吉津和輝(登録番号57714 茨城県弁護士会所属) 市川法律事務所に所属する弁護士です。
目次
- 調停とは何か
- 遺産分割調停の流れ
- 遺留分侵害額請求調停の流れ
- 調停が不成立になった場合
- 弁護士を入れるメリット
- 弁護士なしで調停に臨むリスク
- まとめ
1. 調停とは何か
相続でトラブルになったとき、いきなり裁判(訴訟)になるわけではありません。家庭裁判所での調停という手続きを経るのが一般的です。
調停とは、裁判官と調停委員が間に入り、当事者の話し合いを促して合意を目指す手続きです。判決で白黒をつける訴訟とは異なり、双方が合意することで解決します。
相続に関する調停には、主に以下の2種類があります。
- 遺産分割調停:誰がどの財産を取得するかを決める
- 遺留分侵害額請求調停:遺留分を侵害された相続人が金銭の支払いを求める
2. 遺産分割調停の流れ
①申立て
相続人の一人が、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てをします。原則自分以外の相続人全員が相手方となります。
申立てに必要な主な書類は、被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで)、相続人全員の戸籍謄本、遺産目録(これを裏付ける不動産・預貯金・株式などの資料)、不動産の登記事項証明書・固定資産評価証明書などです。
②第1回調停期日
申立てから1〜2か月後に第1回期日が指定されます。調停は基本的に月1回のペースで進みます(裁判所の混雑状況や準備する事項の多さによっては2か月や3ヵ月に1回のペースであることもあります。)
期日では、申立人と相手方が交互に調停室に入り、調停委員と話します。全員が同じ部屋に入るわけではないので、相手と直接顔を合わせずに進めることができます。
③争点の整理・主張
各期日で、遺産の範囲(何が遺産か)、各遺産の評価額(特に不動産や株式)、特別受益・寄与分の有無、各相続人の希望する取得方法などを整理していきます。
④合意・調停成立
全員が合意に至れば調停が成立し、調停調書が作成されます。調停調書は確定判決と同じ効力を持ちます。不動産の名義変更・預金の払い戻しなどはこの調書をもとに進めます。
⑤期間
遺産分割調停は、シンプルな案件でも半年〜1年、争いが多い複雑な案件では2〜3年以上かかることもあります。
3. 遺留分侵害額請求調停の流れ
遺留分とは
遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人(配偶者・子・父母)に最低限保障された相続分です。遺言で「財産をすべて長男に渡す」と書かれていても、他の相続人は遺留分を主張できます。
①まず内容証明郵便で意思表示
遺留分侵害額請求は、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知った時から1年以内に行使しなければなりません(時効)。まず内容証明郵便で「遺留分侵害額を請求する」という意思表示を行い、権利行使をすることが重要です。
②調停の申立て
相手方と協議がまとまらない場合、家庭裁判所に調停を申し立てます。遺留分侵害額請求は、調停前置主義(まず調停を経なければならない)が適用されます。
③調停の進行
調停では、遺留分の計算の基礎となる財産(遺産・生前贈与・特別受益など)の確認、遺留分侵害額の計算、支払い方法(一括・分割)などを協議します。
遺留分の計算は複雑で、生前贈与の評価・特別受益の扱いなどによって金額が大きく変わります。
④合意・不成立
合意すれば調停成立、まとまらなければ調停不成立となります。
⑤期間
遺留分調停は、遺産分割調停に比べるとシンプルなケースでは短期間(数か月〜半年程度)で終わることもありますが、財産の評価や生前贈与の範囲で争いがある場合は長期化します。
4. 調停が不成立になった場合
遺産分割調停が不成立の場合:自動的に審判に移行します。審判では、調停委員ではなく裁判官が遺産分割の内容を決定します。当事者の希望が通らない結果になることもあります。
遺留分調停が不成立の場合:調停不成立の証明書をもって、訴訟を提起します。
どちらも、調停が不成立になると手続きが長期化・複雑化します。調停段階での解決を目指すことが、時間・費用・精神的負担の観点から重要です。
5. 弁護士を入れるメリット
①法的な主張を正確に伝えられる
調停は話し合いの場ですが、法的な主張が通るかどうかで結果が大きく変わります。「特別受益がある」「寄与分を認めてほしい」「この不動産の評価額はおかしい」——こういった主張を法律の根拠をもって伝えるのは、法律の専門家でなければ難しいです。
②調停委員への対応
調停委員は中立の立場ですが、主張が不明確だったり証拠がなかったりすると、相手方に有利な方向で話が進むことがあります。弁護士がいれば、調停委員に対して的確に主張・証拠を示すことができます。
③証拠の収集・整理
金融機関への取引履歴照会、不動産評価の検討、特別受益の証拠収集など、調停前の準備段階から弁護士がサポートします。
④精神的な負担の軽減
相続トラブルは、家族間の感情的な対立を伴うことが多く、精神的な消耗が大きいです。弁護士が間に入ることで、直接相手とやり取りする機会が減り、冷静に手続きを進めることができます。
⑤審判・訴訟への移行もスムーズ
調停が不成立になった場合、弁護士がいればそのまま審判・訴訟に対応できます。途中から弁護士に依頼するより、最初から依頼している方が経緯を把握しており、スムーズに移行できます。
6. 弁護士なしで調停に臨むリスク
「調停は話し合いだから自分でできる」と思って弁護士なしで臨む方も多いですが、いくつかのリスクがあります。
不利な条件で合意してしまう 「早く終わらせたい」という気持ちから、本来受け取れるはずの金額より低い条件で合意してしまうケースがあります。一度調停調書の内容に合意すると、後から覆すことは原則できません。
特別受益・寄与分の主張が通らない 特別受益や寄与分は、主張するだけでなく証拠で裏付ける必要があります。証拠がなければ認められません。
相手方に弁護士がついている場合に不利 相手方だけ弁護士がついている場合、主張の質・証拠の整理・調停委員への対応に差が出ることがあります。
7. まとめ
遺産分割調停・遺留分調停は、適切な準備と主張が結果を左右します。
- 調停はおよそ1回のペースで進み、半年〜数年かかることも
- 遺留分は1年の時効があるため早めの対応が必要
- 弁護士を入れることで主張の質・証拠・精神的負担が大きく変わる
- 調停不成立後の審判・訴訟も見据えて早期に依頼することが重要
「調停を申し立てたいが何から始めればいいか分からない」「相手方から調停を申し立てられた」という方も、まずはご相談ください。当職(弁護士吉津和輝)では、相続問題について初回の法律相談を無料で対応しております。
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