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不法就労助長罪|茨城で外国人を雇う会社・農業法人が知っておきたい

企業法務・外国人雇用

茨城で外国人を雇う会社・農業法人が知っておきたい不法就労助長罪
— 在留カード確認の実務と2027年4月の厳罰化 —

「知らなかった」だけでは免責されない外国人雇用のルール
弁護士 吉津和輝 / 茨城県弁護士会所属
弁護士 吉津和輝(よしつ かずき)
茨城県弁護士会所属(登録番号57714)/2018年12月弁護士登録
主な取扱分野:企業法務・労働問題(使用者側)・刑事弁護
茨城県南・県西で外国人を雇用する経営者・人事担当者の方へ。茨城県内で働く外国人労働者は67,500人(令和7年10月末時点・全国10位)に達し、守谷市・常総市・坂東市・つくばみらい市の4市(ハローワーク常総管内)だけで9,394人が働いています。外国人雇用が日常になった一方で、在留資格の確認を怠ると、故意がなくても「不法就労助長罪」に問われることがあります。2024年に公布された改正入管法により、2027年4月1日から罰則は「5年以下の拘禁刑・500万円以下の罰金」に引き上げられます。この地域の産業実態に即して、確認すべきポイントを解説します。
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弁護士 吉津和輝(茨城県弁護士会所属)/〒302-0128 茨城県守谷市けやき台3-28-7
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Q1不法就労助長罪とはどのような犯罪ですか?
結論:不法就労助長罪とは、事業活動に関して外国人に不法就労をさせたり、不法就労をあっせんしたりする行為を処罰する犯罪です(出入国管理及び難民認定法第73条の2)。雇った側・働かせた側が処罰の対象になります。

具体的には、次の3類型が処罰対象です。

① 不法就労させる行為 事業活動に関し、在留資格のない外国人や就労が認められていない外国人を雇用・就労させること
② 支配下に置く行為 不法就労させる目的で外国人を自己の支配下に置くこと(宿舎の提供とパスポートの預かり等が組み合わさる場合を含む)
③ あっせん行為 業として、外国人に不法就労させる行為またはこれに関するあっせんをすること(ブローカー・派遣事業者等)
【根拠】出入国管理及び難民認定法(昭和26年政令第319号)第73条の2第1項:「次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の拘禁刑若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。一 事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた者 二 外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置いた者 三 業として、外国人に不法就労活動をさせる行為又は前号の行為に関しあつせんした者」
Q2在留資格を確認せずに雇った場合、「知らなかった」で免責されますか?
結論:不法就労であることを知らなかったというだけでは免責されません。在留カードを確認しなかった等の過失がある場合には処罰の対象となり得ます(入管法第73条の2第2項)。免責されるのは「過失のないとき」に限られます。

注意義務を尽くしたとは言い難いと評価され得る例としては、次のようなものが考えられます。

・在留カードやパスポートを確認せずに採用した
・留学生のアルバイトについて、資格外活動許可の有無を確認しなかった
・在留資格の「名称」だけを見て、就労できる業務内容・時間の範囲まで確認しなかった
・在留カードは見たが、有効期限が切れていることを見落とした

逆に、過失がないことを示すには、①在留カードの原本を確認し、②出入国在留管理庁が無料で提供する「在留カード等読取アプリケーション」や「在留カード等番号失効情報照会」で真偽・失効の有無を確認し、③確認した日時・担当者・書類を記録に残しておくことが実務上重要です。採用時に一度確認して終わりではなく、雇用継続中の期限管理まで含めて「確認の仕組み」を作っておくことが、会社を守ることにつながります。

【根拠】出入国管理及び難民認定法第73条の2第2項:「前項各号に該当する行為をした者は、次の各号のいずれかに該当することを知らないことを理由として、同項の規定による処罰を免れることができない。ただし、過失のないときは、この限りでない。」
Q3罰則はどのくらいですか?2027年4月からどう変わりますか?
結論:現行の法定刑は「3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその併科」ですが、改正入管法(令和6年法律第60号)により、2027年(令和9年)4月1日から「5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金、またはその併科」に引き上げられます。
刑罰の内容 改正前(現行) 改正後(2027年4月1日〜)
拘禁刑の上限 3年以下 5年以下
罰金刑の上限 300万円以下 500万円以下
拘禁刑と罰金刑の併科 可能 可能

