不貞行為の証拠収集で払った探偵費用は請求できるか 相当因果関係の考え方と裁判例の傾向・弁護士吉津和輝
不貞行為の証拠収集で払った探偵費用は請求できるか
相当因果関係の考え方と裁判例の傾向
配偶者の不貞行為(いわゆる不倫)を疑い、探偵や興信所に調査を依頼した場合、その費用は相手方に請求できるのでしょうか。裁判例では判断が分かれており、必ず認められるとは限りません。費用を支出する前に知っておくべき法律上のポイントを解説します。
慰謝料として請求できる金額は、婚姻期間・不貞の継続期間・不貞行為の頻度・婚姻関係への影響(離婚に至ったかどうか等)などを総合考慮して決まります。裁判例上の相場は数十万円から300万円程度とされることが多いですが、不貞期間が著しく長い・不貞相手との間に子が生まれた等、特別に悪質な事情がある場合には300万円を超え500万円程度に至る裁判例も存在します。個別の事案によって大きく異なります。
相当因果関係とは、「その不法行為がなければ通常は発生しない損害であり、かつ不法行為者にとって予見可能な損害であること」を意味します(民法416条の類推適用)。探偵費用については、この相当因果関係の有無と範囲をめぐって裁判例の判断が分かれており、全額が認められるケースは少なく、一部のみ認容、または全額否定という判断も多数存在します。
| 認められる方向 |
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| 認められにくい方向 |
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実際に支出した費用が100万円超であっても、「調査として必要かつ相当な範囲」として10万円を認容した例があります(東京地裁平成28年10月27日)。
調査なしでは不貞の立証が不可能であり、費用も不相当に高額ではないと認められた場合に全額を認容した例があります(東京地裁平成28年11月30日 等)。
「配偶者に不貞の疑いが生じた場合に直ちに調査会社を利用することが一般的とまでは認められない」として、調査費用を不貞行為から通常生ずべき損害とは認めないとした東京高裁令和6年1月17日判決があります。この判決は調査費用の相当因果関係を広く否定する方向性を示したものとして注目されています。
- 現在の手持ち証拠を確認する:スマートフォンのメッセージ・SNS・クレジットカードの明細・ホテルの領収書等、手元にある資料を整理してください。既に十分な証拠がある場合、追加の調査費用が損害として認められる可能性は低くなります。
- 弁護士に相談した上で調査を検討する:調査の必要性・相当性の判断は、後に費用が損害として認められるかどうかに直結します。調査前に弁護士に相談し、証拠として何が必要かを確認することをお勧めします。
- 調査範囲を必要最小限に絞る:長期間・多数回の調査を繰り返すと費用が高額になる一方、裁判所に「必要性がない調査」と判断されるリスクが高まります。
- 調査会社の選定に注意する:探偵業者は探偵業法(平成18年法律第60号)に基づく届出が必要です。届出の有無や契約内容を事前に確認してください。
- 時効に注意する:不貞行為を理由とする損害賠償請求権は、損害および加害者を知った時から原則3年で時効により消滅します(民法第724条第1号)。
| 損害の種類 | 内容・留意点 |
|---|---|
| 慰謝料(精神的損害) | 不貞行為そのものによる精神的苦痛への賠償。婚姻期間・不貞の期間・内容等により算定されます。 |
| 離婚慰謝料 | 不貞行為の慰謝料とは区別されます。最高裁平成31年2月19日判決により、原則として不貞相手への請求は否定されています(配偶者本人への請求は別途検討できる場合があります)。 |
| 通院費・治療費 | 不貞行為による精神的苦痛でうつ病等になり、メンタルクリニック等への通院を余儀なくされた場合、相当因果関係が認められれば請求できることがあります。不貞行為との因果関係の立証が必要です。 |
| 弁護士費用 | 不法行為訴訟では、認容額の概ね10%が弁護士費用として損害に含まれることがあります。 |
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