性依存と再発防止を守谷の弁護士が解説
|
弁護士 吉津和輝(よしつ かずき)
茨城県弁護士会所属|2018年12月弁護士登録(登録から約7年)
主な取扱分野:刑事弁護・家族法・交通事故・労働問題 |
「もう二度としない」と心に決めたのに、また同じことを繰り返してしまった。ご本人がそう感じている方、あるいはご家族のそうした行動に気づいて悩んでいる方へ。痴漢や盗撮を繰り返してしまう背景には、意思の強さ・弱さだけでは説明できない問題が隠れていることがあります。本記事では、守谷市・取手市・つくばみらい市など常磐線・つくばエクスプレス(TX)沿線にお住まいの方に向けて、「性依存」と呼ばれる問題の捉え方、再発が起きる仕組み、再発を防ぐための取り組み、そしてそれが刑事手続きの中でどう位置づけられるかを、弁護士が整理して解説します。
痴漢や盗撮で一度警察の捜査を受け、本人も家族も「これでもう終わりにしよう」と考える。それでも、しばらく経つとまた同じ行為に及んでしまう。こうした経過をたどる方は少なくありません。
このとき、「反省が足りない」「意思が弱い」という言葉で片づけてしまうと、本当の問題が見えなくなってしまいます。専門家によれば、痴漢や盗撮といった性的な問題行動を繰り返してしまう背景には、自分の意思だけではコントロールしにくい状態、いわゆる「性依存」の問題があることが少なくないと指摘されています。
本記事は、性依存という問題を本人・ご家族の目線から整理し、再発を防ぐために何ができるのかを考えるための記事です。あわせて、再発防止の取り組みが、逮捕後の刑事手続きの中でどのような意味を持つのかも解説します。なお、当職は医師ではありませんので、医学的な診断に関わる部分は、専門家により一般にどう説明されているかという形で紹介します。
「性依存」とは、性的な問題行動に対するコントロールを失い、やめたいと思っていても行為を繰り返してしまう状態を指す言葉として使われています。アルコールやギャンブルへの依存と同じく、行為への依存の一類型として説明されることがあります。
ここで注意したいのは、性依存が、性的な欲求の強さだけで説明できるものではないという点です。痴漢や盗撮といった行為は、外から見ると性的な欲求を満たすための行為のように見えます。しかし専門家によれば、性依存の状態にある方の多くは、性的な欲求を満たすためというより、ストレスへの対処として問題行動を繰り返していると指摘されています。仕事や人間関係で抱えたストレスをうまく解消できないまま、その対処の手段として性的な問題行動が用いられている、という説明です。
なお、「性依存症」という呼び方が使われることもありますが、これが医学上の正式な診断名として確立しているかどうかについては、専門家の間でも整理の途上にあるとされています。本記事では、医学的な診断の問題には立ち入らず、「やめたいのにやめられない状態」という意味で「性依存」という言葉を用います。
ここで本記事を通じて押さえておきたいのは、依存とは、専門家によれば、脳の働き方に関わる問題として説明されているということです。アルコールやギャンブルへの依存と同じように、ある行為を繰り返すうちに、その行為を求める仕組みが脳の中で強く働くようになり、自分の意思で抑えようとしてもうまくいかなくなる、と説明されています。だからこそ、「もう二度としない」という決意や、本人の意思の力だけで何とかしようとするアプローチは、依存という問題の性質に必ずしも合っていません。意思が弱いからやめられないのではなく、意思の力だけで抑え込もうとすること自体が、依存への対処として十分でない、ということです。大切なのは、正式な病名が何かということよりも、本人がコントロールを失っている状態にあるなら、その状態に合った適切な対処が必要だ、という点です。
「どうして、また繰り返してしまうのか」。これは本人にとっても家族にとっても、最もつらい問いだと思います。専門家による説明を、本人・家族が理解しやすい形で整理すると、再発は次のような段階を追って進んでいくとされています。
