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親の預金が使い込みの疑いがあるとき|守谷・つくばみらい・取手・常総|取引履歴の取り寄せから返還請求までの進め方

相続・遺産分割 · COLUMN

親の預金が使い込まれた疑いがあるとき
— 取引履歴の取り寄せから返還請求までの進め方

残高が思ったより少ない。その違和感の調べ方を、順を追って。
弁護士 吉津和輝 / 茨城県弁護士会所属
弁護士 吉津和輝(よしつ かずき)
茨城県弁護士会所属(登録番号57714)/2018年12月弁護士登録
主な取扱分野:相続(遺産分割・遺留分・相続放棄)、家族法(離婚・親権)、交通事故
親が亡くなり遺産を確認したら、預金が思っていたよりずっと少なかった——そんな方へ。同居していた、あるいは通帳を預かっていた相続人がいると、生前や亡くなった直後にまとまったお金が動いていることがあります。本記事では、使い込みが疑われるときに、まず何を確認し、どのような法的手段で取り戻していくのかを、条文と最高裁の判断にもとづいて整理します。
預金の使い込みで弁護士に相談を検討したい3つのケース
1
通帳やキャッシュカードを管理していた相続人がいて、生前に多額の出金がある
出金の時期・金額・使い道を、取引履歴をもとに整理するところからお手伝いできます。
2
入院中や認知症で本人が動けない時期に、窓口・ATMで出金されている
当時の判断能力や来店の可否を、医療・介護の記録とあわせて検討します。
3
亡くなった直後(葬儀の前後)に、一部の相続人がまとまった金額を引き出している
死後の出金は法律構成が生前とは異なります。取り得る手続きをご説明します。
上記のいずれかに当てはまる場合は、状況を整理するところから当職がお手伝いできます。まずはお気軽にお問い合わせください。
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弁護士 吉津和輝(茨城県弁護士会所属)/〒302-0128 茨城県守谷市けやき台3-28-7
Q 親の預金が使い込まれていた場合、そもそも取り戻せるのですか?
A
結論として、取り戻せる場合があります。ただし「親が生きている間の引き出し」か「亡くなった後の引き出し」かで、法律の組み立てが変わります。

預金の使い込みは、大きく2つの場面に分かれます。ひとつは、親(被相続人)が生きている間に、通帳やカードを管理していた人が無断で引き出して自分のために使ったケース。もうひとつは、親が亡くなった後に、一部の相続人が被相続人名義の口座から勝手に引き出したケースです。どちらに当たるかで、誰のどんな権利を使うかが変わります。

生前の使い込みでは、本来、親自身が引き出した人に対して「返してほしい」と言える権利(不当利得返還請求権・不法行為に基づく損害賠償請求権)を持っていました。この権利が相続によって相続人に引き継がれ、相続人が行使します。死後の使い込みでは、相続人が自らこれらの権利を行使することになります。

いずれの場面でも、「無断で」「本人以外のために」使われたことを裏づけられるかどうかが結論を大きく左右します。まずは事実関係と証拠を固めることが出発点になります。

生前の使い込み
親の権利を相続人が承継
親が持っていた返還請求権・損害賠償請求権を、相続人が受け継いで行使する。
死後の使い込み
相続人が自ら請求
相続開始後の無断出金について、相続人が自分の権利として返還を求める。
— いつの引き出しかで組み立てが変わる —
【根拠】民法(明治29年法律第89号)第703条(不当利得の返還義務)、第709条(不法行為による損害賠償)。第703条は「法律上の原因なく他人の財産…によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う」と定めています。
Q 使い込みを疑ったら、まず何から始めればいいですか?
A
結論として、最初に行うのは被相続人の口座の「取引履歴(取引明細)」を金融機関から取り寄せることです。相続人の一人が、単独で請求できます。

使い込みの有無や金額は、想像ではなく記録で確かめます。銀行・信用金庫・ゆうちょ等に対して、被相続人名義の口座の取引経過(入出金の履歴)の開示を求めます。最高裁判所は、預金者の共同相続人の一人は、他の相続人全員の同意がなくても、単独でこの取引経過の開示を請求できると判断しています。相続人のうちの一人が通帳を握って見せてくれない、という場面でも、あきらめる必要はありません。

取引履歴が手元に来たら、引き出しの「時期」「金額」「態様(窓口かATMか)」を時系列で確認します。あわせて、その時期に本人が自分で銀行に行けたのか、判断能力はどうだったのかを示す資料——入院・通院の記録、要介護認定やケアプラン、施設の入所記録など——を集めます。本人が寝たきりや入院中で来店できないはずの時期に窓口出金があれば、それ自体が不自然さの手がかりになります。

