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学習塾・習いごと教室 — 顧問契約の法的性質と判断基準

顧問弁護士・学習塾習い事

学習塾・習い事教室に顧問弁護士は本当に必要か — 顧問契約の法的性質と判断基準

弁護士 吉津和輝(茨城県弁護士会所属)
弁護士 吉津和輝(よしつ かずき)
茨城県弁護士会所属|2018年12月弁護士登録(登録から約7年)
主な取扱分野:企業法務(顧問・労務・契約書・カスハラ対応)、家族法、交通事故、相続、刑事弁護

学習塾・習い事教室の経営者の方へ。「顧問弁護士は本当に必要か」「毎月の顧問料を払う価値があるのか」と迷っている方向けの記事です。本記事では、まず顧問契約とは法的にどのような契約なのか(民法656条・準委任契約)、弁護士に相談できる範囲と他士業との役割分担(弁護士法72条)を整理した上で、顧問契約とスポット相談の使い分け、教室の規模別の判断軸を解説します。特商法・消費者契約法・講師労務など、実際の論点解説については別記事学習塾・習い事教室に顧問弁護士は必要か — 特商法・消費者契約法・講師労務をあわせてご参照ください。

この記事の目次
  1. 顧問契約とはどのような契約か(法的性質)
  2. 顧問契約とスポット相談の違い
  3. 個人経営の小さな教室でも顧問契約は必要か
  4. 顧問契約が向いている教室の特徴
  5. スポット相談で対応できる場面
  6. 顧問料の相場
  7. 顧問契約と個別案件(訴訟等)の費用関係
Q弁護士との顧問契約とは法的にどのような契約ですか?
A
結論として、弁護士との顧問契約は民法656条の準委任契約(委任に関する規定を法律行為でない事務の委託に準用するもの)に分類されるのが一般的です。
【根拠】民法(明治29年法律第89号)第643条(委任)
「委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。」
【根拠】民法第656条(準委任)
「この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。」
弁護士への法律相談・書面レビューなどの事務は、多くの場合、法律行為そのものではなく事実行為にあたるため、準委任契約として民法656条により委任の規定が準用されます。この結果、弁護士は次の義務を負います。
① 善管注意義務(民法第644条):善良な管理者の注意をもって委任事務を処理する義務
② 報告義務(民法第645条):委任者の請求があるときは、委任事務の処理状況を報告する義務
③ 秘密保持義務(弁護士法第23条):職務上知り得た秘密を保持する義務
④ 弁護士職務基本規程第23条:正当な理由なく依頼者の秘密を他に漏らしてはならない義務
【根拠】弁護士法(昭和24年法律第205号)第23条
「弁護士又は弁護士であつた者は、その職務上知り得た秘密を保持する権利を有し、義務を負う。但し、法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。」
経営者が経営仲間・取引先に事業の悩みを相談する場合と、弁護士に顧問契約に基づいて相談する場合の最大の違いは、相談内容の機密性が法的に保護される点です。弁護士法・弁護士職務基本規程により弁護士が秘密保持義務を負うため、学習塾・習い事教室の運営状況、講師との紛争内容、保護者とのトラブル内容など、外部に漏れると困る情報を安心して共有できます。
Q顧問契約とスポット相談は何が違いますか?
A
結論として、両者は料金体系・継続性・情報蓄積の3点で異なります。
比較項目 顧問契約 スポット相談
契約形態 継続的準委任契約 単発の準委任契約
料金体系 月額固定 相談時間・案件ごとの個別料金
相談の即時性 窓口が固定、継続的な関係 新規相談の都度予約
情報蓄積 事業内容・規約・講師体制を弁護士が把握 相談のたびに背景説明
簡易な書面レビュー 月額内で対応可能な事務所が多い 都度料金
個別案件(訴訟等) 別料金(割引適用の運用あり) 都度料金
