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残業代の内容証明が届いたら

YOSHITSU LAW · COLUMN

残業代請求の内容証明が届いたら
|経営者向け初動対応

企業法務/労務トラブル(使用者側)
弁護士 吉津和輝 / 茨城県弁護士会所属
弁護士 吉津和輝(よしつ かずき)
茨城県弁護士会所属(登録番号57714)/2018年12月弁護士登録
主な取扱分野:企業法務・労務トラブル(使用者側)・契約書レビュー・顧問弁護士
守谷・取手・つくばみらい・柏エリアの中小企業経営者の方へ。退職した元従業員から、ある日突然「未払い残業代を請求します」という内容証明郵便が届く——労務相談として一定の頻度で寄せられるご相談です。すぐに支払うのも、無視して放置するのも、いずれも望ましくない対応です。本記事では、初動で確認すべきポイントと労働審判への備え方を整理します。
— 企業の労務トラブルに関するご相談を承っています —
📞 050-3623-1320 📧 メールで相談
弁護士 吉津和輝(茨城県弁護士会所属)/〒302-0128 茨城県守谷市けやき台3-28-7
本記事で分かること(結論早見表)
Q1
すぐ支払うべき?
いいえ。まず精査
Q2
時効は何年?
当面 3年
Q3
店長=管理監督者?
役職名だけでは×
Q4
固定残業代でOK?
3要件を満たせば
Q5
労働審判の対応は?
第1回期日が勝負
Q6
放置するとどうなる?
付加金+遅延14.6%
Q 退職した元従業員から残業代請求の内容証明が届きました。すぐ支払う必要がありますか?
A
直ちに全額を支払う必要はありません。まず請求内容を精査することが重要です。

内容証明には「○月○日までに○○円を支払え」という回答期限が書かれているのが一般的ですが、これは請求者側が一方的に設定したもので、法的に厳守義務があるわけではありません。慌てて支払うと、本来不要な部分まで支払うことになりかねません。

📋 まず確認すべき5項目
1. 請求対象期間
いつからいつまでの残業代か。時効にかかった分は除外できる
2. 労働時間の算定根拠
タイムカード/自己申告/本人メモなど、どの資料に基づくか
3. 当該従業員の地位
管理監督者の主張ができる可能性があるか
4. 固定残業代の支給状況
給与明細・雇用契約書・就業規則上の取扱い
5. 残業命令の有無
許可制を採用していたか、無許可残業を黙認していなかったか

これらを整理した上で、自社で精査が難しい場合は使用者側労務に対応する弁護士への相談を検討することが望まれます。

Q 残業代請求の時効は何年ですか?古い分は払わなくていいですか?
A
賃金請求権の消滅時効は、当分の間「賃金支払期日から3年」です。時効が経過した部分は時効援用で消滅させられます。

2020年4月の労基法改正で、時効は2年→5年に延長されましたが、当分の間は3年とされています(労基法143条3項)。

⏳ 時効期間の変遷
改正前(〜2020.3)
2年
現在(当分の間)
3年
本則(将来)
5年
※退職金請求権は5年(変更なし)。災害補償等は2年。
【根拠条文】労働基準法(昭和22年法律第49号)第115条
「この法律の規定による賃金の請求権はこれを行使することができる時から五年間、…二年間行わない場合においては、時効によつて消滅する。」

労働基準法第143条第3項(経過措置)
「第百十五条の規定の適用については、当分の間、…賃金(退職手当を除く。)の請求権はこれを行使することができる時から三年間とする。」

時効の起算点は各賃金の支払期日です。毎月25日支払いなら、3年前の25日より前の月の残業代は時効にかかっている可能性があります。ただし時効は自動消滅せず、相手方に時効援用の意思を伝える必要があります(実務上は時効援用通知書を内容証明で送付)。

⚠️ 残業代の一部を支払うと、債務承認として時効中断(更新)事由になる可能性があります。「とりあえず一部払って様子を見よう」は、時効援用の機会を失わせかねないので、支払い前に弁護士へご相談ください。
Q 「うちの店長は管理監督者だから残業代は払わない」と説明していました。これで大丈夫ですか?
A
社内で「店長」「課長」と扱っていても、労基法上の管理監督者に該当するかは別問題です。役職名だけでは反論として通りません。

労基法41条2号は、管理監督者には労働時間・休憩・休日の規定が適用されないと定めています(深夜割増賃金は別途必要)。しかし裁判所は、社内の肩書きではなく実態を総合判断します。

🔍 管理監督者の判定 — どちらに当てはまる?
判定 実態
認められやすい:経営会議に出席し人事権を持つ/タイムカード対象外で出退勤に裁量がある/手当込みで一般従業員より相当高い処遇
× 認められにくい:シフトに組み込まれている/部下の採用・解雇権がない/給与は一般従業員より僅か高いだけ/自分の労働時間も会社が管理
【根拠条文】労働基準法第41条第2号
「事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者」については、労働時間、休憩及び休日に関する規定は適用しない。
【補足】管理監督者と認められなかった場合、未払い残業代は高額化しがちです。請求対象期間が長く、基本給も高めなので時間単価ベースの残業代も大きくなるためです。役職者を「管理職だから」と扱ってきた会社ほど、退職後の請求リスクが大きくなる傾向があります。
Q 固定残業代(みなし残業手当)を払っていれば残業代は不要ですか?
A
固定残業代を支給していても、それだけで追加支払いが不要になるわけではありません。3つの要件を満たさないと無効と判断されることがあります。

