労基署の調査・是正勧告への会社の対応
— 常総労働基準監督署の管轄と手続の流れ
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| Q | ある日突然、労基署の監督官が会社に来ました。労基署の調査はなぜ来るのですか?どんな種類がありますか? |
| A |
結論として、労基署の調査(臨検監督)には主に「定期監督」「申告監督」「災害時監督」「再監督」の4種類があり、予告なく行われることもあります。
労働基準監督署(労基署)は厚生労働省の機関で、労働基準法や労働安全衛生法、最低賃金法などが守られているかを監督しています。労働基準監督官には、事業場に立ち入り、帳簿・書類の提出を求め、使用者や労働者に尋問を行う権限が法律で認められています。
【根拠】労働基準法(昭和22年法律第49号)第101条第1項:「労働基準監督官は、事業場、寄宿舎その他の附属建設物に臨検し、帳簿及び書類の提出を求め、又は使用者若しくは労働者に対して尋問を行うことができる。」
調査の主な種類は次のとおりです。
— 図1:労基署による監督(調査)の主な4種類 —
立ち入りによる調査のほか、出頭要請書が届き、賃金台帳などの資料を持参して労基署に出向く形式の調査もあります。どの形であっても、対応の基本は「誠実に、正確な資料に基づいて説明する」ことです。 |
| Q | 忙しいので、労基署の調査や呼び出しを断ることはできますか? |
| A |
結論として、正当な理由なく調査や出頭の求めを拒むことは避けるべきです。臨検の拒否・妨害や虚偽の陳述・虚偽の帳簿提出は、罰則の対象となる場面があります。
労働基準法は、臨検を拒み、妨げ、忌避した場合や、尋問に対して陳述をせず、もしくは虚偽の陳述をした場合、帳簿書類を提出しない・虚偽の記載をした帳簿書類を提出した場合について、30万円以下の罰金を定めています(労働基準法第120条第4号)。また、行政官庁・労働基準監督官は、必要があると認めるときは使用者等に報告や出頭を命じることができ(同法第104条の2)、この報告をせず、虚偽の報告をし、または出頭しなかった場合も罰則の対象となり得ます(同法第120条第5号)。
【根拠】労働基準法第120条(柱書):「次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。」同条第4号は、第101条の規定による労働基準監督官の「臨検を拒み、妨げ、若しくは忌避し、その尋問に対して陳述をせず、若しくは虚偽の陳述をし、帳簿書類の提出をせず、又は虚偽の記載をした帳簿書類の提出をした者」を挙げています。
日程の都合がどうしてもつかない場合に、事情を説明して日程調整をお願いすること自体は通常可能です。問題なのは、連絡を無視したり、事実と異なる説明や資料でその場を取り繕おうとしたりすることです。労働時間の記録や賃金台帳に不備があると分かっている場合でも、ありのままの資料を示したうえで、改善の方針を説明する方が、結果として手続が円滑に進むことが多いといえます。
⚠️ 調査の場で慌てて作成した資料や記憶頼みの説明は、後から客観資料と食い違い、かえって不信を招くことがあります。手元の資料で確認できる事実と、確認に時間が必要な事項を区別して説明することが大切です。
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| Q | 調査のあとに「是正勧告書」と「指導票」という書面を受け取りました。この2つはどう違うのですか? |
| A |
結論として、是正勧告書は「法令違反が認められた」場合に交付される文書、指導票は「法令違反とまではいえないが改善が望ましい」事項について交付される文書です。
是正勧告書とは、労働基準監督官が調査の結果、労働基準法等の違反を認めた場合に、違反している条文・違反事項・是正期日を示して是正を勧告する文書のことです。たとえば、36協定を締結せずに時間外労働をさせていれば労働基準法第32条違反、割増賃金の未払いがあれば同法第37条違反として指摘されることがあります。 これに対し、指導票とは、現時点で法令違反の認定までは至らないものの、改善することが望ましい事項について改善を求める文書のことです。
いずれも行政指導であり、行政処分そのものではありません。もっとも、対応せずに放置した場合、再監督が行われたり、違反の程度が著しい悪質な事案では刑事手続(検察官への送検)に進んだりする場合もあります。指摘内容と会社の認識に食い違いがある場合には、受け取り方や反論の仕方に判断を要する場面もあるため、弁護士への相談をご検討ください。
なお、企業の労務管理体制を日頃から点検しておきたい場合は、顧問契約の紹介ページもご参照ください。
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| Q | 是正勧告を受けたら、会社は具体的に何をすればよいのですか? |
| A |
結論として、①是正勧告書の記載内容(違反条文・是正期日)を確認し、②期日までに是正措置を実施し、③是正報告書を労働基準監督署に提出する、という流れが基本です。
STEP1 是正勧告書の内容確認
違反条文・違反事項・是正期日を確認し、社内の実態(労働時間記録・賃金台帳・36協定等)と突き合わせます。
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STEP2 是正措置の実施
