私立学校の学費・塾代は
養育費・婚姻費用に加算できる?
— 算定表に含まれない教育費の考え方|守谷・取手・柏
主な取扱分野:離婚・親権・養育費/婚姻費用/面会交流/相続
| Q | 算定表の養育費・婚姻費用に、私立の学費は含まれていますか? |
| A |
含まれていません。裁判所の標準算定方式(算定表)は、公立の小中高に通う場合の標準的な学校教育費を前提に作られています。
家庭裁判所の実務で用いられる標準算定方式では、子の教育費として、統計上の平均的な公立学校の学校教育費があらかじめ織り込まれています。具体的には、司法研修所編『養育費、婚姻費用の算定に関する実証的研究』(法曹会、2019年)によれば、0〜14歳の子につき年額13万1379円(公立中学校)、15歳以上の子につき年額25万9342円(公立高校)が考慮されています。 私立中学・私立高校の学費は一般にこれを大きく上回るため、算定表どおりの金額だけでは、私立の学費をまかなえないことが少なくありません。そこで、標準的な学費を超える教育費を「加算」できるかが問題になります。 |
| Q | どんな場合に私立学費の加算が認められますか? |
| A |
大きく分けて、①支払う側(義務者)が私立進学を承諾していた場合と、②義務者の収入・学歴・社会的地位などに照らして私立の学費負担が不合理とはいえない場合に、加算が認められる傾向にあります。
夫婦は資産・収入その他一切の事情を考慮して婚姻費用を分担し(民法760条)、離婚後は子の監護に要する費用の分担を協議や家庭裁判所の手続で定めます(民法766条)。私立学費の加算もこの枠組みの中で判断されます。
— 私立学費の加算が認められる2つの枠組み —
義務者の収入が高い場合には、私立学校や習い事の費用負担が合理的といえる範囲も比較的広く判断される傾向にあります。また、実際に子が通っている学校について義務者が以前から賛成していたケースも多く、その場合は加算が認められやすくなります。
【実務上のポイント】義務者側が「子の進路には賛成していなかった」と主張する場面もあります。請求する側(権利者)としては、義務者がこれまで子の受験や習い事にどのように関与してきたか(説明会への同行、費用の支払い、メールやLINEでのやりとり等)を主張・立証することが重要になります。
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| Q | 加算額はどうやって計算しますか? |
| A |
加算の対象は学費全額ではなく、「実際の学費」から「算定表に織り込み済みの標準的な学費」を差し引いた超過部分です。この超過部分を、父母双方の基礎収入の割合で按分するのが実務の代表的な計算方法です。
— 加算額計算の基本的な流れ —
「基礎収入」とは、総収入から税金・社会保険料(公租公課)・職業費・特別経費を差し引いた、生活費の分担の基礎となる金額のことです。按分の方法や考慮要素は事案ごとに異なり、最終的には裁判所が諸般の事情を踏まえて判断します。 なお、義務者の収入がもともと高く、算定表の金額に余裕がある場合には、加算が一部にとどまることもあります。具体的な見込み額は、双方の収入資料と学費の資料をもとに個別に計算する必要がありますので、弁護士にご相談ください。 |
| Q | 塾・予備校・習い事の費用も加算できますか? |
| A |
学校以外の塾・予備校・習い事の費用も、義務者が承諾していた場合や、義務者の収入等に照らして負担が不合理でない場合には、加算が認められることがあります。
塾代や習い事の費用は、学校の授業料と異なり「必ずかかる費用」とまではいえないため、私立学費よりも加算のハードルが上がる傾向にあります。もっとも、中学受験のための進学塾、継続してきたピアノやスポーツのレッスンなど、別居前から夫婦が了解のうえで続けてきた費用については、加算や、養育費とは別枠での負担の取り決めが認められる場合があります。 ここでも重要になるのは、義務者がその習い事・通塾にどう関わってきたか(月謝の支払い、送迎、発表会や試合への参加等)という事実の積み上げです。領収書や引落しの記録、やりとりの履歴などの資料を保全しておくことをおすすめします。 |
| Q | 大学の学費はどうなりますか?養育費はいつまでもらえますか? |
| A |
両親の経済力や学歴などから、その家庭環境では大学進学が通常のことと考えられる場合には、大学の学費の加算と、養育費の支払期間を大学卒業時まで延ばすことの双方が認められる場合があります。
養育費の終期は「20歳まで」とされることが多いものの、大学進学が前提となる家庭では「22歳に達した後の最初の3月まで」など大学卒業を見据えた終期が定められる例も多くあります。直系血族間の扶養義務(民法877条1項)を背景に、成人後の学費が問題となることもあります。 裁判例にも、私立大学に通う子の学費等について、国立大学の学費相当額を基準としたうえで、標準算定方式で考慮済みの教育費を超える部分の分担を認めたものがあります(大阪高決平成27年4月22日)。
