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学習塾・習い事のカスハラ対応|守谷・つくばみらい・常総・取手| — モンスターペアレント・退会返金・SNS誹謗中傷

労働問題・カスハラ・学習塾習い事

学習塾・習い事のカスハラ対応
— モンスターペアレント・退会返金・SNS誹謗中傷

弁護士 吉津和輝 / 茨城県弁護士会所属
弁護士 吉津和輝(よしつ かずき)
茨城県弁護士会所属(登録番号57714)/2018年12月弁護士登録
主な取扱分野:企業法務(顧問・労務・契約書・カスハラ対応)、労働問題(使用者側)、家族法、交通事故
学習塾・習い事教室の経営者・教室長・講師の方へ。「『成績が上がらないのは先生のせいだ』と保護者から長時間詰められた」「『退会するから全額返金しろ』と要求された」「講師個人の名前がSNSや口コミサイトに晒された」——守谷・取手・柏エリアはTX(つくばエクスプレス)沿線・常磐線沿線を中心に子育て世帯が多く、個別指導塾・英会話・ピアノ・そろばん・スイミング・プログラミング・武道など、子ども向け習い事の教室が数多く営まれている地域です。本記事では、当職が保護者トラブルのご相談をお受けする際に用いている法令・契約の判断枠組み——準委任契約の性質、特定商取引法のクーリングオフと中途解約上限、令和8年10月施行のカスハラ対策義務化、情報流通プラットフォーム対処法——を、教室運営の実務に即して整理します。
— 教室運営・保護者トラブルのご相談を承っています —
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弁護士 吉津和輝(茨城県弁護士会所属)/〒302-0128 茨城県守谷市けやき台3-28-7
Q 「成績が上がらない、返金しろ」と保護者から強く求められました。応じる義務はありますか?
A
結論として、学習塾・習い事教室の指導契約は民法656条の準委任契約と解されるのが一般的で、成績向上や合格という「結果」の保証を法的義務として負う契約ではありません。したがって、成績不振のみを理由とする全額返金に応じる法的義務は原則としてありません。

準委任契約とは、法律行為でない事務(授業・指導の提供)の委託を内容とする契約のことです。準委任契約における受任者(教室側)が負うのは、善良な管理者の注意をもって指導という事務を誠実に処理する義務(善管注意義務・民法644条)、すなわち合理的な内容・水準の授業を約束どおり提供する義務であって、成績向上・合格という結果まで請け負う義務(いわゆる結果債務)ではないのが原則です。

【根拠】民法(明治29年法律第89号)第643条(委任)
「委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。」
同法第656条(準委任)
「この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。」

当職が返金要求のご相談をお受けする際は、次の3点をこの順序で確認します。①広告・パンフレット・契約書に「合格保証」「〇〇点保証」「成績が上がらなければ返金」等の結果保証の文言がないか、②授業回数の不足・無資格者による指導・契約と異なる指導形態など、教室側の債務不履行にあたる事情がないか、③入会規約の返金・精算条項がどう定められているか——です。①②のいずれかに問題があれば、返金や一部精算に応じるべき場面が出てきますし、逆にいずれも問題がなければ、準委任契約の法的性質を前提に書面で丁寧に説明するのが基本方針になります。

⚠️ 例外的に返金義務・責任が問題となる場面:①契約書・広告に結果保証を明記している場合、②授業の実施回数不足・講師の資格虚偽など明らかな債務不履行がある場合、③「合格実績」等の表示が不当景品類及び不当表示防止法(景表法)の優良誤認表示に該当し得る場合。広告の文言は入会前の段階で一度総点検しておくことをおすすめします。

なお、回答はできる限り口頭ではなく書面(またはメール)で行い、説明した内容の記録を残しておくと、後述のカスハラ対応(Q3)に発展した場合にも対応の正当性を示す資料になります。

Q 退会を理由に全額返金を求められました。特定商取引法のクーリングオフ・中途解約との関係はどうなりますか?
A
結論として、契約期間が2か月を超え、支払総額が5万円を超える学習塾・家庭教師・語学教室の契約は、特定商取引法の「特定継続的役務提供」に該当し、①契約書面の受領日から8日間のクーリングオフ(同法48条)と、②その後の中途解約時に教室側が請求できる金額の上限(同法49条)の両方の規律を受けます。「途中退会しても一切返金しない」という規約があっても、上限を超える部分は主張できません。

