親権者変更を申し立てる — 単独親権から共同親権へ/共同親権から単独親権へ

YOSHITSU LAW · COLUMN

親権者変更を申し立てる
— 単独親権から共同親権へ/共同親権から単独親権へ

改正民法(令和6年法律第33号)2026年4月1日施行
弁護士 吉津和輝 / 茨城県弁護士会所属
弁護士 吉津和輝(よしつ かずき)
茨城県弁護士会所属(登録番号57714)/2018年12月弁護士登録
主な取扱分野:離婚・親権・家事事件、相続、刑事弁護、企業法務
2026年4月の改正民法施行後、これまでに離婚している方からも「自分の場合は単独親権から共同親権に変更できるのか」「離婚時にDVを背景に共同親権で合意してしまったが、単独親権に戻せるか」というご相談が増えています。本記事では、改正民法第819条第6項・第8項に基づく親権者変更の手続きと、家庭裁判所が考慮する事情を、法務省Q&A資料に基づいて整理します。
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弁護士 吉津和輝(茨城県弁護士会所属)/〒302-0128 茨城県守谷市けやき台3-28-7
Q 施行前に離婚済み。共同親権に変更できる?
A
家庭裁判所への親権者変更の申立てによって、単独親権から共同親権への変更を求めることが可能です。逆に、共同親権から単独親権への変更も同じ手続きで申し立てます。施行前にすでに離婚している方も、施行後(2026年4月1日以降)であれば申立てができます。

改正民法第819条第6項は、子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所が、子又はその親族の請求によって親権者を変更することができると規定しています。

改正前の同条第6項は「他の一方に変更することができる」という限定的な規定でしたが、改正後は「変更することができる」となり、母単独親権から父単独親権、父単独親権から母単独親権だけでなく、単独親権から共同親権、共同親権から単独親権への変更も含む形に整理されました。

法務省Q&A資料も、施行後は、施行前に離婚していた父母も、父母双方を親権者とすることを含む親権者の変更の申立てをすることができると説明しています。裁判所は、子の利益のため、父母と子の関係や父と母の関係その他一切の事情を考慮して判断することになります。

なお、申立書は子1人につき収入印紙1,200円が必要で、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に提出します。茨城県南部のご相談者であれば、相手方が水戸家庭裁判所龍ケ崎支部・土浦支部の管轄エリアに住んでいる場合は当該支部、相手方が千葉県柏市・我孫子市にお住まいなら千葉家庭裁判所松戸支部の管轄になります。詳細は裁判所ウェブサイト(www.courts.go.jp)で「裁判所の管轄区域」をご確認ください。

Q 家庭裁判所はどんな事情を考慮する?
A
家庭裁判所は、子の利益のため、父母と子の関係、父と母の関係その他一切の事情を考慮します。協議で親権者を定めていた場合には、その協議の経過、その後の事情の変更も考慮されます。

改正民法第819条第8項は、家庭裁判所が、父母の協議により定められた親権者を変更することが子の利益のため必要であるか否かを判断するに当たって、当該協議の経過、その後の事情の変更その他の事情を考慮するものとすると規定しています。

そして、当該協議の経過を考慮するに当たっては、父母の一方から他の一方への暴力等の有無、家事事件手続法による調停の有無、裁判外紛争解決手続(ADR)の利用の有無、協議の結果についての公正証書の作成の有無その他の事情をも勘案するものとされています。

これまで子の養育に関する責任を果たしてきたか

法務省Q&A資料は、親権者変更の判断において、父母の一方が子の養育に関する責任をこれまで十分に果たしてきたか、父母相互の人格尊重・協力義務を遵守してきたかも考慮要素の一つになると説明しています。

具体的には、これまでの監護・養育の実績、養育費の支払状況、面会交流に関する裁判所の判断への対応、子の養育に関する協議への姿勢、別居後の親子交流の経過などが考慮材料になります。

前回親権者を定めた時より前の重要な事情も考慮されうる

法務省Q&A資料は、一度親権者を定めていた場合であっても、新たに前回親権者を定めた時より前の重要な事情が判明したときには、そのような事情も考慮され得ると説明しています。

たとえば、共同親権で離婚した後に、子がそれ以前のDVや虐待の被害を話せるようになった場合や、一方の親が自身の被害を話せるようになった場合などは、これらの事情も親権者変更の判断要素として考慮されます。

Q DVを背景に共同親権で合意してしまった。単独親権に戻せる?
A
DV等を背景とする不適正な過程による合意で親権者が定められた場合、是正のための仕組みが用意されています。第819条第7項に該当する事情があれば、親権者変更でも単独親権としなければなりません。

改正民法第819条第7項は、新たに親権者を定める場面だけでなく、親権者変更の場面にも適用されます。同項後段は、「次の各号のいずれかに該当するときその他の父母の双方を親権者と定めることにより子の利益を害すると認められるときは、父母の一方を親権者と定めなければならない」と規定しており、各号はその例示です。

第1号は「父又は母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあると認められるとき」、第2号は「父母の一方が他の一方から身体に対する暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動を受けるおそれの有無、協議が調わない理由その他の事情を考慮して、父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるとき」です。これらに該当するときには、親権者変更の場面でも、裁判所は単独親権を定めなければならないことになります。

そのうえで、改正民法第819条第8項は、協議離婚で親権者を定めていたケースについて、当該協議の経過、その後の事情の変更を考慮するとし、特に「父母の一方から他の一方への暴力等の有無」「調停の有無」「ADRの利用の有無」「公正証書の作成の有無」を勘案するとしています。

