· 

交通事故(死亡事故)で加害者家族は被害者の要求にどこまで答えるべきか・弁護士吉津和輝

 

家族が交通事故で人を死亡させてしまった。または大けがさせてしまった。家族が逮捕されている。交通事故を起こした家族が死亡してしまった。このような場合に、家族としてどのように

動けば良いのでしょうか。本記事では家族として気を付けるべきことなどを解説いたします。

交通事故 / 死亡事故

交通死亡事故で加害者側の家族が被害者遺族に謝罪するには

弁護士 吉津和輝(登録番号57714 茨城県弁護士会所属) 市川法律事務所に所属する弁護士です。

交通死亡事故では、加害者本人が亡くなっているケースもあります。その場合、遺族が「代わりに謝りに行くべきか」と悩まれることがあります。誠意を示したい気持ちは当然ですが、対応を誤ると法的トラブルに発展することも。弁護士の立場からよくある疑問にお答えします。

Q加害者が死亡した場合、遺族が謝罪に行く義務はあるのですか?
A
法律上の義務はありません。ただし、ご家族(加害者)が負っていた損害賠償債務は相続人が承継しますので(民法896条)、法的な責任は遺族に引き継がれています。なお、相続放棄や限定承認をする場合、相続放棄をすれば責任を引き継がないこともできますし、限定承認では死者の財産の範囲内で債務を引き継ぐこととなります(相続人全員で行う必要があります)。謝罪そのものは義務ではありませんが、誠意ある対応自体は示談交渉等において意味を持つこともあります。しかし、後述のとおり注意が必要です。
Q被害者遺族から「会いに来い」と言われたら、行った方がいいですか?
A
基本的には、応じる方向で検討することをお勧めします。被害者遺族が「会いたい」と望んでいるのは、多くの場合、事故の経緯を知りたい、一度会っておきたいという思いからです。その気持ちに誠実に向き合うことが、長期的な解決への近道になります。
ただし、訪問前に必ず弁護士に相談し、話す内容・範囲を事前に確認してください。準備なしで行くことには大きなリスクがあります。
Q謝罪に行く際に注意すべきことは何ですか?
A
以下の点に注意してください。
  • 録音されていることを前提に話す
  • 過失割合・賠償義務・賠償額などの法的争点には触れない(あとで言ったことが証拠として使われてしまう可能性があるため)
  • 「全面的にこちらが悪い」など断定的な発言を避ける
  • 謝罪は遺族としての立場でシンプルかつ誠実に——長々と弁解しない
  • 保険会社が対応中の場合は、担当者と事前調整する
謝罪の言葉や気持ち(道義)と法的な過失の承認は別物です。安易な受け答えは後々加害者側を苦しめます。誠意を示しながら、争点に踏み込まないバランスが重要です。
Q保険会社から「謝りに行かないでほしい」と言われています。従うべきですか?
A
保険会社が止めるのは、発言が示談交渉に影響するリスクを避けるためです。遺族が勝手に責任を認めたり、サインをしてしまうと後々保険会社ともトラブルになる可能性があり、保険会社の判断には一定の合理性があります。ただし、保険会社の指示が絶対というわけではなく、遺族として誠意を示す手段は他にもあります——手紙の送付、供花の申し出、弁護士経由でのメッセージ伝達などです。保険会社の意向と人としての誠意を両立できる方法を、弁護士と相談しながら探すこととなります。
Q被害者遺族が「会いたくない」と言っている場合はどうすればいいですか?
A
その意思は尊重しなければなりません。無理に押しかけることは、精神的苦痛を与える行為として問題になる場合もあります。この場合は、弁護士を通じて手紙や供花の受け入れを打診する程度(もっとも明確に断っている場合にはそれすらしない方が良いかもしれません)にとどめる必要があります。時間をかけて誠意を示すことが、最終的な解決につながることもあります。
Q加害者が死亡した場合、遺族は相続放棄できますか?賠償責任を負わなくて済みますか?
A
できます。相続放棄をすれば、損害賠償債務を含む一切の権利義務を承継しません(民法939条)。ただし、いくつかの重要な注意点があります。
  • 相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に家庭裁判所に申述する必要があります(民法915条)
  • ご家族(加害者)が死亡した後に遺族が責任を認める発言をしただけでは、原則として単純承認(民法921条)にはなりません。単純承認とみなされるのは、相続財産を処分したとき、熟慮期間を徒過したときなどであり、口頭での謝罪・責任承認の発言はこれに当たらないとされています。ただし、示談書への署名・押印や賠償金の一部支払い・支払いの約束は「処分」にあたりうるため、相続放棄前に行うことは厳禁です
  • 任意保険がある場合は、保険会社が直接被害者遺族に賠償金を支払いますので、遺族が放棄しても被害者への賠償は進みます
  • 任意保険がない場合、遺族が相続放棄すると被害者遺族は自賠責保険などから賠償金を受け取れる可能性はありますが、十分な賠償を受けられなくなるリスクはあります
謝罪との関係で注意が必要な点:相続放棄後に謝罪に行くことは法的には問題ありませんが、被害者遺族から「法的責任から逃げた上で何をしに来たのか」と受け取られる可能性があります。放棄を選択する場合は、謝罪のタイミングと方法をより慎重に弁護士と相談してください。

交通死亡事故の対応は、法的手続きと人としての誠意の両面を同時に考える必要があります。加害者遺族の立場でのご相談も承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

弁護士 吉津和輝

本サイトの記事は一般的な情報提供を目的としており、個別事案への法的アドバイスではありません。具体的なご相談は弁護士にお問い合わせください。

 

弁護士 吉津和輝(茨城県弁護士会所属) 守谷・守谷市・取手市・つくばみらい市・常総市・龍ケ崎市・牛久市・土浦市・古河市・我孫子市・野田市など茨城県・千葉県北西部の交通事故のご相談をお受けしています。初回相談無料です。お気軽にお問い合わせください。