農地)が含まれるほど、その評価と分割方法が調停の中心的な争点になります。平日の期日出頭の負担と、不動産評価をめぐる主張立証——この2つが、この地域の遺産分割で弁護士がお役に立ちやすいところです。
この記事のまとめ
・相続の争いは訴訟ではなく、まず家庭裁判所の調停で解決を目指すのが基本
・申立先は「相手方の住所地」基準。守谷市・取手市の相手方なら水戸家裁龍ケ崎支部、つくばみらい市なら同・土浦支部
・遺産分割調停は「相続人の範囲→遺産の範囲→評価→特別受益・寄与分→分割方法」の順に段階的に進む
・相続開始から10年で特別受益・寄与分の主張は原則不可に(民法904条の3)
・遺留分侵害額請求は知った時から1年の時効。調停申立てだけでは意思表示にならず、内容証明等が必要
・調停調書は確定した審判等と同一の効力。不利な合意は原則覆せないからこそ、調停段階からの準備が結果を左右する
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弁護士 吉津和輝
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更新履歴

2026年7月5日:全面リライト(管轄裁判所の詳細、特別受益・寄与分の10年ルール、遺留分の意思表示と2週間ルール、Q&Aを追加)
2026年2月28日:初版公開

本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別事案への法的アドバイスではありません。具体的なご相談は弁護士にお問い合わせください。なお、本記事の内容は令和8年(2026年)7月時点の情報に基づいています。法律・裁判所の運用は今後変更される可能性があります。
公開日:2026年2月28日|最終更新日:2026年7月5日
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