· 

事業承継|守谷の中小企業オーナーが今動くべき5つの法律論点

顧問弁護士・企業法務

事業承継|守谷の中小企業オーナーが今動くべき5つの法律論点

弁護士 吉津和輝(茨城県弁護士会所属)
弁護士 吉津和輝(よしつ かずき)
茨城県弁護士会所属|2018年12月弁護士登録
取扱分野:企業法務(顧問・契約書レビュー・株主トラブル)・労働問題・家族法・相続

守谷市で会社を営むオーナー社長の方へ。事業承継は「いずれやらなければ」と分かっていても、日々の経営に追われて先送りになりがちなテーマです。しかし、後継者育成・株式集中・遺留分対策・経営者保証の解除には、いずれも年単位の準備期間が必要です。本記事では、守谷・つくばみらい・常総周辺の事業実態を踏まえ、中小企業オーナーが押さえるべき5つの法律論点を整理します。

事業承継・顧問契約のご相談を承っています
弁護士 吉津和輝(茨城県弁護士会所属)|〒302-0128 茨城県守谷市けやき台3-28-7
目次
  1. 事業承継はいつから準備を始めればよいですか?
  2. 中小企業の事業承継には、どんな方法がありますか?
  3. 後継者に株式を集中させたいが、ほかの相続人との関係でもめそうです
  4. 経営者保証はどうなりますか?後継者に引き継げますか?
  5. 親族にも従業員にも後継者がいません。廃業しかないですか?
  6. 株主名簿にあるのに連絡がつかない人がいます。整理できますか?
  7. 弁護士・税理士・中小企業診断士、誰に何を頼めばよいですか?
Q事業承継はいつから準備を始めればよいですか?
A
結論として、数年前を目安に着手することが一般的に推奨されています。経営者が60歳を過ぎたら、まずは現状把握から始めるのが現実的です。

事業承継には、後継者の選定・育成、自社株式の評価と集中、税務対策、金融機関や主要取引先への説明、経営者保証の整理など、多数の論点があります。中小企業庁「事業承継ガイドライン」(令和4年3月改訂)では、これらを計画的に進めるため5〜10年の準備期間が必要とされています。

「もう少ししてから」と先送りにすると、後継者候補との十分な引継ぎ期間が取れない、株価が高騰して贈与・相続のコストが膨らむ、社長自身の健康状態が変化する、といった問題が連鎖的に発生します。逆に、早めに着手すれば、後継者候補の経営感覚を時間をかけて育成でき、不要な事業用資産の整理や金融機関との関係調整にも余裕を持って取り組めます。

守谷・つくばみらい・常総エリアでは、内守谷工業団地や谷和原IC周辺の食品・物流・部品製造業など、設備や許認可・取引先関係が事業の中核となる会社が多くあります。こうした会社では、設備更新の投資判断と承継スケジュールを連動させることが特に重要になります。
Q中小企業の事業承継には、どんな方法がありますか?
A
結論として、大きく分けて「親族内承継」「役員・従業員承継」「第三者承継(M&A)」の3類型があります。それぞれメリットとデメリットがあり、後継者の有無・株式の集中度・債務状況によってどれが現実的かが変わります。

中小企業庁の調査では、近年は親族内承継の比率が低下し、第三者承継(M&A)の比率が上昇しているとされています。特に、子が別の職業に就いている、または親が事業承継を強く望まないというケースが増えています。

どの方法を選ぶかによって、その後に必要になる法的手当てが大きく変わります。たとえば親族内承継なら遺留分対策、役員承継なら株主間契約、M&Aなら株式譲渡契約と従業員承継の調整が中心論点になります。

Q後継者に株式を集中させたいが、ほかの相続人との関係でもめそうです。どうすればよいですか?
A
結論として、経営承継円滑化法の「遺留分に関する民法の特例」を活用することが、有力な選択肢の一つになります。推定相続人全員の合意のもと、後継者に贈与した自社株式を遺留分の計算から除外、または合意時の価額に固定できる仕組みです。

中小企業のオーナーが亡くなったとき、相続財産の大半が自社株式というケースは珍しくありません。このとき、後継者でない相続人から遺留分侵害額請求(民法1046条)を受けると、後継者は侵害額に相当する金銭を支払う必要があり、最悪の場合は株式の一部を手放さざるを得なくなります。これは経営の安定にとって大きなリスクです。

