婚姻費用の始期はいつ?LINEでの請求が認められる場合はあるのか?・弁護士吉津和輝

離婚・男女問題

婚姻費用の始期はいつ?LINEでの請求が認められる場合はあるのか?

弁護士 吉津和輝(茨城県弁護士会所属)市川法律事務所に所属する弁護士です。

別居してから婚姻費用(生活費)の調停を申し立てるまでの間、請求の意思表示をしていなかったために遡って支払を受けられなかったというケースがあります。LINEやSNSでの請求が婚姻費用の始期として認められる場合があることを解説します。

Q婚姻費用とは何ですか?
A
婚姻費用とは、夫婦が婚姻生活を維持するために必要な一切の費用をいいます。具体的には、食費・住居費・光熱費などの生活費のほか、子どもの養育費・教育費・医療費なども含まれます。

夫婦は互いに資産・収入に応じて婚姻費用を分担する義務を負っています(民法第760条)。別居中であっても法律上の婚姻関係が続く限りこの義務は継続するため、収入の少ない方は収入の多い方に対して婚姻費用の支払を請求することができます。
【根拠】民法(明治29年法律第89号)第760条:「夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。」
Q婚姻費用はいつの時点から支払ってもらえますか?
A
家庭裁判所の調停・審判の実務では、原則として申立てがあった時点からの婚姻費用が認められます。別居を開始した時点まで遡って請求することは、原則として認められていません。

この理由として、権利者が請求を後回しにした結果、義務者が過去に遡った未払分を一度に支払うよう求められるのは不意打ちとなり酷であること、請求がなかった間は権利者に他の生活資金があった可能性が推測されること等が指摘されています。

なお、別居から申立てまでの間に支払われなかった婚姻費用については、離婚時の財産分与において考慮できるものとされています(最判昭53・11・14民集32・8・1529)。
【根拠】民法第760条(婚姻費用の分担義務)。始期については家事審判実務の取扱いによる。
Q調停を申し立てる前にLINEやSNSで請求していた場合、その時点から認められますか?
A
調停申立前であっても、LINEやSNS・内容証明郵便等により請求の意思を明確に表示していた場合は、その時点を始期として認める例があります(東京家審平27・8・13判タ1431・248、さいたま家審令元・7・5(平31(家)30108))。

ただし、LINEでの請求については、その内容や文言によっては婚姻費用の請求としての意思が明確とはいえず、始期として認められない可能性があります。特に、「生活費を送ってほしい」「お金がない」といった抽象的な表現にとどまる場合には、婚姻費用の分担を求める法的請求として評価されにくいことがあります。そのため、始期を確実に主張するためには、婚姻費用の支払いを求める旨を明確に伝えることが重要です。
QLINEで請求した後、どうすればよいですか?
A
LINEやSNSで請求した場合でも、速やかに家庭裁判所への婚姻費用分担請求調停の申立てを行うことをお勧めします。LINEのみによる請求で遡及が認められるかどうかは事案によって異なるため、最も確実な請求方法である調停申立によって始期を確定させることが重要です。
LINEやSNSのトーク履歴は、端末の機種変更・アプリの再インストール・アカウント削除等によって失われることがあります。重要なやり取りはスクリーンショットを撮影して別途保存しておくことをお勧めします。
Q婚姻費用の調停はどこに申し立てますか?
A
婚姻費用分担請求調停は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所、または当事者が合意で定める家庭裁判所に申し立てます。

申立てに必要な主な書類は以下のとおりです。
  • 婚姻費用分担請求調停申立書(裁判所の公式サイトからダウンロード可)
  • 申立人・相手方の戸籍謄本
  • 申立人の収入を証明する資料(源泉徴収票・確定申告書・給与明細等)
  • 子どもの学費等の資料(必要に応じて)
申立費用は収入印紙1,200円と郵便切手代です。調停が不成立になった場合は自動的に審判手続に移行し、裁判官が婚姻費用の金額を決定します。
婚姻費用の金額は、夫婦双方の収入・子どもの人数と年齢を基に、裁判所が公表している「婚姻費用算定表」を参考に決められることが多いです。算定表は裁判所公式サイト(courts.go.jp)で公開されています。
Q有責配偶者(不倫した側)でも婚姻費用を請求できますか?
A
原則として、有責配偶者であっても婚姻費用の請求は認められます。婚姻費用分担義務は婚姻関係が継続する限り生じるものであり、有責性のみを理由として当然に免除されるものではありません。もっとも、別居に至った経緯や有責性の内容・程度によっては、権利濫用として請求が制限または否定される場合もあります。

「別居したが婚姻費用をいつから請求できるかわからない」「LINEで請求したが認められるか不安」「婚姻費用の調停申立を依頼したい」など、婚姻費用・離婚に関するご相談はお気軽にどうぞ。状況をお聞きした上でご説明します。

弁護士 吉津和輝
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本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別事案への法的アドバイスではありません。具体的なご相談は弁護士にお問い合わせください。