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ひき逃げをしてしまったかもしれない ——警察から連絡が来る前にすべきこと

刑事弁護・交通事故

ひき逃げをしてしまったかもしれない
——警察から連絡が来る前にすべきこと

弁護士 吉津和輝(茨城県弁護士会所属)
弁護士 吉津和輝(よしつ かずき)
茨城県弁護士会所属|2018年12月弁護士登録(登録から約7年)
主な取扱分野:刑事弁護・交通事故・家族法・企業法務

守谷市・つくばみらい市の方へ。深夜や早朝、生活道路で運転中に「何かに当たった気がした」まま止まらずに帰宅してしまい、時間が経つほど不安になっている——そのようなご相談が少なくありません。本記事では、道路交通法72条・117条の規定と実務を踏まえ、警察から連絡が来る前の段階で何を整理しておくべきかを、弁護士の立場から段階別にご説明します。

目次
  1. Q1. 接触したかもしれないが、接触していないかもしれない。ただ逃げてしまいました。
  2. Q2. このまま黙っているのはいいのでしょうか?何もないのでしょうか。
  3. Q3. 出頭したらその場で逮捕されますか?会社に連絡は行きますか?
  4. Q4. 取調べで何を話せばよいですか?
  5. Q5. 罰金で済みますか?裁判になりますか?
  6. Q6. 守谷・つくばみらいの場合、どこに相談すればよいですか?
Q接触したかもしれないが、接触していないかもしれない。ただ逃げてしまいました。
A
道路交通法は「何かに衝突したと感じた時点」で、いったん車を停止して状況を確認することを運転者に義務づけています。停止せずに走り去ること自体が、客観的に事故が発生していれば救護義務違反の対象となり得ます。「気づかなかった」という弁解にも実務上の限界があります。

道路交通法第72条第1項前段は、交通事故があったときに運転者が「直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない」と定めています。この「直ちに停止して」の義務は、確定的に事故が起きたと分かっている場面だけに限られるものではありません。実務上は、自動車が何かに衝突したと感じられたとき、運転者は直ちに運転を停止して、事故の内容や程度・人や物に対する被害の有無を確認することが求められると解されています。

【根拠条文】道路交通法(昭和35年法律第105号)第72条第1項前段:「交通事故があつたときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員……は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。」

つまり「接触した気がした」という段階で、まず停まって確認することが運転者の義務です。確認せずに走り去り、客観的に人身事故が発生していた場合には、救護義務違反(道路交通法第117条第2項)と報告義務違反(同法第119条第1項第17号)の対象となり得ます。なお、相手方と直接の接触がなくても、自車の進行が原因で歩行者や自転車が転倒し負傷した場面では、同様に救護義務違反の対象となり得ます。

事故の主原因が相手方(歩行者の飛び出し・信号無視等)にある場合であっても、停止して確認・救護・通報する義務は運転者に生じます。「自分は悪くない」という判断で立ち去ることは、過失割合の問題とは別に、救護義務違反として評価され得ます。

では「気づかなかった」と弁解すれば責任を免れるのかという点については、最高裁判所が次のように判断しています。

【判例】最高裁判所第三小法廷 昭和47年3月28日決定(刑集26巻2号218頁、事件番号:昭和45年(あ)第2031号)「道路交通法一一七条の罪の成立に必要な事実の認識は、必ずしも確定的な認識であることを要せず、未必的な認識でも足りる。」

「人にぶつかったかもしれない」という程度の認識があったと客観的証拠(衝撃の強さ、現場状況、ブレーキを踏んだ形跡、一度停車した様子など)から認定されれば、救護義務違反に問われる場面があります。本当に事故に気づいていなかったかどうかは、ドライブレコーダー・防犯カメラ映像・目撃証言などから総合的に判断されます。

Qこのまま黙っているのはいいのでしょうか?何もないのでしょうか。
A
そうとは限りません。人身事故でも物損事故でも、相手があることですので、警察が事故の存在を察知すれば、直ちに連絡がなくても既に捜査を始めていることは事実としてあり得ます。
近年は個人車両へのドライブレコーダー搭載、コンビニ・マンション・集合住宅への防犯カメラ設置が進んでおり、生活道路であっても事故当時の車両が特定される経路は増えています。また現場に車両の塗装片やバンパーの一部が残った場合、車種の特定に繋がることもあります。車を修理に出した場合などには、警察は周辺の車の修理会社などに、現場に落ちていた部品と同じ部品について修理している車はないかなどの照会調査を行うことがあります。

事故直後に「相手は大丈夫そうだった」と思って立ち去った場合でも、被害者が後日痛みを訴えたり、家族と相談したりして、人身事故として届け出るケースは少なくありません。

ドライブレコーダーのデータの削除、車両損傷の独自修理など、事故の痕跡を消す行為は、その後の刑事手続において加害者側に不利な事情として評価され得ます。
Q自分から出頭したらその場で逮捕されますか?会社に連絡は行きますか?
A
出頭した全員がその場で逮捕されるわけではありません。逮捕するかどうかは、逃亡や罪証隠滅のおそれといった要件(刑事訴訟法199条)を踏まえて判断され、在宅のまま捜査が進むケースもあります。職場への連絡は捜査上必要性がある場合に行われることがあります。