再発は、ひとつの原因で起きるというより、いくつかの条件が重なったときに動き出すとされています。特定の時間帯・場所や人が少ない状況といった外的な条件と、孤独感・劣等感・強いストレスといった内的な条件が重なったとき、行為に向かうスイッチが入りやすくなる、という説明です。
「少しくらいなら」「一度だけなら」といった、行為に向かう考えが頭をもたげてくる段階です。
こうした思考や感情が積み重なると、行為に移る一歩手前まで進んでしまうとされています。連鎖が進むほど止まりにくくなる、という説明です。
この説明から見えてくるのは、再発が「いきなり起きる」ものではなく、特定の条件が重なったところから始まる連鎖の中で進んでいく、ということです。逆に言えば、その条件が重なる場面や、連鎖の早い段階で気づいて対処できれば、行為に至る前に止められる可能性がある、ということでもあります。Q4で、その具体的な取り組みを説明します。
また、専門家によれば、性依存の状態にある方は「同じ種類の行為だけを繰り返す」傾向があるとも指摘されています。痴漢を繰り返す方は痴漢を、盗撮を繰り返す方は盗撮を、というように、特定の行為に固着するという説明です。これは、本人の問題が「特定の行為のコントロールの難しさ」にあることを示すものとして語られています。
逮捕されたり、家族に知られて叱責されたりしたとき、本人は「もう二度としない」と固く心に決めます。その反省や決意が、嘘や演技だというわけではありません。多くの場合、その気持ちは本物です。
しかし、専門家によれば、決意だけでは再発を防ぎきれないことがあるとされています。Q1で触れたとおり、依存は脳の働き方に関わる問題として説明されており、性依存も、自分の意思だけではコントロールしにくくなっている状態です。「もう二度としない」という決意は、その瞬間には本物であっても、再発に向かう連鎖(Q2)が始まったときに、それを止める力としては必ずしも十分ではない、という説明です。これは、本人の決意が足りないという話ではありません。決意や意思の力だけで抑え込むという方法そのものが、依存という問題の性質に合っていない、ということです。
もう一つ、専門家が指摘するのは「認知の歪み」と呼ばれる思考のくせです。問題行動を続けてしまう方の中には、「ばれなければ相手を傷つけることにはならない」「大したことではない」といった、本人にとって都合のよい考え方を持ち続けているケースがあるとされています。こうした思考のくせが残っている限り、表面的に決意をしても、また連鎖が始まりやすい、と説明されています。
つまり、再発を本当に防ぐためには、その場の反省や決意に加えて、コントロールの難しさという根本や、思考のくせそのものに働きかける取り組みが必要になる、ということです。これは本人の努力不足を責める話ではなく、適切な方法を用いる必要がある、という話です。
再発が、特定の条件が重なったところから始まる連鎖の中で起きるものだとすれば(Q2)、防ぐための取り組みも、その連鎖に沿って考えることができます。専門家の説明をもとに、本人・家族が取り組める方向性を整理します。
一つ目は、トリガーとなる条件から距離を取ることです。再発に向かう連鎖は、特定の条件が重なったところから始まります。であれば、トリガーになりやすい状況や物から、あらかじめ距離を取っておくことが対処の出発点になります。たとえば、行為に使われていた道具を手放す、混雑する時間帯の移動を避けるなど、本人の事案に応じた工夫が考えられます。何がトリガーになっているかは人によって異なるため、これは本人と専門家が一緒に整理していく作業になります。
二つ目は、トリガーが重なったときの対処をあらかじめ決めておくことです。トリガーとなる条件を完全になくすことはできません。そこで、条件が重なって行為に向かう考えが出てきたとき、どう行動するかをあらかじめ決めておく、という考え方があります。連鎖の早い段階で立ち止まる手立てを準備しておく、ということです。専門的なプログラムでは、こうした対処を本人が自分の言葉で具体的に書き出し、繰り返し見直していく取り組みが行われています。