【補足】大学生の子については、子自身が奨学金やアルバイトで一定額を負担できることが考慮され、親の分担額が調整される場合もあります。事案ごとの個別判断となります。
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| Q | 教育費を取り決めるとき、どんな点に注意すべきですか? |
| A |
「負担する教育費の範囲」をできる限り具体的に定めることが重要です。あいまいな合意は、後日「どこまで含まれるのか」をめぐる新たな紛争の火種になります。
調停や協議で「一定の教育費を負担する」という合意をすることがありますが、たとえば「学費」に入学金・施設費・修学旅行費・部活動費まで含むのか、塾代は別なのかといった解釈をめぐり、後から意見の対立が生じることがあります。合意(和解)の際には、対象となる費目・金額の上限・支払方法・終期をできるだけ明確に定めておくことが大切です。 また、これから受験を控えているお子さまがいる場合は、進学先が決まってから揉めるのではなく、進学前の段階で教育費の分担について協議・調停で取り決めておくことをおすすめします。状況が変わった場合には、家庭裁判所に対する増額・減額の調停申立てによる見直しも可能です(民法766条3項参照)。 |
守谷・柏の葉・流山おおたかの森など、つくばエクスプレス(TX)沿線は都内へのアクセスが良く、TXや常磐線で都内の私立中高へ通学するお子さまも珍しくありません。茨城県南でも、取手市の江戸川学園取手をはじめとする私立中高一貫校への進学を選ぶご家庭があり、中学受験のための通塾費用も含めると、教育費が標準算定方式の前提を大きく超えるケースは決して特別ではありません。だからこそ、このエリアの婚姻費用・養育費の調停では、私立学費・塾代の加算が現実的な争点になりやすいといえます。
養育費・婚姻費用の調停は、原則として相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てます。相手方が守谷市・取手市・牛久市・龍ケ崎市にお住まいの場合は水戸家庭裁判所龍ケ崎支部、つくば市・つくばみらい市・土浦市の場合は水戸家庭裁判所土浦支部、常総市・坂東市の場合は水戸家庭裁判所下妻支部、柏市・我孫子市・野田市の場合は千葉家庭裁判所松戸支部が管轄となります。
第760条(婚姻費用の分担)「夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。」
第766条1項(離婚後の子の監護に関する事項の定め等)「父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者又は子の監護の分掌、父又は母と子との交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。」
第877条1項(扶養義務者)「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。」
私立の学費や塾代をどこまで養育費・婚姻費用に反映できるかは、双方の収入、これまでの教育への関わり方、お子さまの状況などによって結論が変わります。当職は守谷・取手・柏をはじめとする茨城県南部・千葉県北西部で、離婚・養育費・婚姻費用のご相談をお受けしています。教育費の見込み計算や調停での主張立証についても、個別の状況に応じてご説明しますので、お気軽にご相談ください。
📞 050-3623-1320
守谷市・取手市・常総市・つくばみらい市・龍ケ崎市・牛久市・つくば市・土浦市・坂東市など茨城県南部、柏市・我孫子市・野田市など千葉県北西部で、離婚・養育費・婚姻費用・面会交流のご相談をお受けしています。初回相談は面談またはZOOMで承ります。
・民法(明治29年法律第89号)|e-Gov法令検索:https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
・養育費・婚姻費用算定表|裁判所ウェブサイト:https://www.courts.go.jp/
・司法研修所編『養育費、婚姻費用の算定に関する実証的研究』(法曹会、2019年)
令和8年6月12日 記事公開
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本記事は令和8年6月時点の法令・公表情報に基づく一般的な解説であり、個別の事案に対する法的助言ではありません。養育費・婚姻費用の加算の可否や金額は個別の事情により異なりますので、具体的な対応については弁護士にご相談ください。
公開日・最終更新日:令和8年6月12日 文責:弁護士 吉津和輝(茨城県弁護士会所属)