特定継続的役務提供とは、継続的なサービス提供のうち目的の実現が確実でないもの(特定継続的役務)を、政令で定める期間・金額を超えて提供する取引類型のことです。対象となる役務は政令で7業種——エステティック、美容医療、語学の教授(語学教室)、家庭教師等、学習塾等、パソコン教室、結婚相手紹介サービス——に限定されています(特定商取引に関する法律施行令別表第4)。

【根拠】特定商取引に関する法律(昭和51年法律第57号)第41条・第48条・第49条、同法施行令(昭和51年政令第295号)第24条・別表第4
学習塾・家庭教師・語学教室の該当基準は「役務提供期間2か月超」かつ「支払総額5万円超」(施行令24条・別表第4)。48条は契約書面(法42条2項)の受領日から起算して8日間の無条件解除(クーリングオフ)を認め、この場合、事業者は損害賠償・違約金の請求ができず(同条4項)、提供済みの役務の対価も請求できず(同条6項)、受領済みの金銭は速やかに返還しなければなりません(同条7項)。49条2項は、クーリングオフ期間経過後の中途解約について、事業者が請求できる額を「提供済みの役務の対価+政令で定める額(役務提供開始前は政令で定める額のみ)」に制限しています。

実務上まず押さえるべきは、中途解約時の請求上限額が「学習塾型」か「家庭教師型」かで異なる点です。施行令別表第4は、事業者が用意する教室等で提供する学力の教授(=学習塾)と、それ以外の場所で提供する学力の教授(=家庭教師・訪問指導等)を別の役務として扱い、上限額を分けています。教室通学と自宅指導の両コースを持つ事業者では、コースごとに適用される上限が変わり得るため、契約書の役務内容の記載と実際の提供形態を突き合わせて確認する必要があります。

役務の類型 提供開始「前」の解約 提供開始「後」の解約(提供済み対価に加算できる額)
学習塾(教室で提供) 1万1000円 2万円 または 1か月分の役務の対価(授業料)に相当する額のいずれか低い額
家庭教師等(教室以外で提供) 2万円 5万円 または 1か月分の役務の対価(授業料)に相当する額のいずれか低い額
語学教室 1万5000円 5万円 または 契約残額の20%のいずれか低い額
— 中途解約時の請求上限(特定商取引法施行令別表第4より作成)—
【精算の計算例】月謝2万5000円・6か月一括払い(総額15万円)の学習塾コースを、2か月受講した時点で中途解約する場合——提供済みの対価5万円(2か月分)+「2万円と1か月分2万5000円のいずれか低い額」=2万円、合計7万円が教室側の請求上限となり、受領済みの15万円との差額8万円は返還が必要になる計算です(教材等の関連商品がない単純化した例です)。
⚠️ 教室側の防御の第一歩は「書面」です。特商法は契約締結前の概要書面と契約締結後の契約書面の交付を義務付けており(法42条)、法定の記載事項を満たす契約書面を交付していない場合、8日間のクーリングオフ期間がそもそも進行を開始しないと解されています。書面不備のまま運営を続けると、契約から何か月経っても無条件解除(既払金全額の返還)を受け得る状態が続くことになります。
なお、学習塾に関する別表第4の役務は「学校(幼稚園・大学を除く)の児童・生徒・学生」を対象とした学力の教授とされているため、未就学児のみを対象とする幼児教室は特商法の「学習塾」に該当しない場面があります。自教室のコースがどの類型に当たるかは、契約書の役務内容の記載とあわせて個別に確認が必要です。
特商法の対象
学習塾・家庭教師・語学教室(期間2か月超+総額5万円超の場合)。クーリングオフと中途解約上限の両方が適用。
特商法の対象外
ピアノ・スイミング・そろばん・書道・体操・武道等の教室。ただし消費者契約法による規律(下記)は及ぶ。
— 図1:特商法「特定継続的役務提供」の対象・対象外 —