給与明細上の見え方ひとつで、結論が変わることがあります。

❌ 無効と判断されやすい例
基本給 25万円
業務手当 5万円
合計 30万円
「業務手当」が何時間分の残業代かが書類上不明
⭕ 有効と認められやすい例
基本給 25万円
固定残業代
(月20h相当)
5万円
合計 30万円
時間数と金額が明示・差額精算規定あり
📐 有効な固定残業代の3要件
明確区分性:通常賃金部分と固定残業代部分が、給与明細・雇用契約書・就業規則上で明確に区別されている
対価性:何時間分の時間外労働への対価かが、金額または時間数として明示されている
差額精算:固定残業代を超える時間外労働があった場合、超過分を別途支払う運用になっている
⚠️ 固定残業代が無効と判断されると、当該手当は通常賃金として扱われます。すると残業代計算の基礎賃金が増加し、未払い残業代額が逆に大きくなる結果になります。雇用契約書・就業規則の整備は、平時から行っておくべき予防法務の典型例です。
Q 労働審判を申し立てられたらどう対応すればよいですか?
A
労働審判は3回以内で終結する迅速な手続き。第1回期日までに反論・証拠の準備を済ませる必要があります。

第1回期日は申立てからおよそ40日後に指定されることが多く、会社側はそれまでに「答弁書」と必要な証拠を提出しなければなりません。普通の訴訟のような「1回目は様子見」は通用しません。

⚖️ 労働審判の標準的な進行
1
申立書送達
裁判所から申立書一式が届く。第1回期日が指定される
2
答弁書・証拠提出(第1回期日の約1週間前まで)
タイムカード・賃金台帳・雇用契約書等の証拠を提出
3
第1回期日(申立てから約40日)
申立人本人・会社代表者が出席。心証や調停案が示されることも
4
第2回・第3回期日
調停による解決を試み、合意に至らなければ労働審判が出される
5
異議申立て or 確定
2週間以内に異議申立てがなければ確定。異議があれば自動的に通常訴訟へ移行
⚠️ 第1回期日が事実上の山場です。事実関係の整理・主張すべき法的論点の絞り込み・客観的証拠の収集をすべて済ませておく必要があります。
Q 残業代請求を放置するとどうなりますか?労基署が来ますか?
A
放置した場合、元従業員が労基署申告・労働審判・訴訟を提起する可能性があります。最終支払額を構成する要素が複数あるため、早期対応が結果的に支払総額を抑える場面があります。
📋 放置した場合の主な経済的影響
労基署調査
是正勧告のおそれ
付加金
未払額と同額が追加
遅延損害金
(退職者)
年14.6%
遅延損害金
(在職者)
年3%
他従業員
からの請求
同様の請求の可能性
【根拠条文】労働基準法第114条(付加金の支払)
「裁判所は、第二十条、第二十六条若しくは第三十七条の規定に違反した使用者…に対して、労働者の請求により、…未払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができる。ただし、この請求は、違反のあった時から五年(当分の間は三年)以内にしなければならない。」

退職者の遅延損害金は年14.6%(賃金の支払の確保等に関する法律6条)とされており、解決までの期間に比例して支払総額が増えていきます。早期に交渉での合意解決を目指すことで、結果的に支払総額を抑えられる場合があります。

労務トラブルの予防・継続サポートについては、顧問契約のご案内ページもご参照ください。

📍 守谷・取手・柏エリアの管轄労基署

元従業員が申告する場合、事業所の所在地を管轄する労働基準監督署が窓口になります。

常総労基署
守谷市
つくばみらい市
常総市・坂東市
常総市水海道
淵頭町
龍ヶ崎労基署
取手市
龍ケ崎市
牛久市・稲敷市
龍ケ崎市
川原代町
柏労基署
柏市
松戸市・流山市
野田市・我孫子市
柏市柏

TX(つくばエクスプレス)・常磐線沿線は流通・建設・小売等の中小企業が集積するエリアで、退職者からの残業代請求は退職後数か月〜1年以内に内容証明が届くケースが少なくありません。3年分の請求では数百万円規模になることもあり、平時の労働時間管理・賃金規程の整備が事後対応コストを大きく左右します。

CONTACT

残業代請求への対応は、内容証明が届いた段階の初動と、労働審判の第1回期日までの対応で結果が大きく変わります。回答期限が迫っている状況でも、まず状況をお聞かせください。請求内容の精査・反論の組み立て・交渉方針について、状況をお聞きした上でご説明します。継続的な労務サポートをご希望の場合は、顧問契約での対応もご検討いただけます。

弁護士 吉津和輝
茨城県弁護士会所属/〒302-0128 茨城県守谷市けやき台3-28-7
📧 [email protected]
📞 050-3623-1320
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(公開後に追加予定:契約書レビュー、カスタマーハラスメント対応、解雇・退職勧奨の進め方等)

対応エリア

守谷市・取手市・常総市・つくばみらい市・龍ケ崎市・牛久市・つくば市・土浦市・野田市・我孫子市・北柏をはじめ、茨城県南部・千葉県北西部の中小企業経営者からの残業代請求対応・労務トラブルに関するご相談もお受けしています。弁護士 吉津和輝(茨城県弁護士会所属)までお気軽にどうぞ。

参考資料・情報源

e-Gov法令検索(デジタル庁) — 労働基準法第37条・第41条・第114条・第115条・第143条第3項、賃金の支払の確保等に関する法律第6条
未払賃金が請求できる期間などが延長されています(厚生労働省パンフレット)
茨城労働局 労働基準監督署の管轄地域と所在地

更新履歴

・2026年5月10日:初版公開

本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別事案への法的アドバイスではありません。具体的なご相談は弁護士にお問い合わせください。なお、本記事の内容は令和8年(2026年)5月時点の情報に基づいています。法律・実務の取り扱いは今後変更される可能性があります。
公開日:2026年5月10日|最終更新日:2026年5月10日