退職金は離婚の財産分与でいくらもらえるか|守谷・つくばみらい・取手・常総

家族法・離婚

退職金は離婚の財産分与でいくらもらえる?
別居時と定年時の計算・3つの算定方式

弁護士 吉津和輝(茨城県弁護士会所属)
弁護士 吉津和輝(よしつ かずき)
茨城県弁護士会所属|2018年12月弁護士登録(登録から約7年)
主な取扱分野:家族法(離婚・親権・財産分与・婚姻費用)/相続/企業法務/刑事弁護

離婚を考えている方へ。退職金は、夫婦で築いた財産の中でも金額が大きくなりやすく、財産分与の整理にあたって押さえておきたい項目の一つです。本記事では、退職金が財産分与の対象となる条件、3つの算定方式の使い分け、別居後に受給した退職金や企業年金の扱いまで、つくばエクスプレス沿線・常磐線沿線にお住まいの方に向けて整理しました。

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弁護士 吉津和輝(茨城県弁護士会所属)|〒302-0128 茨城県守谷市けやき台3-28-7
Q1退職金は離婚の財産分与の対象になりますか?
結論:退職金は「賃金の後払い」としての性格を持つため、夫婦が婚姻期間中に協力して形成した共有財産として、財産分与の対象になる場合があります。すでに支給済みの退職金はもちろん、将来支給される予定の退職金も、受給の蓋然性があれば対象となります。

財産分与とは、夫婦が婚姻期間中に協力して築いた財産を、離婚に伴って清算する手続きです(民法768条1項)。給与から積み立てた預金が財産分与の対象となるのと同じように、退職金も給与の後払い的な性格を持つことから、夫婦の共有財産として清算の対象になります。

対象となるのは「婚姻期間(同居期間)に対応する部分」です。婚姻前の勤務分や、別居後に積み増した分は、原則として対象外となります。

【根拠】民法(明治29年法律第89号)第768条第1項:「協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。」
Q2将来もらう退職金は、いつ・どうやって計算するのですか?
結論:裁判例上、主に3つの算定方式があります。①別居時に自己都合退職した場合の額を分与対象とする方法、②定年退職時の額から別居後労働分を差し引き中間利息を控除して現価算定する方法、③定年退職時の額から別居後労働分を差し引き、支払時期を退職時として中間利息は控除しない方法です。

将来支給される退職金は、別居時点ではまだ受給していない・金額が変動し得る・支給制限事由により受給できない可能性もあるなど、不確定要素を含みます。そのため算定方法が一通りではなく、事案ごとに使い分けられています。

代表的な3つの方式の特徴は、次のとおりです。

図:将来退職金の3つの算定方式
①別居時自己都合退職方式
別居時点で自己都合退職したと仮定した場合の退職金相当額を分与の対象とする。分与時期は離婚時(中間利息控除なし)。
メリット:定年まで待たずに分与を受けられる/計算が比較的シンプル
デメリット:分与義務者に支払能力がないと「絵に描いた餅」となる可能性
②定年時退職金ベース+中間利息控除方式
定年退職時の見込額から別居後・婚姻前労働分を差し引き、中間利息(ライプニッツ係数)を控除して現価を算定する。分与時期は離婚時
メリット:別居時と定年時の退職金額の差を反映できる
デメリット:中間利息控除により金額が低くなりがち
③定年時退職金ベース+退職時払い方式
定年退職時の見込額から別居後・婚姻前労働分を差し引いた金額を、実際に退職金が支給された時点で分与する(中間利息控除なし)。
メリット:離婚時に分与義務者の資力が乏しくても合意しやすい
デメリット:退職まで時間がある場合、強制執行による回収が困難なリスク
【補足】財産分与の額は、家庭裁判所が「一切の事情」を考慮して定めると規定されているため(民法768条3項)、上記3方式に限定されるわけではありません。各方式を組み合わせた中間的な扱いをした裁判例もあります。
Q3退職金がまだ先のときも分与の対象になりますか?
結論:定年退職まで相当の年数(10年以上)がある場合でも、勤務先の退職金規程が明確で支給の蓋然性が高ければ、財産分与の対象とされる事例が多いのが近年の実務です。

かつては、定年まで相当の年数がある場合は受給の蓋然性が低いとして、財産分与の対象にはならないとする裁判例もありました。広島高判平成19年4月17日(家月59巻11号162頁)は、将来の定年退職金について、支給制限事由の存在や退職事由による額の差異を理由に、現存する積極財産として財産分与の対象とすることはできないとしました(一方で、同事案では別居時に自己都合退職した場合の額を財産分与の対象としています)。

近年の実務では、就業規則や賃金規程に退職金支給の規定が明記されている場合には、原則として清算的財産分与の対象とみる傾向にあります。判断にあたっては、勤務先の性質(公務員・大企業・中小企業)、支給根拠の有無、勤務先の経営状況等が考慮されます。