これらの記録は、弁護士に依頼した場合、弁護士会を通じた照会制度(弁護士会照会)を使って、医療機関や施設に取り寄せを試みられることがあります。

窓口での出金については、金融機関に払戻請求書(伝票)が残っていることがあり、照会によって、その来店者の筆跡や署名、本人確認の記録などを確認できる場合があります。被相続人が入院中などで来店できないはずの時期に、本人以外の筆跡で窓口出金されていれば、有力な手がかりになります。もっとも、照会に応じるかは金融機関の判断により、必ず開示されるとは限りません。

【根拠】最高裁判所第一小法廷判決 平成21年1月22日(平成19年(受)第1919号・民集63巻1号228頁)。共同相続人の一人が、被相続人名義の預金口座の取引経過の開示を求める権利を単独で行使できると判断しています。
Q 「使い込み」と言えるのはどんな場合ですか?
A
結論として、お金が引き出された事実だけでは足りません。「本人の同意なく」「本人以外の利益のために」使われたことがポイントです。

引き出しがあっても、それが本人のための支出であれば使い込みにはなりません。実際の交渉では、相手方から次のような反論が出ることがよくあります。

・本人に頼まれて引き出し、本人の生活費・医療費・施設費に充てた
・生前に贈与を受けたものである
・本人の同意のうえで管理・支出していた

これらの反論のうち、領収書や支払記録で「本人のための支出」だと説明がつく部分は、返還の対象から差し引かれます。逆に、使い道がまったく説明できない出金、本人が判断能力を失っていた時期の多額の出金、生活実態に見合わない高額な引き出しなどは、使い込みを基礎づける事情になります。

つまり争点は、引き出しの「使途」、当時の本人の「判断能力」、金額の「不自然さ」です。ここを裏づける資料をどれだけ集められるかが、見通しを左右します。感情面での対立が激しくなりやすい類型でもあるため、事実と証拠に軸足を置いて進めることが大切です。

もっとも、立証責任は使い込みを主張する側にあります。取引履歴で「口座からお金が出た」ことは分かっても、「それを相手が引き出し、相手のものになった」ことまで示せないと、請求が認められにくいのが実情です。特にATMでの現金引き出しは、その後の現金の行方を追いにくく、特定の相続人に結びつけるのが難しくなります。逆に、被相続人の口座からの出金と相手の口座への入金が時期・金額で対応していたり、被相続人から相手への振込履歴があったりすると、有力な手がかりになります。相手方の口座の履歴は、被相続人の履歴のように単独では取り寄せられませんが、訴訟になれば、裁判所を通じて銀行に取り寄せを求める手段(調査嘱託・文書送付嘱託等)を検討できます。

⚠️ 相手のスマートフォンや郵便物を無断で見る、勝手に口座を操作するといった対応は、かえってご自身が不利になったり別の問題を生んだりします。調査は、取引履歴の取り寄せなど適法な手段で進めてください。
Q 相続時に口座に残っていたお金はどう扱われますか?
A
結論として、相続開始時に口座に残っていた預貯金は「遺産分割の対象」です。すでに引き出されて残っていないお金は、遺産分割ではなく「返還請求」の問題になります。

かつては、預貯金は相続開始と同時に法定相続分どおり各相続人へ自動的に分かれる、と扱われていました。しかし最高裁大法廷は、共同相続された普通預金・通常貯金・定期貯金の各債権は、相続開始と同時に当然に相続分へ分割されることはなく、遺産分割の対象になると判断しました。相続開始時点で口座に残っている残高は、遺産分割の話し合い(協議・調停・審判)で分けることになります。

これに対して、生前や死亡直後に「すでに引き出されて口座に残っていないお金」は、そもそも遺産分割で分ける対象がありません。この部分は、使い込んだ人に対する不当利得返還請求・不法行為に基づく損害賠償請求として、別に取り戻していく問題になります。ただし、次のQ5のとおり、一定の要件を満たせば遺産分割の中で扱える場合もあります。

口座に残っていた分
遺産分割の対象
相続開始時の残高は、協議・調停・審判で分ける。
すでに引き出された分
返還請求の問題
不当利得・不法行為で取り戻す(906条の2で遺産に戻す道も)。
— 「残っている/すでに無い」で扱いが分かれる —
【根拠】最高裁判所大法廷決定 平成28年12月19日(平成27年(許)第11号・民集70巻8号2121頁)。共同相続された普通預金債権・通常貯金債権・定期貯金債権は、相続開始と同時に当然に相続分へ分割されず、遺産分割の対象になると判断しています。
Q 遺産分割の中で使い込み分を取り戻すことはできますか?
A
結論として、できる場合があります。2019年7月に施行された民法906条の2により、遺産分割前に処分された財産でも、一定の同意があれば遺産として扱えます。

従来は、使い込みで口座から消えたお金は遺産分割の枠の外にあり、別の訴訟を起こさなければ取り戻しにくいという不都合がありました。そこで新しく設けられたのが民法906条の2です。この規定により、遺産分割前に遺産に属する財産が処分されていても、共同相続人全員の同意によって、その財産が「遺産分割時に遺産として存在するもの」とみなして、分割の対象に含めることができます。