逮捕されるかどうかは、事故の被害の程度(軽傷か重傷か、死亡事故か)、運転者の事故後の対応(自ら出頭したか、逃走を続けていたか)、住居が定まっているか、職業が定まっているか、証拠隠滅のおそれがあるか、といった事情を踏まえて判断されます。軽傷事故で本人が自発的に出頭し、住居・家族関係が安定しているケースでは在宅捜査となる場合もあります。

職場への連絡については、捜査機関が事実関係の確認のため勤務先を通じて連絡する必要性を判断する場合がありますが、必ずしも連絡があるとは限りません。本人が在宅で任意捜査に応じているケースでは、勤務先に知られないまま処分が終わることもあります。事故が重大な場合には新聞等で知られるケースも多いと言えます。

Q警察の取調べで何を話せばよいですか?供述調書に署名すべきですか?
A
取調べでは、自分の記憶にある事実のみを話し、記憶が曖昧な部分を推測で埋めないことが重要です。供述調書は一度署名すると後の裁判で重要な証拠となるため、内容を慎重に確認したうえで署名する必要があります。日本国憲法第38条第1項で黙秘権が保障されています。

取調べで作成される供述調書は、捜査段階から公判に至るまで一貫した証拠として扱われます。刑事訴訟法第321条第1項第2号,3号により、検察官、警察官作成の供述調書は公判廷の証言と食い違った場合であっても、一定の要件のもとで証拠採用される場面があります。このため、事故直後の混乱した記憶のまま調書に署名すると、後の裁判で不利な立場に立たされる可能性があります。

【根拠】日本国憲法第38条第1項:「何人も、自己に不利益な供述を強要されない。」

取調べ前の段階で弁護士と供述方針を整理しておくことには、①事実関係の時系列を冷静に確認できる、②自分に有利な事情・不利な事情の両方を整理できる、③黙秘権行使の判断に専門的な助言を受けられる、といった実益があります。原則弁護士が取調べに立ち会うことはできませんが、取調べ前後のアドバイスを受けることは可能です。

Qこの後、罰金で済みますか?裁判になりますか?懲役はありますか?
A
処分の重さは被害の程度、加害者の態度、示談の成否などによって大きく異なります。令和7年6月1日施行の改正刑法により、従来の懲役・禁錮は「拘禁刑」に一本化されました。救護義務違反の法定刑は10年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です。

ひき逃げに関する主な法定刑は以下の表のとおりです。複数の罪が同時に成立する場合、刑法第47条により併合罪として処理され、最も重い罪の刑期の1.5倍が上限となります。

罪名 法定刑 根拠条文
救護義務違反(運転に起因する人身事故) 10年以下の拘禁刑
または100万円以下の罰金
道路交通法第117条第2項
救護義務違反(運転に起因しない場合) 5年以下の拘禁刑
または50万円以下の罰金
道路交通法第117条第1項
報告義務違反 3か月以下の拘禁刑
または5万円以下の罰金
道路交通法第119条第1項第17号
過失運転致死傷罪 7年以下の拘禁刑
または100万円以下の罰金
自動車運転死傷行為処罰法第5条
実務上の傾向として、ひき逃げ事案は道路交通法違反の中でも起訴率が比較的高い部類に入るとされています。他方、事故態様が軽微で、被害者との示談が成立しているケースでは略式起訴(罰金)や不起訴で終わる場合もあります。示談の成否は検察官の処分決定や裁判所の量刑判断において重要な考慮事情の一つです。

刑事手続全体の流れと、どの段階で弁護士に依頼する意味があるかについては、詳しくは「過失運転致傷・ひき逃げで弁護士に依頼する意味——示談・取調べ対応・公判弁護の中身」をご覧ください。

 飲酒運転や無免許運転が伴う事案、被害者が重傷を負った事案、被害者が死亡した事案では、刑事処分は大幅に重くなります。また危険運転致死傷罪(自動車運転死傷行為処罰法第2条・第3条)が成立する場面では、更に重い法定刑が適用されます。
守谷・つくばみらいエリアの交通事情について

つくばエクスプレス(TX)沿線の守谷市・つくばみらい市は、2005年の開業以降に住宅地として急速に開発された地域で、新興住宅街と旧来の生活道路が混在しています。夜間の街灯が限定的な区間もあり、歩行者・自転車の発見が遅れる場面があります。またTX通勤世帯が多いため、早朝・深夜の通勤時間帯に生活道路を通過する車両が少なくありません。こうした環境下で接触事故が発生した場合、運転者が事故に気づかずに通過したと主張しても、近隣住宅・コンビニエンスストア等に設置された防犯カメラ映像から車両が特定される事案が実務上増えています。

接触の記憶があいまいなまま時間が経っているご状況でも、事案の詳細をお聞きしたうえで、現時点で取り得る選択肢をご説明します。初回相談は面談またはZOOMで承ります(電話での初回相談は対応しておりません)。

弁護士 吉津和輝
茨城県弁護士会所属
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対応エリア

守谷市・取手市・常総市・つくばみらい市・龍ケ崎市・牛久市・つくば市・土浦市・野田市・我孫子市・柏市をはじめ、茨城県南部・千葉県北西部の交通刑事事件のご相談に対応しています。

更新履歴

2026年4月25日:記事公開

本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別事案への法的アドバイスではありません。具体的なご相談は弁護士にお問い合わせください。なお、本記事の内容は2026年(令和8年)4月時点の情報に基づいています。法律・実務の取り扱いは今後変更される可能性があります。
公開日:2026年4月25日|最終更新日:2026年4月25日