【補足】将来の退職金については、寄与割合を5割未満(4分の1や4割)とする裁判例も見られます。退職金が将来の不確定要素を含む点をふまえ、調整がはかられている事案があります。
Q4別居後に受け取った退職金はどう扱われますか?
結論:財産分与の基準時は原則として別居時です。別居時点の自己都合退職金相当額のうち、同居期間に対応する部分が分与対象となるのが通常です。別居後に受給した退職金そのものが対象になるとは限りません。

財産分与の対象財産は、原則として別居時点に存在する財産を基準に判定します(基準時論)。退職金についても、別居時点で「自己都合退職したと仮定した場合の額」のうち、同居期間に対応する部分が分与の対象となります。

具体的な算出方法は、次のとおりです。

図:基本算出式(婚姻時に既に在職していた場合)
基準時(別居時)の自己都合退職金相当額
×
同居期間 ÷ 勤務期間
= 財産分与の対象となる退職金額

他方、別居開始時点で退職金相当額が0円であり、別居後も家計がほぼ完全に別会計となっていて夫婦の経済的協力関係が形成されていなかったといえる場合には、別居後に受給した退職金が分与対象とならないとされる事例もあります。基準時操作(基準時を別居開始時より後の時期にずらす主張)が認められるかは、別居後の経済的協力関係の有無等の事情に左右されます。

⚠️ 別居中にお相手が中途退職してしまうと、退職金が散逸して回収できなくなるリスクがあります。退職の動きが察知された場合は、仮差押え等の保全手続を検討する必要があります。
Q5企業年金は財産分与の対象になりますか?
結論:企業年金とは、厚生年金基金や事業主等が運営する、公的年金に上乗せされる年金制度のことです。受給開始の蓋然性や受給方法(一時金/年金)に応じて、財産分与の対象となり得ます。なお、企業年金は厚生年金保険法上の年金分割の対象ではありません(同制度の対象は公的年金部分のみ)。

企業年金は、厚生年金基金・確定給付企業年金・確定拠出年金等の総称で、退職金と並んで婚姻期間中に積み上げられる重要な財産です。財産分与時点の状態によって、扱いが分かれます。

図:企業年金の財産分与時の状態別扱い
財産分与時の状態 扱い
既に一時金で受給済み 預金として残っている場合は、通常の預金財産と同様に扱う
年金として受給開始済み 受給者の平均余命までの将来受給見込額を、中間利息控除のうえ現在価額に換算する方法が考えられる
未受給(受給開始前) 受給開始までの蓋然性を踏まえ、一時金見込額をベースに、婚姻期間に対応する分を中間利息控除のうえ算定する方法が考えられる
【補足】受給開始までに相当の期間がある場合は、財産分与の対象とせず、民法768条3項の「その他一切の事情」として総合考慮するにとどまる可能性もあります。実務の取扱いは事案により分かれます。
Q6退職金の財産分与はいつまで請求できますか?
結論:令和8年(2026年)4月1日施行の改正民法768条2項ただし書により、離婚の時から5年を経過したときは家庭裁判所への請求ができなくなります(令和8年3月31日までに離婚が成立した場合は従前どおり2年)。退職金の調査・算定には時間がかかるため、離婚協議の中で同時に取り決めることが望まれます。

財産分与は、当事者間の協議で決められる場合はそれに従いますが、協議が調わないとき・できないときは家庭裁判所に対し協議に代わる処分を請求することになります(民法768条2項)。この家庭裁判所への請求には期間制限があり、令和8年4月1日施行の改正により、原則として離婚の時から5年以内に伸長されました。

なお、年金分割(公的年金の標準報酬の按分)の請求期限についても、令和8年4月1日以降に離婚した場合は離婚等をした日の翌日から起算して5年以内に伸長されています(厚生年金保険法78条の2第1項。経過措置として令和8年4月1日前に離婚した場合は従前どおり2年)。財産分与と年金分割は別個の手続ですが、現在は期間制限がいずれも原則5年で揃いました。もっとも、年金分割は年金事務所に対する請求も必要であり、財産分与と一体的に進めることが望ましい点に変わりはありません。

【根拠】民法(明治29年法律第89号)第768条第2項:「前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から五年を経過したときは、この限りでない。」(令和8年4月1日施行)
Q7どんな資料を集めればよいですか?
結論:勤務先の就業規則・退職金規程の写し、基準日(別居時)に自己都合退職した場合の退職金見込額証明書、企業年金加入証明書、給与関係資料、婚姻日・別居日が分かる書類がベースになります。