そこで活用されるのが、経営承継円滑化法の民法特例です。具体的には次の2つの合意が認められます。

類型 内容
除外合意 後継者に贈与等された自社株式を、遺留分を算定するための財産の価額に算入しない
固定合意 遺留分を算定するための財産の価額に算入すべき価額を、合意時の価額に固定する(株式のみ)
【根拠条文】中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(平成20年法律第33号)第4条第1項第1号・第2号
「旧代表者の推定相続人及び会社事業後継者は、その全員の合意をもって、書面により、次に掲げる内容の定めをすることができる。一 当該会社事業後継者が当該旧代表者からの贈与又は当該株式等受贈者からの相続により取得した当該特例中小会社の株式等の全部又は一部について、その価額を遺留分を算定するための財産の価額に算入しないこと。二 前号に規定する株式等の全部又は一部について、遺留分を算定するための財産の価額に算入すべき価額を当該合意の時における価額……とすること。」

この合意を有効にするには、推定相続人全員の合意のうえ、経済産業大臣の確認(同法7条)と家庭裁判所の許可(同法8条)を受ける必要があります。

推定相続人の中に1人でも合意しない人がいると、この特例は利用できません。そのため、生前のうちに後継者と非後継者の間で財産分配の方針を共有し、合意形成を進めることが前提になります。「説明する前に判子だけ押してくれ」というやり方では成立しません。
Q経営者保証はどうなりますか?後継者に引き継げますか?
A
結論として、経営者保証は当然には後継者に引き継がれません。金融機関との交渉により、新経営者への保証切替や、可能であれば解除を進めることになります。

中小企業の借入には、社長個人の連帯保証(経営者保証)が設定されているケースが多く、これが事業承継の大きな障害になります。後継者候補が「個人保証を負うのは怖い」として承継を断る、という事例は地域でもよく見られます。

この問題に対応するため、全国銀行協会と日本商工会議所が策定した「経営者保証に関するガイドライン」、および「事業承継時に焦点を当てた経営者保証に関するガイドラインの特則」が運用されています。これらは法律ではなく自主ルールですが、多くの金融機関が取扱基準として参照しているため、交渉の出発点になります。

特則のポイント(事業承継時)
① 前経営者と後継者の双方から二重に保証を取る「二重徴求」は原則として行わない
② 既存の経営者保証の見直しの検討
③ 法人と個人の資産・経理が明確に分離されているか等の評価による解除可能性の検討
④ 保証契約の必要性等の説明と記録

また、経営承継円滑化法に基づき都道府県知事の認定を受けると、信用保証協会の特例や日本政策金融公庫からの融資が利用できる場合があり、後継者の株式買取資金や保証切替に伴う資金需要に対応できる仕組みもあります。

【根拠条文】中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律 第13条(中小企業信用保険法の特例)、第14条(株式会社日本政策金融公庫法及び沖縄振興開発金融公庫法の特例)

金融機関との交渉は、決算内容の整理・経営計画の提示・専門家の同席など、準備が結果を大きく左右します。早めに着手することが望ましい論点です。

Q親族にも従業員にも後継者がいない場合、廃業しかないでしょうか?
A
結論として、廃業以外に第三者承継(M&A)という選択肢があります。

後継者不在を理由に黒字のまま廃業する中小企業は、依然として相当数存在します。しかし、廃業を選択すると、培ってきた取引先・従業員・技術が失われ、地域経済への影響も小さくありません。

第三者承継は、自社の事業価値を見える化し、それを継いでくれる相手を探すプロセスです。守谷・つくばみらい周辺は、TX沿線の人口流入・首都圏への近接性・常磐道や圏央道へのアクセスといった立地条件から、買い手側からの関心を持たれやすいエリアでもあります。

進め方としては、次のような流れになります。

弁護士の関与が特に重要になるのは、基本合意書(LOI)の作成、デューデリジェンス(買い手側からの法務調査への対応)、最終契約書(株式譲渡契約等)の作成・レビューです。表明保証条項や補償条項の設計を誤ると、譲渡後に思わぬ責任を負うことがあります。

Q古い会社で、株主名簿に名前があるのに連絡がつかない人がいます。整理できますか?
A
結論として、経営承継円滑化法上の「所在不明株主に関する会社法の特例」を活用できる場合があります。会社法では通常5年以上を要する手続きが、この特例では1年に短縮されます。

創業から長く続いている中小企業では、設立時に名義株主として親戚や知人を入れていたものの、相続が重なって現在の所有者が誰なのか分からない、という状況がしばしば生じます。こうした「所在不明株主」がいると、株主総会の招集通知が届かず、議決権の集計や株主構成の把握に支障が出るため、事業承継・M&Aの障害になります。

