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田んぼ・畑を相続したらやること ― 農業委員会への届出と相続登記の進め方(茨城県南部)

相続・遺産分割

田んぼ・畑を相続したらやること
― 農業委員会への届出と相続登記の進め方(茨城県南部)

弁護士 吉津和輝(茨城県弁護士会所属)
弁護士 吉津和輝(よしつ かずき)
茨城県弁護士会所属|2018年12月弁護士登録(登録から約7年)
主な取扱分野:相続・遺産分割、離婚・親権、刑事弁護、企業法務

農地(田んぼ・畑)を相続された方へ。茨城県南部では、ご実家が農家で、ご自身は会社員というご家庭も多く、「親名義の田畑を相続したが、自分は農業をしない」というご相談が見られます。農地の相続では、通常の不動産にはない農業委員会への届出が必要です。本記事では、相続登記との違い・届出の期限・誰も農業をしない場合の考え方を、条文に基づいて整理します。

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弁護士 吉津和輝(茨城県弁護士会所属)|〒302-0128 茨城県守谷市けやき台3-28-7
農地を相続したら必要な2つの手続き
① 相続登記(名義変更)
提出先:法務局
期限:取得を知った日から3年以内
根拠:不動産登記法第76条の2
② 農業委員会への届出
提出先:農地のある市町村の農業委員会
期限:おおむね10か月以内が目安
根拠:農地法第3条の3
※ 農地は①だけでなく②も必要。通常の宅地・建物にはない農地特有の手続きです。
Q親名義の田んぼ・畑を相続しました。まず何をすればよいですか?
結論として、農地の相続では「相続登記」と「農業委員会への届出」の2つの手続きが必要です。

農地(田んぼ・畑)を相続した場合、家や宅地と同じように法務局で相続登記(名義変更)を行う必要があります。これに加えて、農地に特有の手続きとして、その農地が所在する市町村の農業委員会への届出が必要です。

この届出は、農地法第3条の3で定められた義務です。通常の不動産にはない手続きのため、相続登記だけ済ませて届出を忘れてしまうケースが見られます。まずは「登記」と「届出」は別物だと押さえておくことが出発点になります。

【根拠】農地法(昭和27年法律第229号)第3条の3:「農地又は採草放牧地について第三条第一項本文に掲げる権利を取得した者は、同項の許可を受けてこれらの権利を取得した場合、同項各号(第十二号及び第十六号を除く。)のいずれかに該当する場合その他農林水産省令で定める場合を除き、遅滞なく、農林水産省令で定めるところにより、その農地又は採草放牧地の存する市町村の農業委員会にその旨を届け出なければならない。」
Q農業委員会への「届出」とは何ですか?相続登記とは違うのですか?
結論として、農業委員会への届出は相続登記とは別の手続きで、農地を相続したことを地域の農業委員会に知らせるためのものです。

農業委員会への届出とは、相続などで農地の権利を取得したことを、その農地のある市町村の農業委員会に知らせる手続きのことです。農業委員会が地域の農地の利用状況を把握し、有効活用につなげるための制度です。

期限について、農地法第3条の3の条文上は「遅滞なく」とされています。農林水産省や各市町村の案内では、相続を知った時点からおおむね10か月以内が目安として示されています。届出をせず、または虚偽の届出をした場合は、農地法第69条により10万円以下の過料の対象となる場面があります。

【根拠】農地法第69条:「第三条の三の規定に違反して、届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、十万円以下の過料に処する。」
【補足】この届出は、権利取得の効力そのものを生じさせる手続きではありません。名義を移す相続登記とは目的が異なり、両方を行う必要があります。
農地の「届出」と「許可」はどう違う?
場面 必要な手続き
相続で農地を取得する 農業委員会への届出(許可は不要)
農地を宅地などに転用する 原則として許可が必要
農地を他人に売る・貸す 原則として許可が必要
※ 相続そのものは届出で足りますが、その後の活用には別の手続きが関わります。
Q農地を相続したけれど、誰も農業をしません。そのまま放置してよいですか?
結論として、相続したからといって農地を自由に宅地化・売却できるわけではなく、活用には別の手続きの検討が必要です。

農地は、相続で取得した後でも、宅地などへの転用や、農業者でない方への売買・貸借には、原則として農地法上の許可が必要です。「自分の土地になったのだから自由にできる」とは限らない点に注意が必要です。