特商法の対象外の習い事教室でも、消費者契約法は適用されます。「年間分を一括前払い、途中退会しても一切返金しない」といった条項は、解約に伴い事業者に生ずべき「平均的な損害」を超える部分が無効とされ(消費者契約法9条1項1号)、また消費者の利益を一方的に害する条項として無効とされる場面があります(同法10条)。返金交渉では、①契約類型の確認(特商法対象か否か・学習塾型か家庭教師型か)、②該当基準(期間・金額)の当てはめ、③規約の返金・違約金条項の有効性チェック、④提供済み対価と上限額を踏まえた精算額の算定、⑤合意書による確定——の順で進めるのが定石です。

Q 保護者からの長時間のクレーム電話・面談が続いています。どこからがカスタマーハラスメントで、法的にどう対応すべきですか?
A
結論として、業務に著しい支障を生じさせる長時間・反復のクレーム対応要求は、正当な苦情の範囲を超えたカスタマーハラスメント(カスハラ)にあたる場面があります。令和8年(2026年)10月1日施行の改正労働施策総合推進法により、講師・スタッフを1人でも雇用している教室は、規模を問わず、カスハラから労働者を守るための雇用管理上の措置義務を負うことになります。

カスタマーハラスメントとは、厚生労働省の指針上、①顧客等の言動であって、②その業務の性質等に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるもの——の3要素で捉えられています。正当な内容の苦情・要望はカスハラではありません。当職が相談時に用いる判断枠組みは「要求内容の正当性」と「手段・態様の相当性」の2軸です。仮に要求内容(例:実際に授業回数が不足していた分の精算)が正当でも、深夜までの電話拘束、大声での恫喝、土下座の要求、講師個人への執拗な攻撃といった手段・態様が社会通念を超えれば、カスハラとして毅然と対応してよい場面になります。

【根拠】労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和41年法律第132号)の一部改正(令和7年法律第63号・令和7年6月11日公布)
顧客等の言動により労働者の就業環境が害されることのないよう、事業主に雇用管理上必要な措置(相談体制の整備等)を義務付けるもので、令和8年(2026年)10月1日に施行されます。事業主が講ずべき措置の具体的内容は「事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和8年厚生労働省告示第51号・令和8年2月26日公布)に定められています。中小企業への経過措置はなく、労働者を1人でも雇用するすべての事業主が対象です。

個人経営で講師を一切雇用していない教室は、この措置義務の直接の対象ではありませんが、アルバイト講師1人でも雇えば対象になりますし、指針が示す対応の枠組み(方針の明確化・相談対応・悪質な場合の対処手順)は雇用の有無を問わず教室防衛に有用です。初動で重要なのは次の3点です。

1
対応ルールの明文化
「面談は営業時間内・事前予約制・原則30分」等を入会規約・教室案内に明記。後の対応の根拠になる
2
記録を残す
日時・対応者・発言内容・対応結果を記録。録音は事業所内の業務記録として入室時アナウンスの運用が望ましい
3
窓口の一本化
講師個人を矢面に立たせず教室長・管理者が対応。反復する相手には書面対応への切替えを検討
— 図2:カスハラ初動の3ステップ —
⚠️ 大声での威圧・居座りによる授業妨害は威力業務妨害罪(刑法234条)、「ネットに晒すぞ」「潰してやる」等の害悪の告知は脅迫罪(同法222条)、事実を摘示した中傷は名誉毀損罪(同法230条)・不法行為(民法709条)の対象となる場面があります。こうした言動が続く場合は、内容証明郵便による警告→代理人弁護士による対応→警察相談→民事の損害賠償請求・差止めという段階的な法的対応を検討します。
Q 講師個人や教室がSNS・口コミサイトで誹謗中傷されています。削除や投稿者の特定はできますか?
A
結論として、特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律(通称・情報流通プラットフォーム対処法。旧プロバイダ責任制限法)に基づき、投稿の削除請求と、発信者情報開示請求(発信者情報開示命令の裁判手続を含む)を行うことができます。令和7年(2025年)4月1日施行の改正により、大規模なSNS事業者等には削除の申出に対して原則1週間以内に判断・通知する義務が課され、削除対応は従来より進めやすくなっています。