例:36協定の締結・届出、未払い割増賃金の支払い、就業規則の整備、労働時間管理方法の見直しなど。
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STEP3 是正報告書の提出
是正の具体的内容を記載し、裏付け資料(支払いを示す資料、新たに締結した36協定の写し等)の提出を求められることもあります。
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STEP4 その後の対応
改善状況の報告を求められる場合や、再監督が行われる場合があります。形だけでなく実体を伴った是正が必要です。
— 図2:是正勧告を受けてから是正報告書提出までの基本的な流れ —
重要なのは、是正報告書を「提出すること」自体が目的ではなく、実体を伴った是正を行うことです。たとえば未払い賃金の指摘であれば、対象者・対象期間の洗い出しと計算根拠の整理が必要になりますし、労働時間管理の指摘であれば、タイムカードやPCログと実際の労働時間との食い違いを解消する仕組みづくりが求められます。 是正が期日までにどうしても間に合わない事情がある場合は、期限を黙って過ぎるのではなく、事前に労働基準監督官へ進捗と見通しを説明することが大切です。是正の途中段階で相談しながら進めることで、手続が円滑になることがあります。 |
| Q | 従業員の誰かが労基署に申告したようです。誰が申告したのか特定して、処分してもよいですか? |
| A |
結論として、できません。申告したことを理由とする解雇その他の不利益な取扱いは労働基準法第104条第2項で禁止されており、違反は罰則の対象となり得ます。
労働基準法第104条第1項は、事業場に法令違反の事実がある場合、労働者がその事実を行政官庁または労働基準監督官に申告できることを定めています。そして同条第2項は、使用者がこの申告を理由として労働者に解雇その他不利益な取扱いをすることを禁止しています。この第104条第2項に違反した場合、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金という罰則の対象となり得ます(同法第119条第1号)。
【根拠】労働基準法第104条:「事業場に、この法律又はこの法律に基いて発する命令に違反する事実がある場合においては、労働者は、その事実を行政官庁又は労働基準監督官に申告することができる。」「使用者は、前項の申告をしたことを理由として、労働者に対して解雇その他不利益な取扱をしてはならない。」
いわゆる「犯人探し」をして、申告したとみられる従業員の配置を変えたり、評価を下げたりするような対応は、それ自体が新たな法的リスクを生みます。申告監督は申告者保護のため定期監督の形で行われることもあり、会社側で申告の有無を確実に判別することはそもそも困難です。誰が申告したかではなく、指摘された問題をどう是正するかに集中することが、会社を守る対応です。 |
| Q | 労基署対応について、弁護士に相談するタイミングはいつがよいですか? |
| A |
結論として、①調査の連絡が来た段階、②是正勧告書・指導票を受け取った段階、③是正報告書を作成する段階の、どの段階でもご相談いただけます。早い段階ほど選択肢が広がる傾向があります。
調査の連絡が来た段階であれば、提出を求められている資料の整理や、説明すべき事実関係の確認を事前に行うことができます。是正勧告書・指導票を受け取った段階であれば、指摘内容と会社の認識に食い違いがないか、是正の優先順位をどう付けるかを検討できます。是正報告書の作成段階では、再発防止策まで含めた報告内容の整理が論点になります。 特に、未払い残業代の指摘は、計算方法(割増賃金の基礎となる賃金の範囲、端数処理など)や対象期間によって金額が大きく変わるため、是正の進め方に法的な検討を要することが少なくありません。当職は使用者側の労働問題を取り扱っており、状況をお聞きしたうえで、その会社の実情に応じた対応の選択肢をご説明します。
労働保険・社会保険の手続そのものについては、社会保険労務士の専門領域です。詳しくは社会保険労務士にご相談ください。
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労基署から調査の連絡が来た、是正勧告書を受け取ったがどう対応すればよいか分からない——そのような場合は、状況をお聞きしたうえで、対応の選択肢と進め方をご説明します。守谷・常総・坂東・つくばみらい・取手など、茨城県南部・千葉県北西部の企業のご相談に対応しています。
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・労働基準法(昭和22年法律第49号)—
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・常総労働基準監督署の所在地 — 茨城労働局
2026年6月13日:記事公開
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別事案への法的アドバイスではありません。具体的なご相談は弁護士にお問い合わせください。なお、本記事の内容は令和8年(2026年)6月時点の情報に基づいています。法律・実務の取り扱いは今後変更される可能性があります。
公開日:2026年6月13日|最終更新日:2026年6月13日