三つ目は、専門的な治療やプログラムを継続することです。トリガーへの対処や、Q3で触れた思考のくせへの働きかけは、本人ひとりの努力だけで進めるのは簡単ではありません。専門の医療機関や、同じ問題を抱える人が集まる場での取り組みが、回復を支えるとされています。詳しくはQ5で説明します。
専門家の説明によれば、性依存に対する取り組みには、大きく分けて次のようなものがあります。
一つは、専門の医療機関での治療です。性的な問題行動の再発防止を目的とした治療では、ものの見方や考え方に働きかけ、行動を自分でコントロールできるようにしていく方法(認知行動療法と呼ばれます)が中心的なものとして用いられているとされています。これは、刑事施設内で行われる再発防止の指導でも中核とされている考え方だと説明されています。
もう一つは、同じ問題を抱える人たちが集まる場です。性的な問題行動の当事者が集まる「自助グループ」と呼ばれる場があります。自助グループでは、治療を受けるという受け身の立場ではなく、当事者自身が主体となって回復を目指していくことになります。同じ問題を抱える人どうしが体験を分かち合うことで、ひとりでは気づけなかった点に気づいたり、回復を続ける支えを得たりできるとされています。専門家は、依存からの回復には「同じ問題を抱える仲間の存在」が大きな意味を持つと説明しています。やめたいのにやめられないという問題は、ひとりで抱えていると孤立しがちですが、同じ問題に向き合う仲間とつながること自体が、回復を支える力になる、という説明です。
もっとも、性依存の治療に対応している医療機関は数が限られているという実情があるとも指摘されています。どこにつながればよいか分からないというときは、Q9で触れるとおり、お住まいの自治体の相談窓口に相談する方法もあります。当職は医療の専門家ではないため、特定の医療機関をお勧めすることはしませんが、刑事手続きの中で治療をどう位置づけるかという観点から、ご本人・ご家族と一緒に道筋を考えることはできます。
再発防止の取り組みは、第一に本人の回復のためのものです。しかし、それだけにとどまらず、刑事手続きの中でも意味を持つ場面があります。
捜査の段階では、ご本人が治療やプログラムに取り組んでいることは、反省や再発防止に向けた具体的な姿勢を示す事情として、検察官が起訴・不起訴を判断するうえで考慮されることがあります。弁護活動の中では、こうした取り組みの状況を整理し、捜査機関に伝えていくことになります。
起訴されて法廷での裁判になった場合にも、治療への取り組みは量刑の判断において考慮される事情のひとつです。再発防止に向けた環境が整っていることは、判決で執行猶予が付くか実刑かが問題となる場面で、本人に有利な事情として主張していくことができます。主治医や家族に証人として証言してもらうといった立証方法も考えられます。
ここで大切なのは、これらの取り組みは「処分を軽くするための手段」としてだけ意味があるのではない、ということです。再発防止は、本人が二度と同じ過ちを繰り返さず、被害を生まない生活を取り戻すためのものです。その本来の目的に向けた取り組みが、結果として刑事手続きの中でも適切に評価される、という関係にあります。
ご家族が本人の行動に気づいたとき、「自分たちがしっかり見ていなければ」と考えるのは自然なことです。実際、専門家も、回復には家族の支えが大きな意味を持つと説明しています。
一方で、家族だけで本人を監視し、問題を抱え込もうとすると、家族のほうが先に疲れ果ててしまうおそれがあります。性依存の問題は、本人の意思だけでコントロールすることが難しい問題であり、それを限られた家族だけで解決しようとするのは現実的ではない、と専門家は指摘しています。家族が本人を監視し、叱責するだけの状態が続くと、かえって本人が孤立し、問題が見えにくくなってしまうこともあるとされています。
望ましいのは、家族だけで抱え込まず、医療や福祉の専門家を含めた支援の輪の中で本人に関わっていくことだとされています。家族は、本人が専門的な治療や相談につながれるよう後押しする役割を担い、専門家がその先の関わりを支える、という形です。