同法は、令和6年(2024年)5月17日公布の改正法により「プロバイダ責任制限法」から現行の法律名に変更され、令和7年(2025年)4月1日に施行されました。改正の柱は、総務大臣が指定する大規模プラットフォーム事業者(大手SNS等)に対し、①削除申出窓口の整備と申出への対応の迅速化(原則1週間以内の判断・結果通知)、②削除基準の公表など運用の透明化を義務付けた点です。教室・講師への中傷投稿についても、まず各サービスの削除申出窓口を使う実益が大きくなりました。

【根拠】特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律(平成13年法律第137号)
投稿による権利侵害があった場合の送信防止措置(削除)の枠組み、発信者情報開示請求権、発信者情報開示命令事件の裁判手続、大規模特定電気通信役務提供者の義務等を定めています。

対応の型は、①証拠保存(URL・投稿日時・内容を含む形でのスクリーンショット)、②削除請求(プラットフォームの申出窓口・送信防止措置依頼)、③発信者情報開示(開示命令の申立て等)、④損害賠償請求(民法709条・710条)・刑事告訴(名誉毀損罪=刑法230条、侮辱罪=同法231条、信用毀損・偽計業務妨害罪=同法233条)——の順です。投稿を見つけたら、削除される前にまず証拠保存、が鉄則です。

削除・開示の見通しを立てる際に当職が最初に確認するのは、投稿が「事実の摘示」か「意見・論評」かです。「講師が生徒を殴った」「月謝を騙し取られた」のような具体的事実を示す虚偽投稿は名誉毀損・信用毀損として削除・開示が認められやすい一方、「教え方が下手」「おすすめしない」といった主観的評価にとどまる投稿は、内容が辛辣でも権利侵害と認められにくい傾向があります。この見極めが、費用をかけて法的手続に進むか、削除申出と静観にとどめるかの分岐点になります。

⚠️ 発信者特定に必要な通信ログの保存期間は、概ね3か月〜6か月が目安と言われています。数か月放置すると特定が事実上困難になる場面があるため、投稿者の特定まで視野に入れる場合は早期の着手が必要です。

講師個人の氏名や顔写真を晒す投稿は、名誉毀損に加えてプライバシー・肖像権侵害の問題にもなります。雇用している講師が被害を受けた場合に教室として削除申出等の対応を支援することは、Q3の改正法が求める就業環境確保の観点からも重要です。

Q 月謝の滞納が続いています。どのような順序で対応すればよいですか?
A
結論として、①口頭・メール等での催促→②書面での督促→③内容証明郵便による最終催告・契約解除予告→④法的手続(支払督促・少額訴訟等)、と段階的に進めるのが実務的です。月謝債権は各月分ごとに原則5年の消滅時効が進行するため(民法166条1項1号)、長期間放置すると古い月の分から順に時効消滅していく点に注意が必要です。
段階 対応内容 目安時期
口頭・メール・LINEによる支払い催促 支払期日から1〜2週間以内
書面(普通郵便)による督促状の送付 ①で支払いがない場合、数週間以内
内容証明郵便による最終催告・契約解除予告 ②で反応がない場合、1〜2か月以内
契約解除・法的手続(支払督促・少額訴訟・通常訴訟) ③の期限経過後
— 図3:月謝滞納への段階的対応フロー —
【根拠】民法第150条第1項(催告による時効の完成猶予)
「催告があったときは、その時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。」——内容証明郵便は、この催告をした事実の証拠として機能します。
同法第166条第1項(債権等の消滅時効)
債権は、①債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間、②権利を行使することができる時から10年間、行使しないときは時効によって消滅します。月謝債権では通常①の5年が基準になります。

④の法的手続の選び方は、金額と相手の出方で決まります。支払督促(民事訴訟法382条以下)は裁判所書記官が発する簡易・迅速な手続ですが、相手が異議を申し立てると通常訴訟に移行するため、争ってくることが見込まれる相手には向きません。少額訴訟(同法368条以下)は60万円以下の金銭請求について原則1回の期日で審理される手続で、数か月分の月謝滞納の回収に適した規模感です。金額が大きい場合や争点が複雑な場合は通常訴訟を選びます。