顧問契約の実務上のメリットは、相談の初動対応のスピードと情報蓄積にあります。例えば「元講師がSNSで教室を誹謗中傷している」という相談の場合、スポット相談であれば初回は教室の概要・講師の契約内容・これまでの経緯を1から説明する必要があります。一方、顧問弁護士は事前に契約書・就業規則等を確認しているため、その場で具体的対応方針の検討に入れる場面があります。
一方で、トラブル発生頻度が低く、年1~2回の相談で済む教室の場合、スポット相談の方が費用総額では安くなる場面があります。「継続性がある論点が発生しているか」を基準に選ぶのが合理的です。
Q個人経営の小さな教室ですが、顧問契約は大げさではないですか?
A
結論として、教室の規模・相談頻度に応じて契約形態を調整できるため、個人経営だから顧問契約は不要とも限りません。
個人経営の教室でも、次のような場面が発生する可能性があります。
① 入会規約・利用規約が法令改正に追随していない(特定商取引法・消費者契約法の改正)
② 講師・アルバイトとの契約書面が整備されていない(業務委託契約書・雇用契約書)
③ 保護者との返金トラブル・退塾トラブルが発生
④ 生徒同士のトラブルによる損害賠償請求
⑤ SNSでの誹謗中傷・口コミサイトでの風評被害
⑥ 令和8年10月1日施行のカスハラ防止義務化への対応
⚠️ 上記の各項目は、発生すれば数十万円〜数百万円規模の紛争に発展する可能性があるため、個人経営の教室であっても事前のリスク管理は重要な経営課題です。「顧問契約を結ぶまでは必要ないが、一度書面を整備したい」という段階であれば、スポット相談から始める選択肢もあります。
Q顧問契約が向いている教室の特徴は何ですか?
A
結論として、講師を複数雇用している、複数教室を展開している、保護者トラブルが継続的にある、フランチャイズ本部との契約が絡む、SNS・口コミトラブル経験がある、といった特徴を持つ教室は顧問契約のメリットが出やすい傾向があります。各特徴と発生しやすい論点を整理すると次のとおりです。
教室の特徴 発生しやすい論点
講師・アルバイトを複数雇用 雇用契約書・業務委託契約書の整備、退職トラブル、未払い残業代請求、労働者性の問題、授業準備時間の労働時間該当性
複数教室を展開 本部・教室間ルール、教室長との業務委託契約、教室ごとの規約統一、開業・閉鎖に伴う労務対応
保護者トラブルが継続的にある 初動対応の判断、書面送付の要否、返金交渉の落としどころ、法的対応(内容証明・訴訟)への切り替え時期
フランチャイズ本部との契約がある ロイヤリティ交渉、契約更新、競業避止義務の範囲、契約終了時の原状回復
SNS・口コミトラブル経験がある 削除請求、発信者情報開示請求(プロバイダ責任制限法)、損害賠償請求、名誉毀損の成否の検討
上記のうち、1~2項目でも該当する場合、年間を通じて相談が発生する可能性があります。特に、労務トラブル・フランチャイズ紛争・SNS削除請求は、初動の遅れが結果に直結する類型です。顧問契約で継続的な相談窓口を持っておくことで、発生した瞬間に対応を開始できる点が実務上のメリットです。
Qスポット相談で対応できる場面はどんな場面ですか?
A
結論として、単発の書面作成、単独のトラブル対応、契約書のチェックなど、継続性のない個別案件はスポット相談で対応できます。スポット相談で対応できる典型的な場面は次のとおりです。
① 書面の新規作成・レビュー
入会規約・利用規約のレビュー、業務委託契約書・雇用契約書の作成、内容証明郵便の起案、フランチャイズ契約書のレビュー

② 単発のトラブル対応
1件の未払い月謝の督促、1件の退塾返金交渉、1件のSNS誹謗中傷への削除請求

③ 事前相談
新規事業展開の法務チェック、新しい講師雇用形態の適法性確認、料金体系変更時のリスク確認
スポット相談から顧問契約への移行パターン
実務的には、次のような流れを踏む経営者もいらっしゃいます:
① ステップ1:入会規約・利用規約のレビューをスポット依頼
② ステップ2:就業規則・業務委託契約書の作成をスポット依頼
③ ステップ3:保護者トラブル・講師退職などの個別案件をスポット相談
④ ステップ4:相談頻度が増えた段階で顧問契約への切り替えを検討