退職金の主張・立証に必要な主な資料は次のとおりです。

図:退職金の財産分与で集めたい資料
① 勤務先の就業規則・退職金規程
退職金の支給根拠・支給率・自己都合と会社都合の差異等を確認するための基本資料
② 基準時の自己都合退職金見込額証明書
勤務先の人事部・総務部で発行してもらう。退職時の金額しか分からない場合は、退職時見込額から逆算する方法もある
③ 企業年金加入証明書
確定給付企業年金・確定拠出年金(企業型)の加入状況、現時点の年金資産額等
④ 給与関係資料
直近の給与明細・源泉徴収票。退職金規程と組み合わせて支給率を計算する場合に使用
⑤ 婚姻日・別居日を証する書類
戸籍謄本(婚姻日)、住民票の異動履歴等(別居開始時期)。同居期間/勤務期間の比率算定に不可欠

配偶者が任意に資料開示に応じない場合には、家庭裁判所の調停・審判手続を通じた調査嘱託(家事事件手続法62条等)の活用を検討します。

Q8退職金の財産分与の割合は2分の1ですか?
結論:令和8年4月1日施行の改正民法768条3項後段は「各当事者の寄与の程度が異なることが明らかでないときは、相等しいものとする」と明文化しました。退職金についても婚姻期間に対応する部分を原則2分の1で分けます。ただし、将来の退職金については寄与割合を5割未満とする裁判例も見られ、事案により調整される場合があります。

改正前から、家庭裁判所の実務では夫婦の寄与割合を原則2分の1とする「2分の1ルール」が広く定着していました。改正民法はこれを条文上明文化したものです。専業主婦(主夫)であっても、家事労働等を通じて配偶者の就労を支えていたと評価され、原則として2分の1の寄与が認められます。

もっとも、将来の退職金については、不確定要素を含むことや、別居後の労働分が混在することなどを踏まえ、寄与割合を4割や4分の1とする裁判例も見受けられます。具体的な割合は、勤続年数のうち同居期間が占める比率、別居期間の長短、配偶者の家事・育児への寄与状況等を総合的に考慮して決められます。

【根拠】民法(明治29年法律第89号)第768条第3項:「前項の場合には、家庭裁判所は、離婚後の当事者間の財産上の衡平を図るため、当事者双方がその婚姻中に取得し又は維持した財産の額及びその取得又は維持についての各当事者の寄与の程度、婚姻の期間、婚姻中の生活水準、婚姻中の協力及び扶助の状況、各当事者の年齢、心身の状況、職業及び収入その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。この場合において、婚姻中の財産の取得又は維持についての各当事者の寄与の程度は、その程度が異なることが明らかでないときは、相等しいものとする。」(令和8年4月1日施行)
守谷・取手・つくばみらい・つくば・柏エリアの実情

つくばエクスプレス(守谷駅・みらい平駅・つくば駅)・JR常磐線(取手駅・北柏駅・柏駅)の沿線は、東京通勤の会社員世帯が多く居住するエリアです。中央省庁・大企業の社員・公務員が定年退職を迎えるタイミングで離婚に至るケースは、財産分与の中でも退職金が大きな論点となりやすい類型です。つくば市・つくばみらい市は研究機関や高等教育機関の従事者も多く、企業年金(厚生年金基金・確定給付企業年金)が手厚い職場の方も少なくありません。離婚を協議する段階で、退職金規程の取り寄せ・別居時点の自己都合退職金額の算出を早めに進めることで、調停や審判での主張立証がスムーズになります。茨城県側の家事事件の管轄は、守谷市・取手市・龍ケ崎市・牛久市が水戸家庭裁判所龍ケ崎支部、つくばみらい市・つくば市・土浦市が水戸家庭裁判所土浦支部、常総市が水戸家庭裁判所下妻支部となります。千葉県側の柏市・我孫子市・流山市・野田市は千葉家庭裁判所松戸支部の管轄です。

退職金や企業年金が絡む離婚は、財産の調査・評価・算定方式の選択など、検討事項が多く、見落としが大きな差につながります。状況をお聞きしたうえで、どの算定方式が依頼者にとって有利になるかをご説明します。初回相談は面談またはZOOMで承っています。

弁護士 吉津和輝
茨城県弁護士会所属|〒302-0128 茨城県守谷市けやき台3-28-7
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参考資料・情報源

e-Gov法令検索(デジタル庁)— 民法第768条
裁判所ウェブサイト
・広島高判平成19年4月17日 家月59巻11号162頁
・大阪高判平成19年1月23日 判タ1272号217頁

更新履歴

・2026年5月24日:初版公開(令和8年4月1日施行の改正民法768条2項・3項を反映)

本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別事案への法的アドバイスではありません。具体的なご相談は弁護士にお問い合わせください。なお、本記事の内容は令和8年(2026年)5月時点の情報に基づいています。法律・実務の取り扱いは今後変更される可能性があります。
公開日:2026年5月24日|最終更新日:2026年5月24日