規約で滞納時の遅延損害金を定める場合、消費者契約(保護者との契約)では年14.6%を超える部分は無効とされます(消費者契約法9条1項2号)。規約整備の際は利率の上限にもご注意ください。
Q 授業中に生徒がけがをしました。教室側の責任はどこまで及びますか?
A
結論として、教室側は契約に伴う安全配慮義務を負い、これに違反すれば債務不履行責任(民法415条)を、故意・過失があれば不法行為責任(同法709条)を問われる場面があります。求められる安全配慮の内容は、教室の種別と子どもの年齢によって変わります。
【根拠】民法第415条第1項(債務不履行による損害賠償)
「債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。」
同法第709条(不法行為による損害賠償)
「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」
教室種別 安全配慮義務の主な内容(例)
武道・格闘技系 組手・試合時の監督、体格差への配慮、用具点検、熱中症対策
スイミング・体操 監視体制、プール・器具の安全点検、緊急時対応体制
プログラミング・実験系 工具・器具の安全管理、年齢に応じた指導員の配置
音楽・書道・そろばん 室内移動時の事故防止、室内環境の安全確保
学習塾(座学中心) 教室内移動時の安全、入退室時・送迎時の事故防止
— 業種別にみた安全配慮義務の視点 —

事故発生時の初動は、①速やかな保護者連絡(詳細が判明する前でも第一報を入れる)、②状況の記録(発生日時・場所・目撃者・対応の時系列・写真)、③医療機関対応(必要に応じた救急要請と付添い)の3点です。当職の視点では、この直後の「記録」が、後の責任の有無の判断と保険対応の双方の土台になります。記憶が薄れる前に、対応した講師本人がその日のうちに時系列メモを作る運用を決めておいてください。

予防面では、設備の定期点検と点検記録、指導員への安全教育、緊急時対応マニュアルの整備、傷害保険・施設賠償責任保険(スポーツ安全保険等)への加入が基本です。保険の補償範囲・免責事項は商品により異なるため、詳細は保険代理店にご確認ください。

Q 生徒同士のいじめ・けんかで損害が生じた場合、教室はどこまで責任を負いますか?
A
結論として、加害生徒側の責任(本人の不法行為責任、または責任能力がない場合の保護者=監督義務者の責任・民法714条)と、教室自身の責任(安全配慮義務違反)は別の問題です。教室の責任は、トラブルの兆候を認識していたか、認識後に相当な対応をしたかで判断される傾向があります。
【根拠】民法第714条第1項(責任無能力者の監督義務者等の責任)
「前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。」

未成年者のうち責任能力がない者(概ね12歳前後が目安とされますが、個別判断です)の行為については、本人ではなく法定の監督義務者である保護者が賠償責任を負うのが原則です。責任能力がある年齢の未成年者は本人にも不法行為責任が成立し得ますが、保護者の監督義務違反による責任が別途問題となる場面もあります。

教室側の責任判断のポイントは、①いじめ・暴力の兆候を事前に認識していたか、②認識していた場合に相当な対応(双方からの聴取、保護者への連絡、席・クラスの調整、注意指導等)をしたか、③施設・監督体制に問題がなかったか——の3点です。兆候を認識しながら放置していた場合に、教室の安全配慮義務違反が問われる場面があります。

対応の進め方は、①双方の生徒・目撃者・講師から個別に事実を聴取して記録、②双方の保護者への迅速な情報共有(事実経過の報告と対応予定の説明)、③再発防止措置(席替え・注意指導・必要に応じた対応の検討)、④施設賠償責任保険の対象となり得る場面の保険会社への連絡——の順です。教室が一方的に「加害・被害」を断定することは避け、事実の記録に徹するのが実務上のポイントです。責任の有無の最終判断は保険会社・弁護士・裁判所に委ねる整理の方が、保護者からの二次的な責任追及を防ぐ対応になります。
Q 悪質な保護者との契約を、教室側から解約することはできますか?
A
結論として、教室側からの解約は、入会規約に解除条項があり、かつ解除事由が客観的な記録で裏付けられる程度に重大な場合に認められる傾向があります。月謝の不払いに対しては、相当期間を定めた催告のうえでの契約解除(民法541条)が基本の手順です。
【根拠】民法第541条(催告による解除)
「当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。」