茨城県南部は、つくばエクスプレス(TX)の開通後に守谷市・つくばみらい市などで宅地開発が進む一方、常総市・坂東市方面をはじめ、いまも水田・畑が広がる地域です。ご実家の田畑を相続したものの耕作する人がいない、というケースは少なくありません。放置すると草刈りなど管理の負担が続くため、貸す・売る・農地中間管理機構に預けるといった選択肢を、要件を確認しながら検討することになります。

【補足】農地の転用・売買・貸借の可否は、市街化区域か市街化調整区域かなど、その土地の区分や個別の事情によって異なります。具体的な可否や手続きは、事案に応じて確認が必要です。
Q相続登記もしないといけないと聞きました。本当ですか?
結論として、相続登記は令和6年4月1日から義務化されており、農地も対象です。

令和6年(2024年)4月1日から相続登記が義務化されました。不動産登記法第76条の2により、相続で不動産を取得した人は、相続の開始と所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記を申請しなければなりません。農地も不動産ですので、この義務の対象です。

正当な理由がないのに申請を怠った場合は、不動産登記法第164条第1項により10万円以下の過料の対象となる場面があります。農業委員会への届出(Q2)とあわせ、登記の期限にも留意してください。

【根拠】不動産登記法(平成16年法律第123号)第76条の2第1項:「所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した者も、同様とする。」
【補足】登記申請の具体的な手続きや必要書類については、登記の専門家である司法書士にご相談ください。
Q相続人が複数いて、誰が農地を継ぐかでもめています。どうすればよいですか?
結論として、まずは相続人全員での遺産分割協議を行い、まとまらない場合は家庭裁判所の調停を利用する方法があります。

相続人が複数いる場合、農地を含む相続財産は、いったん相続人全員の共有になります(民法第898条)。そのうえで、誰がどの財産を取得するかを相続人全員の遺産分割協議で話し合って決めます。

農地は分けにくく、収益性の評価も意見が割れやすいため、話し合いが難航することがあります。まとまらない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てる方法があります。茨城県南部では、守谷市・取手市・牛久市・龍ケ崎市は水戸家庭裁判所龍ケ崎支部、つくばみらい市・つくば市・土浦市は土浦支部、常総市は下妻支部が管轄区域とされています。ただし遺産分割調停の申立先は相手方の住所地等によって決まるため、実際の手続きでは個別にご確認ください。

【根拠】民法(明治29年法律第89号)第898条第1項:「相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。」
Q農地を相続したくありません。相続放棄はできますか?
結論として、相続放棄は可能ですが、農地だけを選んで放棄することはできません。

相続放棄とは、預貯金や自宅も含めた相続財産のすべてを放棄する手続きです。放棄をした人は、その相続に関して初めから相続人でなかったものとみなされます(民法第939条)。したがって、「農地だけ要らないので放棄する」ということはできません。

相続放棄をするには、自己のために相続の開始があったことを知った時から原則3か月以内に、家庭裁判所へ申述する必要があります(民法第915条第1項・第938条)。この期間を過ぎると原則として放棄ができなくなるため、農地以外の財産も含めて、早めに相続財産全体を把握しておくことが大切です。

【根拠】民法第915条第1項:「相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。」
民法第939条:「相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。」
⚠️ 相続財産の一部を処分したり、期間を過ぎたりすると、放棄が認められなくなることがあります。放棄を検討する場合は、財産の取扱いに注意し、早めに確認することをおすすめします。
茨城県南部の農地相続について

守谷市・つくばみらい市はTX沿線の宅地化が進む一方、市街化調整区域には水田・畑が残り、取手市・龍ケ崎市・牛久市、さらに常総市・坂東市方面では農地の割合が高い地域です。「親が農業をしていたが、子世代は会社員で都市部に住んでいる」というご家庭では、農地の届出・登記・将来の活用が同時に課題となりがちです。農地を含む相続でお困りの際は、お早めにご相談ください。

農地を含む相続は、届出・登記・遺産分割が重なり、進め方に迷いやすい分野です。当職が状況をお伺いしたうえで、必要な手続きや選択肢をご説明します。初回相談は面談またはZOOMにて承っています。

弁護士 吉津和輝
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更新履歴

・2026年5月30日:記事を公開しました。

本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別事案への法的アドバイスではありません。具体的なご相談は弁護士にお問い合わせください。なお、本記事の内容は令和8年(2026年)5月時点の情報に基づいています。法律・実務の取り扱いは今後変更される可能性があります。
公開日:2026年5月30日|最終更新日:2026年5月30日