従業員の横領・犯罪が発覚したら 会社はどう動くべきか
従業員の横領・犯罪が発覚したら
会社はどう動くべきか
「経理担当者が会社のお金を使い込んでいたらしい」「営業が売上金を横領していた」「レジから現金がなくなっていた。」——こうした相談は、従業員が数名規模の中小企業や個人事業主からも少なくありません。守谷・取手・常総市など茨城南部の事業者からも、こうした相談が寄せられることがあります。発覚後の初動を誤ると、証拠が消えたり、法的手続きで不利になったりすることがあります。この記事では、会社(使用者側)がとるべき対応の流れを解説します。
最初にすべきことは証拠の確保と保全です。問題の従業員を呼んで問い詰める前に、以下の資料を手元に集めてください。
- 通帳・入出金明細(コピーまたは電子保存)
- 領収書・経費精算書・伝票類
- 監視カメラ映像(上書きされる前に保存)
- 勤怠記録・メール・チャット履歴
先に本人を問い詰めてしまうと、証拠を隠滅されたり、退職して連絡が取れなくなったりするリスクがあります。
横領・犯罪行為を理由とする懲戒解雇が認められる場合があります。ただし、いくつかの前提条件があります。
まず、就業規則に懲戒解雇事由として横領や犯罪行為に関する規定があることが重要です。また、解雇は「客観的に合理的な理由」があり「社会通念上相当」と認められる必要があります。
被害を受けた会社(代表者)は、犯罪被害者として告訴することができます。
業務上横領だと思っても、従業員の行為がどの罪に当たるかは、行為の態様によって異なります。例えば従業員の行為が、業務上横領罪・窃盗罪・詐欺罪などの複数の罪に該当する場合もあります。
民事上の損害賠償請求を行うことができます。不法行為に基づく損害賠償(民法709条)として、横領・犯罪行為によって生じた損害の賠償を求めることができます。
ただし、損害賠償請求権があることと、実際に回収できることは別問題です。横領を繰り返していた従業員が手元に財産を残していることは多くなく、資力がない場合は一括回収が難しいのが実情です。
回収方法は相手方の資力・財産状況によって変わります。主な選択肢は以下のとおりですが、どれが現実的かは個別の状況次第です。
- 示談による分割払い合意:資力がない場合は現実的な選択肢。返済額・期限・不払い時の扱いを合意書に明記する。
- 訴訟による損害賠償請求:判決を得ても相手に財産がなければ回収は困難。
- 仮差押えによる財産保全:相手方に財産がある場合、訴訟前に差し押さえることで回収の実効性を確保できる場合がある。
刑事告訴・被害届を提出すると、捜査機関から会社の経理書類や帳簿の提出を求められたり、関係者が事情聴取を受けたりすることがあります。社内の管理体制についても捜査の過程で明らかになる場合があります。
また、刑事手続きと民事上の損害賠償請求は別の手続きです。刑事事件で有罪判決が出ても、自動的に損害が回収されるわけではありません。民事訴訟や示談交渉を並行して進める必要があります。
「従業員だし穏便に済ませたい」「金額が少ないから…」と感じる経営者の方は多いです。
ただ、弁護士に相談すること自体が「告訴しなければならない」ということにはなりません。相談の目的は、選択肢を整理し、どの対応が自社にとって現実的かを判断することです。
特に、示談書の作成は慎重に行う必要があります。不適切な内容の示談書を締結してしまうと、後から追加の請求や対応が難しくなる場合があります。早い段階での相談が、対応の幅を広げることにつながります。
会社が一方的に賃金から控除(天引き)することは、労働基準法24条(全額払い原則)に違反する可能性があります。会社側が「横領したんだから当然だ」と感じても、法律上は別の問題として扱われます。
賃金から控除するためには、従業員が自らの自由な意思で同意した書面(合意書)が必要です。この合意書を作成する際の注意点は以下のとおりです。
- 返済総額・返済方法(毎月いくら控除するか)を明確にする
- 「懲戒解雇にする」などと告げて署名させた場合、後から「強制された」として無効を主張される可能性がある
- 控除額が賃金の大部分を占める場合、実質的な強制とみなされるリスクがある
この質問は、実際に起こりやすい場面です。会社から相談を受けた後に、当該従業員から「自分の弁護もお願いしたい」と連絡が来ることがあります。
結論から言うと、同一事件で会社側(被害者)からすでに相談・依頼を受けている弁護士が、加害者である従業員側を弁護することはできません。これは弁護士倫理(弁護士職務基本規程)上の利益相反にあたります。
横領・犯罪が疑われる従業員の方が弁護士に依頼する場合は、会社側とは別の、利害関係のない弁護士に相談する必要があります。逮捕・勾留された場合は、資力によっては国選弁護人の選任を請求することもできます。
従業員の横領・犯罪行為への対応は、証拠の状況・被害額・相手方の資力・会社の方針によって、最適な手順が異なります。「まず何をすべきか」という段階からお気軽にご相談ください。状況をお聞きした上でご説明します。
📞 050-3623-1320
守谷市・取手市・常総市・つくばみらい市・龍ケ崎市・牛久市・つくば市・土浦市・野田市・我孫子市・北柏をはじめ、茨城県南部・千葉県北西部の方からの従業員横領・企業内犯罪に関するご相談もお受けしています。弁護士 吉津和輝(茨城県弁護士会所属)までお気軽にどうぞ。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別事案への法的アドバイスではありません。具体的なご相談は弁護士にお問い合わせください。なお、本記事の内容は令和7年(2025年)4月時点の情報に基づいています。法律・実務の取り扱いは今後変更される可能性があります。
