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介護事業所のカスハラ対応 — 利用者・家族からの暴言と契約解除の判断

企業法務・カスハラ・介護

介護事業所のカスハラ対応 — 利用者・家族からの暴言と契約解除の判断

弁護士 吉津和輝(茨城県弁護士会所属)
弁護士 吉津和輝(よしつ かずき)
茨城県弁護士会所属|2018年12月弁護士登録
主な取扱分野:企業法務・労働問題(使用者側)・カスハラ対応・小売業法務

「利用者本人ではなく、ご家族からの暴言・無理な要求が辛い」「ヘルパーが訪問先でセクハラを受けている」「契約解除したいが運営基準上できるのか分からない」 — 守谷・取手・つくばみらい・つくば・柏エリアの訪問介護・通所介護・小規模多機能・有料老人ホームなどの事業所ではよくある問題です。介護事業所のカスハラ対応は、運営基準上の「提供拒否禁止」と「サービス継続困難時の対応」との両立が独自の難しさです。本記事ではその要点を整理します。

Q介護事業所には「サービス提供拒否の禁止」があると聞きました。どんな内容ですか?
A
指定居宅サービス等の人員・設備・運営基準(平成11年厚生省令第37号)など、各介護サービスの運営基準において正当な理由なくサービスの提供を拒んではならないと定められています。例えば訪問介護では同省令9条(「指定訪問介護事業者は、正当な理由なく指定訪問介護の提供を拒んではならない。」)が該当します。
「正当な理由」として厚生労働省が示している典型例は、①事業所の現員では応じきれない、②利用申込者の居住地が事業実施地域外(エリア外)、③その他自ら適切なサービス提供が困難な場合 — の3類型です。
要介護度の重さや所得を理由に拒むことは認められないとされています。
Q暴言・暴力を理由に契約解除することはできますか?
A
厚生労働省「介護現場におけるハラスメント対策マニュアル」(令和4年3月改訂)では、「正当な理由」によるサービス継続困難時の契約解除について、肯定方向の例と否定方向の例が示されています。
肯定される可能性のある例:利用者が職員に身体的暴力を振るい、関係機関と話し合っても再発の可能性があり、再発防止策の提案も拒否されたとき、契約解除の予告期間を置き、後任の事業所紹介などの必要措置を講じて契約を解除した場合

否定される可能性のある例:職員の不適切な言動に立腹した家族が暴言を口にしたが、必要な措置を講じることなく直ちに契約を解除した場合など
つまり、暴言などがあっても「いきなり解除」にはリスクがあり、関係機関との連携・改善要請・予告期間・後任事業所の紹介など、段階的措置の積み重ねが必要となります。
Q介護現場特有のカスハラのパターンは?
A
介護分野の特徴は、カスハラの主体が利用者本人だけでなく、ご家族であることが多い点です。実務でよく見られるパターン:
・ヘルパーへの訪問時のセクハラ
・「保険外の家事もやれ」という業務範囲外要求
・家族からの「もっと早く来い」「夜間も対応しろ」等の過剰要求
・サービス内容への執拗なクレーム、職員指名の強要
・事業所に対する「行政に通報するぞ」等の威圧
・夜間・休日の長時間電話
守谷・取手・つくばみらい・つくば・常総・柏のような住宅地が広がるエリアでは、訪問系サービスでヘルパー1名が単独で利用者宅に入る場面が多く、密室性の高さがリスクを増幅します。
Q業務範囲外の要求にはどう対応すればよいですか?
A
訪問介護でできるサービスの範囲は、厚生労働省の通知「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について」(老計第10号)等で枠組みが示されています。例えば、同居家族の食事作り、ペットの世話、大掃除、来客対応など、保険給付対象外のサービスを求められた場合、「契約上提供できない」旨を明確に説明する必要があると考えられます。
⚠️ 重要事項説明書・契約書に「提供できないサービスの範囲」を具体的に明記し、契約時にしっかり説明することが、後日の紛争予防に直結します。曖昧なまま運用すると、職員が個別に「断りきれず」サービスを提供し、それが当たり前になってしまうことがあります。
Q2024年度の介護報酬改定で、ハラスメント対策が義務化されたと聞きました。
A
令和3年度介護報酬改定において、全ての介護サービス事業者に、男女雇用機会均等法等におけるハラスメント対策に関する事業者の責務を踏まえつつ、ハラスメント対策として必要な措置を講ずることを義務づけられています。さらに、改正労働施策総合推進法(令和7年法律第63号)により、2026年10月1日からカスタマーハラスメント対策も全事業主に義務化されます。
介護事業所では、すでに整備済みのパワハラ・セクハラ対策に加え、利用者・家族からのカスハラを明示的に対象に含める形で、運営規程・重要事項説明書・職員向けマニュアル・相談窓口を更新する必要があります。
Q契約解除を伝えたら「他に行くところがない」と言われたら?
A
サービス提供困難時に他の介護サービス事業所等を紹介するなどの必要措置を速やかに講じることが求められています。「解除して終わり」ではなく、後任事業所への引継ぎを試みることが必要です。
⚠️ ただし、「他に行くところがない」は契約継続を強制する理由にはなりません。職員の安全配慮義務(労働契約法5条)と、利用者の利益保護のバランスを取るため、市町村介護保険担当課・地域包括支援センター・ケアマネジャーと連携して、引継ぎ先の確保を試みることが進め方と考えられます。
Q身体的暴行・性犯罪レベルの行為があった場合は?
A
暴行・傷害(刑法204条・208条)、不同意わいせつ(刑法176条)等の犯罪に該当しうる行為については、110番通報・警察への被害申告を躊躇する必要はありません。「介護サービス提供中だから」と警察対応を遠慮する必要はなく、むしろ職員保護の観点からは積極的に対応すべき場面です。録音・録画・記録の保存、被害職員へのケア、再発防止策の検討と並行して、警察対応を進めることが一般的です。

介護事業所のカスハラ対応は、運営基準・契約解除手続・職員保護・後任事業所への引継ぎなど、複数の論点が絡みます。守谷・取手・柏エリアの介護事業所で、対応方針や規程整備にお困りの場合は、お気軽にご相談ください。状況をお聞きした上でご説明します。

弁護士 吉津和輝
茨城県弁護士会所属
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本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別事案への法的アドバイスではありません。具体的なご相談は弁護士にお問い合わせください。なお、本記事の内容は令和8年(2026年)4月時点の情報に基づいています。法律・実務の取り扱いは今後変更される可能性があります。