ポイントは、財産を処分した相続人本人の同意は不要とされている点です。つまり、使い込んだ本人を除く相続人全員が同意すれば、その分を遺産に戻して分割の中で調整できます。わざわざ別の民事訴訟を起こさずに、遺産分割の手続きの中で解決できる場合があるということです。

もっとも、使い込んだ本人が「そもそも使い込みではない」と事実を争う場合には、金額や使途をめぐって主張が対立し、最終的に不当利得・不法行為の民事訴訟で決着することもあります。どのルートが適しているかは、証拠の状況や相続人の顔ぶれによって変わります。

【根拠】民法(明治29年法律第89号)第906条の2。第1項は、遺産分割前に遺産に属する財産が処分された場合でも、共同相続人全員の同意により、その財産を遺産分割時に遺産として存在するものとみなせると定め、第2項は、処分をした共同相続人については同意を得ることを要しないと定めています。
Q どの手続きで、どこに請求するのですか?時効はありますか?
A
結論として、取り戻し方は主に2つ。家庭裁判所の遺産分割(調停・審判)の中で調整する方法と、別途の民事訴訟(不当利得・不法行為)です。時効に注意が必要です。

まずは取引履歴の取り寄せで事実を固め、相手方との話し合い(協議)を試みます。まとまらない場合、口座に残っていた分や906条の2で戻せる分は、家庭裁判所の遺産分割調停・審判の中で扱えます。他方、使い込まれた分を金銭で明確に取り戻すには、不当利得返還請求・不法行為に基づく損害賠償請求の民事訴訟を選ぶこともあります。

1
取引履歴の取り寄せ
出金の時期・金額・使途を確認し証拠を固める
2
協議・家裁調停
話し合い、または遺産分割調停で調整を図る
3
民事訴訟
まとまらなければ返還請求の訴訟で決着
— 事案により順序・選択は変わります —

窓口となる裁判所(当職の対応エリア)
遺産分割の調停・審判は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てます。守谷市・取手市・牛久市・龍ケ崎市は水戸家庭裁判所龍ケ崎支部、常総市・坂東市は同下妻支部、つくばみらい市・つくば市・土浦市は同土浦支部、柏市・我孫子市・野田市は千葉家庭裁判所松戸支部が管轄です。不当利得・不法行為の民事訴訟は、相手方の住所地などを管轄する地方裁判所(請求額が140万円以下の場合は簡易裁判所)が窓口になります。

⚠️ 時効に注意してください。不当利得返還請求権は権利を行使できると知った時から5年(または行使できる時から10年)、不法行為に基づく損害賠償請求権は損害と加害者を知った時から3年(または不法行為の時から20年)で、時効により消滅し得ます。疑いを持ったら、取引履歴の取り寄せから早めに着手することが大切です。
【根拠】民法(明治29年法律第89号)第166条(債権等の消滅時効)、第724条(不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)。管轄は事案により異なるため、申立ての際は裁判所にご確認ください。
この地域で起きやすい背景

守谷・取手・常総・坂東・つくばみらいのあたりは、親世代が持ち家に住み、子のうちの一人(同居する家族など)が親の通帳や日々のお金の管理を担ってきたご家庭が多く見られます。介護や入退院で本人が銀行に行けなくなると、通帳を預かる人にお金の出入りが集中しやすくなります。相続が始まってから「残高が思ったより少ない」と気づく——TX・常磐線沿線でも、在宅中心の暮らしゆえに起こりやすい類型です。だからこそ、まずは記録で事実を確かめることが出発点になります。

CONTACT

預金の使い込みが疑われるご相続は、感情面での対立が生じやすい一方で、取引履歴などの記録から事実を積み上げていくことが解決の土台になります。まずは状況を伺い、取り得る選択肢を整理するところから当職がお手伝いします。初回のご相談は面談またはZOOMで承っています。

弁護士 吉津和輝
茨城県弁護士会所属/〒302-0128 茨城県守谷市けやき台3-28-7
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参考資料・情報源

e-Gov法令検索(デジタル庁)/民法(明治29年法律第89号)第703条・第704条・第709条・第906条の2・第166条・第724条
最高裁判所第一小法廷判決 平成21年1月22日(民集63巻1号228頁)(裁判所)
最高裁判所大法廷決定 平成28年12月19日(民集70巻8号2121頁)(裁判所)

更新履歴

2026年7月11日:公開

本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別事案への法的アドバイスではありません。具体的なご相談は弁護士にお問い合わせください。相続税の取扱いは税理士に、不動産登記の手続きは司法書士に、それぞれご確認ください。なお、本記事の内容は令和8年(2026年)7月時点の情報に基づいています。法律・実務の取扱いは今後変更される可能性があります。
公開日:2026年7月11日|最終更新日:2026年7月11日