会社法第197条では、所在不明株主の株式について、通知や催告が5年以上継続して到達せず、剰余金の配当も5年間受領しない場合に、競売または売却が認められています。しかし「5年」という期間は実務上重い負担です。

そこで、経営承継円滑化法の特例では、都道府県知事の認定を受けることを前提に、この期間が「1年」に短縮されます。

【根拠条文】中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律 第15条第1項(所在不明株主の株式の競売及び売却に関する特例)
会社法第197条第1項第1号中「前条第1項又は第294条第2項の規定により通知及び催告をすることを要しない」とあるのは「する通知又は催告が一年以上継続して到達しない」と、同項第2号中「五年間」とあるのは「一年間」と読み替える旨を定めています。

この特例の利用には、認定要件(経営の承継の必要性の認定)を満たす必要があり、また売却前に裁判所の許可手続きや株主への異議申述機会の付与など、所要のプロセスがあります。実務上は、株主名簿の精査・住所調査・議事録整備とセットで進めることが一般的です。

Q弁護士・税理士・中小企業診断士、誰に何を頼めばよいでしょうか?
A
結論として、それぞれ役割が異なります。事業承継は単独の士業で完結する分野ではなく、複数士業の連携が必要になります。

役割分担の目安は次のとおりです。

士業 主な役割
弁護士 遺留分対策・株主間契約・株式集中の法的設計、契約書(株式譲渡契約・基本合意書)作成、株主総会運営、トラブル予防・対応、家庭裁判所での許可手続き対応
税理士 事業承継税制(贈与税・相続税の納税猶予)の適用判断、株価評価、相続税・贈与税の試算、税務手続き
中小企業診断士 事業価値評価、経営計画策定、後継者教育プラン、ガバナンス整備
司法書士 株式の名義変更登記、本店移転登記、役員変更登記等
金融機関 事業承継資金の融資、経営者保証の切替・解除交渉

事業承継税制(贈与税・相続税の納税猶予)の適用判断や、相続税・贈与税の試算については税理士にご相談ください。商業登記(株式の名義変更登記、役員変更登記等)については司法書士にご相談ください。

顧問弁護士契約を結んでおくと、これらの士業との連携の中で、契約書類の事前チェック、株主総会・取締役会の運営支援、後継者教育の一環としての法務知識の提供、トラブル発生時の即応など、継続的な法務インフラを持つことができます。事業承継は単発の手続きではなく、5〜10年にわたる継続的な経営課題ですから、伴走型の関係が機能しやすい領域でもあります。

顧問契約の詳細については企業のお客様向けページもご参照ください。

守谷・つくばみらい周辺の事業承継事情

守谷市はTXつくばエクスプレスの開通以降、ベッドタウンとしての性格が強まる一方で、内守谷工業団地(常総市内守谷町)や谷和原IC・圏央道へのアクセスを背景に、食品製造・物流・倉庫業・部品製造業の集積も保たれているエリアです。これらの業種は、設備・許認可・取引先関係が事業の中核を占めるため、株式の集中だけでなく、契約や許認可の継承設計まで含めた事業承継計画が必要になります。地域の中小企業オーナーには、創業から30年・40年が経過し、いま承継のタイミングを迎えている方が少なくありません。

事業承継は、後継者の有無・株主構成・債務状況・家族関係によって最適解が大きく変わる分野です。「まだ早い」と感じている時期から少しずつ準備を進めることで、選択肢が広がります。守谷・つくばみらい・常総周辺の中小企業オーナー様からのご相談を承っています。状況をお聞きした上で、当事務所でご対応できる範囲と必要な他士業との連携についてご説明します。

弁護士 吉津和輝
茨城県弁護士会所属|〒302-0128 茨城県守谷市けやき台3-28-7
📧 [email protected]
📞 050-3623-1320
対応エリア

守谷市・取手市・常総市・つくばみらい市・龍ケ崎市・牛久市・つくば市・土浦市・野田市・我孫子市・北柏をはじめ、茨城県南部・千葉県北西部の中小企業オーナーの方からの事業承継・M&A・株主トラブル・顧問契約に関するご相談をお受けしています。弁護士 吉津和輝(茨城県弁護士会所属)までお気軽にどうぞ。

更新履歴
  • 初版公開

本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別事案への法的アドバイスではありません。具体的なご相談は弁護士にお問い合わせください。なお、本記事の内容は令和8年(2026年)5月時点の情報に基づいています。法律・実務の取り扱いは今後変更される可能性があります。
公開日:2026年5月5日|最終更新日:2026年5月5日