最初から顧問契約でなくても問題ありません。教室の運営状況を把握する意味でも、最初は数回のスポット相談で関係を作ってから顧問契約を検討する形の方が、お互いに適切な契約内容を組み立てやすい場面もあります。
Q顧問料の相場はどのくらいですか?
A
結論として、顧問料は法令で定められた料金体系がなく、各弁護士・各事務所が自由に設定できます(平成16年4月の弁護士報酬規程廃止以降)。相談範囲・相談頻度・個別案件の割引有無により幅があります。顧問料の設定要素としては、次のような項目が考慮されます。
① 想定される相談頻度:月何件程度の相談が見込まれるか
② 相談範囲:法律相談のみか、書面作成・レビューを含むか
③ 対応スピード:緊急対応の有無、初動対応の時間帯
④ 個別案件の割引:顧問先の着手金・報酬金の割引適用の有無と割引率
⑤ 従業員・家族相談:経営者家族・従業員の個人的な法律相談を含むか
⚠️ 具体的な顧問料の金額は、教室の規模・想定される相談頻度・相談範囲により異なります。
Q顧問契約すると、個別案件(訴訟等)の費用も変わりますか?
A
結論として、顧問契約の月額料金は通常、法律相談・簡易な書面作成の範囲であり、訴訟・労働審判・発信者情報開示請求といった個別案件は別料金となるのが一般的です。学習塾・習い事教室で想定される個別案件の類型は次のとおりです。
個別案件の類型 具体例
未払い月謝の回収 支払督促申立、少額訴訟、通常訴訟
労働紛争 未払い残業代請求への対応、労働審判、解雇無効訴訟への対応
SNS誹謗中傷対応 削除請求、発信者情報開示請求、損害賠償請求訴訟
契約紛争 フランチャイズ契約違反、テナント契約・賃貸借契約のトラブル
事故対応 生徒のけがに関する損害賠償交渉、施設事故の示談交渉
書面作成 内容証明郵便、契約書(長文・複雑なもの)、規約の大幅改定
個別案件の料金体系は、着手金(事件着手時)と報酬金(事件解決時)の2段階構成が一般的です。着手金・報酬金の具体的な金額は、事件の経済的利益・難易度により決定されるため、個別にお見積りをご提示します。
当事務所でも、顧問契約を締結いただいた場合は、個別案件の着手金・報酬金について所定の割引を適用する運用としています。具体的な割引率は顧問契約締結時にご説明します。顧問料の月額費用と、個別案件の費用総額を合わせて、長期的にどちらが合理的かをご検討いただく形になります。
守谷・取手・柏エリアの実情

TX(つくばエクスプレス)沿線の守谷・つくばみらい・柏たなか・柏の葉エリアは、都内勤務の共働き世帯が多く、個別指導塾・習い事教室の集積度が高い地域です。個人経営から中規模FC加盟教室まで業態は様々で、生徒数の拡大・講師雇用の増加といったタイミングで法務体制の整備を検討される方が多い印象です。特に、複数の講師・アルバイトを雇用する段階、あるいはSNS経由での集客を本格化する段階で、継続的な相談窓口として顧問契約を検討される方が増える傾向があります。紛争が発生してから慌てて弁護士を探すより、平時からの関係構築が実務的には重要です。

「うちの教室に顧問弁護士が必要かどうか」という段階でも、お気軽にご相談ください。状況をお聞きした上で、顧問契約・スポット相談・書面整備のいずれが適しているかを含めてご説明します。無理に顧問契約をお勧めすることはしません。

弁護士 吉津和輝
茨城県弁護士会所属
📧 [email protected]
📞 050-3623-1320
対応エリア

守谷市・取手市・常総市・つくばみらい市・龍ケ崎市・牛久市・つくば市・土浦市・野田市・我孫子市・北柏をはじめ、茨城県南部・千葉県北西部の学習塾・個別指導塾・英会話教室・ピアノ教室・そろばん教室・スイミングスクール・体操教室・プログラミング教室・武道教室等の経営者の方からの顧問契約・教室運営法務に関するご相談もお受けしています。弁護士 吉津和輝(茨城県弁護士会所属)までお気軽にどうぞ。

参考資料・情報源

e-Gov法令検索(デジタル庁)
日本弁護士連合会

更新履歴
  • 令和8年(2026年)4月18日:初版公開

本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別事案への法的アドバイスではありません。具体的なご相談は弁護士にお問い合わせください。なお、本記事の内容は令和8年(2026年)4月時点の情報に基づいています。法律・実務の取り扱いは今後変更される可能性があります。
公開日:2026年4月18日|最終更新日:2026年4月18日