指導契約を準委任契約と構成すれば、理屈上は民法651条(委任の解除)により各当事者はいつでも解除できるとも考えられます。しかし、消費者である保護者・子どもを相手とする継続的契約では、教室側からの一方的解除の有効性や損害賠償の要否が争われやすく、当職としては、651条だけを頼りにした即時打切りではなく、規約上の解除条項+問題行為の客観的記録+書面警告と改善機会の付与という手順を踏むことをおすすめしています。

⚠️ 単に「態度が悪い」「クレームが多い」というだけでは解約が困難な場面もあり、客観的事実の積み重ねが必要です。解約事由となり得る例:他の生徒・保護者への迷惑行為の繰り返し/業務妨害にあたる長時間クレームの継続/教室・講師への名誉毀損・信用毀損行為/月謝の長期滞納と督促への無反応/暴力・脅迫・ハラスメント行為。

教室側解約を視野に入れる場合の準備は、①入会規約への解除条項の明記(未整備なら先に整備)、②問題行為の記録と書面での警告、③改善機会と猶予期間の付与、④内容証明郵便による最終警告、⑤書面による解除の意思表示——の5段階です。規約整備が不十分な段階での一方的解約は、逆に教室側が債務不履行として損害賠償請求を受けるリスクがあります。

また、契約の相手方は保護者でも、通っているのは子どもです。受験期の直前に即日で打ち切るような対応は、法的リスクに加えて紛争を激化させやすいため、学期末までの区切りや引継ぎ期間を設けるなど、子どもへの影響を抑える設計もあわせて検討します。個別事案については弁護士にご相談ください。

守谷・取手・柏エリアの実情と管轄裁判所

TX沿線の守谷・柏の葉キャンパス・研究学園の各駅周辺やおおたかの森エリアは、区画整理・再開発で子育て世帯の流入が続き、駅周辺に個別指導塾・英会話・幼児教室が集積している地域です。都内通勤の共働き世帯が多いため、保護者との面談や電話が平日夜・土日に集中しやすく、閉室後のクレーム対応が長時間化しやすい構造があります。また、県南〜千葉県北西部では、江戸川学園取手・茗溪学園・県立並木中等教育学校などの中高一貫校や都内校の受験を見据えた通塾も広く行われており、夏期講習・受験直前期の講習費を一括前払いした後の退会・精算を巡るご相談が生じやすい時期があります。

紛争に発展した場合の管轄は、地方裁判所・家庭裁判所の事件では、守谷市・取手市は水戸地方裁判所龍ケ崎支部、つくばみらい市・つくば市・土浦市は同土浦支部、常総市・坂東市は同下妻支部が扱い、簡易裁判所の事件(少額訴訟・支払督促等)では守谷市・取手市は取手簡易裁判所が管轄します。千葉県側の柏市・我孫子市・野田市は、千葉地方裁判所松戸支部・松戸簡易裁判所の管轄です。

CONTACT

「保護者からの執拗なクレーム対応に疲弊している」「退会精算の金額に自信が持てない」「SNSで教室名・講師名が晒された」「令和8年10月のカスハラ義務化に向けて規約と体制を整えたい」——こうした場面では、初動の判断が結果を左右します。当職は企業法務・労務・カスハラ対応の取扱経験を踏まえ、状況をお聞きした上で対応方針をご説明します。お気軽にご相談ください。

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更新履歴

令和8年(2026年)4月18日:初版公開
令和8年(2026年)7月9日:全面改訂(クーリングオフ・中途解約上限額の業態別整理と精算計算例の追加、カスハラ対策義務化〔令和8年10月1日施行〕・指針の反映、情報流通プラットフォーム対処法改正の反映、管轄裁判所の記載の訂正)

本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別事案への法的アドバイスではありません。具体的なご相談は弁護士にお問い合わせください。なお、本記事の内容は令和8年(2026年)7月時点の情報に基づいています。法律・実務の取り扱いは今後変更される可能性があります。
公開日:2026年4月18日|最終更新日:2026年7月9日