この改正は2024年(令和6年)6月21日に公布され、施行日を定める政令が2025年(令和7年)に公布されて、施行日は2027年(令和9年)4月1日に確定しています(技能実習制度を引き継ぐ「育成就労制度」の創設と同じ施行日です)。法定刑の上限引上げにより、従前より重い処分が選択される場面が出てくる可能性があります。

⚠️ 両罰規定(入管法第76条の2)により、実際に違反行為をした従業員・担当者個人だけでなく、その法人(会社)にも罰金刑が科され得ます。また、刑事処分とは別に、技能実習・特定技能(2027年4月1日以降は育成就労・特定技能)の外国人の受入れができなくなる等の不利益や、取引先・金融機関との関係への影響が生じる場面もあります。
Q4茨城県南の現場で起こりやすい「うっかり不法就労」にはどんなものがありますか?
結論:茨城県南・県西は農業と食品・金属などの製造業に外国人雇用が集中しており、「悪意はないのに範囲を超えていた」型の不法就労が生じやすい産業構造です。在留資格の名称だけでなく、認められた業務内容・就労時間まで確認する必要があります。

茨城県の産業別データでは、外国人労働者の35.6%が製造業(うち食料品製造業が最多)、18.1%が農業・林業で働いており、外国人を雇用する事業所の70.8%は従業員30人未満の中小規模です(令和7年10月末・茨城労働局)。この構造を前提に、実務で起こりやすい類型を挙げます。

農業法人・食品工場:計画外の業務 技能実習生(2027年4月以降は育成就労外国人)に、実習計画・育成就労計画にない業務や別の作業場での作業をさせる
飲食店・小売:留学生バイトの時間超過 資格外活動許可の範囲(週28時間以内。留学生は在籍する教育機関の学則で定める長期休業期間中に限り1日8時間以内)を超えて働かせる。掛け持ち先の労働時間と合算して判断される点にも注意
事務所・工場:在留資格の範囲外の業務 「技術・人文知識・国際業務」で通訳・設計等として採用した外国人に、許可された業務と無関係なライン作業・単純作業を続けさせる
派遣・請負の受入れ:確認を派遣元任せ 派遣・請負で外国人を受け入れる場合に、在留資格の確認を派遣元・請負元に任せきりにする。茨城県では派遣・請負事業所で働く外国人が全体の15.3%を占めており、受入れ側(就労させた側)も不法就労助長罪に問われ得ます
オーバーステイの見落とし 採用時は適法だったが、在留期間の更新を確認しないまま雇用を続け、期限切れ(不法残留)の状態で働かせてしまう
【補足】資格外活動許可の就労時間の上限は、出入国管理及び難民認定法施行規則(昭和56年法務省令第54号)第19条第5項第1号で「一週について二十八時間以内(留学の在留資格をもつて在留する者については、在籍する教育機関が学則で定める長期休業期間にあるときは、一日について八時間以内)」と定められています。長期休業期間中の上限は「週40時間」ではなく「1日8時間以内」です。
Q5捜索や逮捕があった場合、会社はどうなりますか?何をすべきですか?
結論:不法就労助長罪の捜査は、警察・出入国在留管理庁による事業所の捜索差押えから始まることが多く、経営者や担当者が逮捕された場合は最大23日間の身体拘束があり得ます。会社としては、捜索への冷静な対応と、できる限り早い段階での弁護士への相談が重要です。

逮捕された場合の時間の流れは法律で決まっています。逮捕から原則48時間以内に検察官へ送致され(刑事訴訟法第203条)、検察官は送致から24時間以内(逮捕から通算72時間以内)に勾留を請求するかを判断します(同法第205条)。勾留が認められると原則10日間、延長でさらに最大10日間、合計で最大20日間の身体拘束が続くことがあります(同法第208条)。その後、起訴されれば刑事裁判となります。

中小企業では、経営者本人が仕入れ・支払・シフトの決裁を握っていることが多く、経営者の身体拘束はそのまま事業の停止に直結しかねません。だからこそ、逮捕前の任意の取調べや捜索の段階から弁護士に相談し、①捜索差押えの際に令状の記載と押収品目録を確認する、②取調べにどう対応するかの方針を決める、③身体拘束に至った場合には早期釈放(勾留阻止・準抗告等)に向けた活動を行う、④並行して社内の確認体制を是正する、という対応を組み立てることが大切です。当職は刑事弁護と企業法務の双方の取扱経験があり、この種の事案では両面からの対応が必要になると考えています。