「協議の経過」が考慮される趣旨

法務省Q&A資料によれば、協議離婚の際にDV等を背景とする不適正な過程による合意で親権者の定めがされた場合には、子にとって不利益となるおそれがあるため、それを是正する必要があるという趣旨で第8項の規定が設けられました。

調停や公正証書を経由していない協議離婚で、対等な立場での話し合いが困難な状況のもとで共同親権の合意がされていた場合、その経緯自体が単独親権への変更を判断する重要な要素になります。

DVは身体的暴力に限られない

第819条第7項第2号にいう「身体に対する暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動」には、身体的DVだけでなく、精神的DV・経済的DV・性的DVも含まれます。法務省Q&A資料も、これらのDVによって父母が話し合いができない状態にあり、親権の共同行使が困難な場合は、要件に当てはまることがあると説明しています。

「DVの認識を欠いていた」という方も少なくありません。法務省Q&A資料も、DVに関しては加害者・被害者の双方が認識を欠いている場合があることを勘案して適切に判断されると説明しています。離婚当時は声をあげることができなかったが、別居後に状況を整理できたという方も、改めて専門家と論点を整理することが可能です。

Q 養育費を払っていない親が共同親権への変更を求めてきたら?
A
養育費の不払いが長期間にわたって合理的な理由なく続いていた事情は、共同親権への親権者変更が認められない方向に大きく働く事情とされています。

法務省Q&A資料は、親権者変更の判断において、親権者変更を求める親が養育費の支払のような子の養育に関する責任をこれまで十分に果たしてきたかは、重要な考慮要素の一つであると明記しています。

そのうえで、親権者ではない親が、本来であれば支払うべき養育費の支払を長期間にわたって合理的な理由もなく怠っていたという事情は、共同親権への親権者変更が認められない方向に大きく働く事情であるとされています。

逆に、共同親権で離婚したものの、養育費の支払義務を負う親が支払をしないという場面で、他方の親が単独親権への変更を申し立てるケースもあり得ます。法務省Q&A資料は、そのことのみによって直ちに単独親権への変更が認められるわけではないとしつつ、養育費の支払がされなくなった事情によっては、単独親権に変更することが相当であるとの判断がされる場合もあり得ると説明しています。

濫用的な申立てへの対応

繰り返しの申立てや嫌がらせ目的の申立てに対しても、家事事件手続法上の手当てがあります。家事調停について不当な目的でみだりに申立てがされた場合には、調停手続をしないことによって事件を終了させることができるとされています。家事審判についても、申立てが不適法であるとき又は申立てに理由がないことが明らかなときは、申立書の写しを相手方に送付しないことができるとされています。

親権者変更について濫用的な申立てがされた場合にも、こうした対応が可能であると、法務省Q&A資料は説明しています。一方的な申立てを受けた側の方も、必ずしも調停や審判の手続きに長期間付き合わなければならないというわけではありません。

まとめ ── 親権者変更は「これまで」と「これから」の両面で評価される

親権者変更は、これまでの子の養育に関する責任の果たし方、父母相互の関係、別居後の生活状況、これからの監護環境など、多くの事情を総合的に考慮して判断されます。一度決めた親権者の定めを変更してもらうには、それまでの経緯と現在の状況、そして将来に向けた監護方針を整理して主張することが重要です。

当事務所のあるエリアは、つくばエクスプレス開通後、東京方面への通勤と地元での子育てを両立する世帯が多くなったエリアです。離婚後にお子さんを連れて柏や取手の実家に戻る方、離婚後に転居を繰り返す方など、別居後の生活拠点の変動が大きいご家庭もあります。親権者変更の場面では、こうしたこれまでの経過と現在の監護状況をどう説明するかが重要になります。

2026年4月の施行から日が浅く、家庭裁判所の運用が定着するのはこれからです。施行前に離婚していた方からの申立てが増える時期でもあります。お早めにご相談いただくことで、論点の整理や証拠の準備に時間を確保することができます。

CONTACT

親権者変更の調停・審判、共同親権をめぐるご相談、養育費・面会交流の取り決めなど、離婚と子の養育にまつわるご相談を承っています。守谷市・取手市・つくばみらい市・常総市・龍ケ崎市・牛久市・つくば市・土浦市・柏市・我孫子市・野田市など、茨城県南部・千葉県北西部にお住まいの方からのご相談に対応しています。

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共同親権と単独親権の判断基準・親権行使のルールについては別記事で解説しています。法定養育費・先取特権についても別記事で取り上げています。離婚・親権・養育費に関する記事は yoshitsu-law.com 内のブログ一覧でご確認いただけます。

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参考資料・情報源

・民法(明治29年法律第89号)/民法等の一部を改正する法律(令和6年法律第33号):e-Gov法令検索
・法務省「Q&A形式の解説資料(民法編)」
・「父母の離婚後の子の養育に関する民法等改正法の施行準備のための関係府省庁等連絡会議取りまとめ」(令和7年6月30日)
・裁判所ウェブサイト「裁判所の管轄区域」:www.courts.go.jp

更新履歴

2026年5月6日 初稿公開

免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別事案への法的アドバイスではありません。具体的なご相談は弁護士にお問い合わせください。なお、本記事の内容は令和8年(2026年)5月時点の情報に基づいています。法律・実務の取り扱いは今後変更される可能性があります。
公開日:2026年5月6日|最終更新日:2026年5月6日