なお、性依存の問題では、家族のほうが「問題を知られたくない」「親族にも隠しておきたい」と考え、相談を避けてしまうことがあるとも言われています。気持ちとしては理解できることですが、誰にも相談できないまま抱え込むことは、結果として良い方向につながりにくいとされています。家族だけで抱え込まず、相談先を持つことが、最初の一歩になります。
本人が事件を起こしたとき、ご家族もまた、大きな精神的な負担を抱えます。「どうして気づかなかったのか」と自分を責めたり、本人への複雑な感情に苦しんだりと、家族自身が追い詰められてしまうことは少なくありません。
本人を支えようとする中で、家族自身が先に倒れてしまっては、支え合いが続きません。専門家は、本人への支援と並んで、家族自身が支援を受けられる環境を持つことが大切だと説明しています。
家族自身が精神科や心療内科で相談を受けることもできますし、同じ立場の家族が集まり、悩みを分かち合う場もあるとされています。誰にも言えなかった苦しさを口に出せること、同じ状況にある人とつながれること自体が、家族にとって支えになると言われています。家族を支援する団体や、自治体の相談窓口もあります。
ご家族が「自分たちだけで何とかしなければ」と思い詰める必要はありません。家族が支援を受けることは、本人を見捨てることではなく、むしろ本人を支え続けるための土台になります。
相談先は、何を相談したいかによって変わります。
すでに逮捕されている、警察の捜査を受けている、呼び出しを受けているといった場合は、まず弁護士に相談してください。逮捕後の手続きには法律で定められた時間制限があり、早い段階での対応が、取れる選択肢の幅に関わります。再発防止の取り組みを刑事手続きの中でどう位置づけるかも、弁護士と一緒に検討できます。
治療や専門的な対処について知りたい場合は、専門の医療機関や、お住まいの自治体の相談窓口が入口になります。性依存の治療に対応している医療機関は限られていますが、どこに相談すればよいか分からないというときは、自治体の相談窓口に相談することで、医療機関の情報提供を受けられる場合があります。
守谷市・取手市・つくばみらい市など常磐線・TX沿線にお住まいで、ご本人やご家族がこうした問題に直面されている方は、当職にご相談いただくこともできます。刑事手続きへの対応と、再発防止の取り組みをどう組み合わせていくか、状況をうかがったうえで一緒に考えます。
守谷市・取手市・つくばみらい市は、常磐線・つくばエクスプレス沿線で都内方面への通勤・通学が多い地域です。痴漢や盗撮を繰り返してしまう問題は、ご本人やご家族だけで抱え込まれていることが多く、誰にも相談できないまま時間が過ぎてしまいがちです。事件として表面化したことは、つらい出来事である一方で、問題に向き合い、再発防止の取り組みを始めるきっかけにもなり得ます。地域にお住まいで悩んでいる方は、ひとりで抱え込まず、ご相談ください。
痴漢や盗撮を繰り返してしまう問題は、刑事手続きへの対応と、再発防止の取り組みの両面から考えていく必要があります。ご本人・ご家族の状況をおうかがいしたうえで、取り得る対応をご説明します。まずはお気軽にお問い合わせください。
📞 050-3623-1320
守谷市・取手市・常総市・つくばみらい市・龍ケ崎市・牛久市・つくば市・土浦市・野田市・我孫子市・北柏をはじめ、茨城県南部・千葉県北西部にお住まいの方からの、刑事事件のご相談をお受けしています。弁護士 吉津和輝(茨城県弁護士会所属)までお気軽にどうぞ。
本記事のうち、性依存や治療に関する一般的な説明は、性犯罪の加害者臨床・刑事弁護に関する専門書等で示されている知見を参考にしています。医学的な診断・治療に関する事項は、専門の医療機関にご確認ください。
・2026年5月18日:記事を公開
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別事案への法的アドバイスや、医学的な診断・助言ではありません。具体的な法的問題は弁護士に、治療に関する事項は専門の医療機関にお問い合わせください。なお、本記事の内容は令和8年(2026年)5月時点の情報に基づいています。
公開日:2026年5月18日|最終更新日:2026年5月18日