⚠️ 法人・個人事業主の場合、担当者個人への刑事処分に加えて、法人への両罰規定(入管法第76条の2)の適用や、外国人受入れに関する不利益処分が同時に問題となる場面があります。捜査が始まってからでは打てる手が限られるため、平時の確認体制づくり(Q6)が最大の防御になります。
Q6企業として日頃からどのような確認体制をとればよいですか?
結論:「採用時に在留カードの表と裏を確認し、真偽を公式アプリで確かめ、雇用中も期限と時間を管理し、すべて記録に残す」という一連の流れを社内の仕組みにしておくことが、過失がないことを示す最も確実な方法です。

在留カード表面の「就労制限の有無」欄を確認する:「就労制限なし」であれば就労内容に制限はありません。「就労不可」の場合は原則雇用できませんが、裏面も確認します。
在留カード裏面の「資格外活動許可」欄を確認する:「就労不可」の方でも、裏面に許可の記載があれば一定範囲(原則週28時間以内)で就労できます。
在留カードの真偽・失効を確認する:出入国在留管理庁提供の「在留カード等読取アプリケーション」「在留カード等番号失効情報照会」(いずれも無料)を活用します。
資格外活動の就労時間を管理する:週28時間以内(留学生の長期休業期間中は1日8時間以内)を、シフト表・タイムカードで管理します。掛け持ちがある場合は本人申告を含めて合算で把握します。
在留期限を定期確認する:雇用継続中も、期限の3か月前を目安にリマインドが飛ぶ仕組みを作ります。
仮放免中の方の雇用に注意する:仮放免は在留の許可ではなく、原則として就労できません。仮放免許可書に就労を認めない条件が付されている場合は雇用できません。
確認の記録を残す:確認した日時・担当者・確認書類(在留カードの両面コピー等)を保管します。

あわせて、外国人労働者を雇い入れたとき・離職したときは、ハローワークへの届出(外国人雇用状況の届出)が全事業主の義務です。届出をせず、または虚偽の届出をした場合は30万円以下の罰金の対象となります。

【根拠】労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和41年法律第132号)第28条第1項(届出義務)、第40条第1項第2号(30万円以下の罰金)
茨城県南・県西の外国人雇用の実情

茨城労働局の公表資料(令和7年10月末時点)によると、県内の外国人労働者は67,500人(前年比9.0%増)・外国人を雇用する事業所は10,156か所で、いずれも全国10位・過去最高です。守谷市・常総市・坂東市・つくばみらい市を管轄するハローワーク常総管内では9,394人(県全体の13.9%)が働き、その54.7%が製造業に集中しています。取手市・龍ケ崎市・牛久市などを含むハローワーク龍ケ崎管内も6,155人と規模が大きく、国籍別ではインドネシアの方が前年比23.8%増と急増しています。TX・常磐線沿線の中小企業や農業法人にとって、外国人雇用のコンプライアンスはすでに「一部の大企業の話」ではありません。なお、この地域で刑事事件となった場合の第一審は、事案や所在地に応じて水戸地方裁判所の龍ケ崎支部(守谷市・取手市等)、下妻支部(常総市・坂東市等)、土浦支部(つくばみらい市・つくば市等)などに分かれます。

おわりに

「外国人従業員の在留資格に不安な点が見つかった」「捜査機関から連絡があった」「外国人雇用の確認体制を整備したい」という段階ごとに、取るべき対応は異なります。特に捜査が関係する場面では時間の制約が大きいため、早めのご相談をおすすめします。初回相談で状況の整理と対応方針をご説明します。

弁護士 吉津和輝
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参考資料・情報源

出入国管理及び難民認定法(e-Gov法令検索)
e-Gov法令検索(デジタル庁)(出入国管理及び難民認定法施行規則・労働施策総合推進法の条文確認)
茨城県の外国人雇用届出状況(令和7年10月末時点・茨城労働局)
出入国在留管理庁ウェブサイト(在留カード等読取アプリケーション・在留カード等番号失効情報照会)

更新履歴

2026年4月7日:公開
2026年7月6日:全面改稿(茨城県の外国人雇用データ〔令和7年10月末・茨城労働局〕を追加、e-Govで全条文を再確認、留学生の長期休業期間中の就労時間上限を「1日8時間以内」に訂正、摘発後の刑事手続の解説を拡充)

本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別事案への法的アドバイスではありません。具体的なご相談は弁護士にお問い合わせください。なお、本記事の内容は2026年(令和8年)7月時点の情報に基づいています。入管法その他の法令の規定は今後変更される可能性があります。
公開日:2026年4月7日|最終更新日:2026年7月6日