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【「事故後、人が変わった」——高次脳機能障害を見逃さないために】

交通事故・損害賠償

「事故後、人が変わった」と感じたら
— 交通事故による高次脳機能障害の症状・後遺障害等級・家族ができること

目に見えない後遺障害を、正当に評価してもらうために
弁護士 吉津和輝 / 茨城県弁護士会所属
弁護士 吉津和輝(よしつ かずき)
茨城県弁護士会所属(登録番号57714)/2018年12月弁護士登録
主な取扱分野:交通事故・後遺障害・損害賠償・家族法
交通事故に遭ったご本人・ご家族の方へ。事故のあと「怒りっぽくなった」「物忘れが増えた」「人が変わったようだ」——そう感じることはありませんか。それは、脳の損傷による高次脳機能障害のサインかもしれません。本記事では、症状の見分け方、後遺障害等級(第1級〜第9級)と条文上の基準、慰謝料の目安、そして適切な認定を受けるためにご家族が今できることを、守谷市の弁護士が解説します。
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弁護士 吉津和輝(茨城県弁護士会所属)/〒302-0128 茨城県守谷市けやき台3-28-7
Q 交通事故のあと、家族が「人が変わった」ように感じます。高次脳機能障害の可能性はありますか?
A
結論として、事故のあとに性格・記憶力・注意力の変化が続いている場合、高次脳機能障害の可能性を疑い、早めに専門医の診察を受けることをお勧めします。

高次脳機能障害とは、交通事故などで頭部に強い衝撃を受けて脳が損傷した結果、記憶・注意・判断・感情のコントロールといった脳の高度な働きに障害が生じた状態のことです。次のような変化がないか、確認してみてください。

□ 新しいことを覚えられなくなった
□ 約束をよく忘れるようになった
□ すぐ怒る・興奮しやすくなった
□ 仕事や家事でミスが増えた
□ 段取りを立てて行動できなくなった
□ 周囲から「人が変わった」と言われる

骨折や打撲と違い、こうした変化は外見からは分かりません。しかも高次脳機能障害では、ご本人が自分の症状を自覚しにくい「病識の低下」という特徴があるため、最初に異変に気づくのはご家族や職場の方であることが少なくありません。

「気のせいかもしれない」で済ませず、変化に気づいた時点から記録を残しておくことが、その後の後遺障害等級認定に向けた大切な第一歩になります(記録の付け方はQ6で解説します)。

Q 高次脳機能障害には、どんな症状がありますか? なぜ見逃されやすいのですか?
A
結論として、症状は主に①記憶障害・②注意障害・③遂行機能障害・④社会的行動障害の4つに分類されます。外見から分からず、本人の自覚も乏しいため、事故から時間が経ってから気づかれるケースが多い障害です。

① 記憶障害——新しいことが覚えられない、以前の記憶が思い出せない、同じことを何度も聞く。

② 注意障害——気が散りやすい、疲れやすい、複数のことを同時にできない、単純なミスが増える。

③ 遂行機能障害——物事を計画・実行する力が低下する。段取りよく行動できない、話が回りくどくなる。

④ 社会的行動障害——感情のコントロールができなくなる。すぐ怒る、こだわりが強くなる、場の空気が読めなくなる。

頭部外傷には、脳挫傷や脳内出血のように損傷箇所が特定できるもののほか、びまん性軸索損傷のように脳全体に広がるタイプもあり、後者は画像上も分かりにくいことがあります。

見逃されやすい理由は主に3つあります。第一に、重い事故では事故直後は救命・治療が最優先となり、認知や行動の変化まで注意が向きにくいこと。第二に、外見上は健常な方と変わらないため、周囲が障害と結びつけて考えにくいこと。第三に、前述の「病識の低下」により、ご本人からの訴えが出にくいことです。

意識が回復した安堵感から、認知・行動の変化への気づきが遅れがちです。「退院できたから大丈夫」と考えず、事故前と比べた変化を意識的に観察することが重要です。
Q 高次脳機能障害は、後遺障害等級の何級に認定されますか?
A
結論として、高次脳機能障害では、介護を要する場合は自動車損害賠償保障法施行令の別表第一(第1級1号・第2級1号)、それ以外は別表第二(第3級3号・第5級2号・第7級4号・第9級10号)のいずれかの等級に認定される可能性があります。

後遺障害等級は、自動車損害賠償保障法施行令(昭和30年政令第286号)の別表で定められています。高次脳機能障害は「神経系統の機能又は精神」の障害として、症状の重さに応じて次のいずれかに該当し得ます。各等級の条文の文言と、自賠責保険の保険金額(限度額)は次のとおりです。

別表第一(介護を要する後遺障害)
第1級1号(保険金額4,000万円)
「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの」
目安:食事・入浴・排せつなど身の回りの動作全般に、常時、介護が必要な状態。
第2級1号(保険金額3,000万円)
「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの」
目安:一人での外出が難しく、日常生活の要所要所で介護・見守りが必要な状態。
別表第二(介護を要しない後遺障害)
第3級3号(保険金額2,219万円)
「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの」
目安:日常の動作は自力で行えるものの、記憶力・注意力等の著しい障害により、仕事に就くことが全くできないか著しく困難な状態。
第5級2号(保険金額1,574万円)
「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの」
目安:単純な繰り返し作業などに限れば働けるが、作業能力が著しく制限されている状態。計画の立案・実行ができない、転職を繰り返す等の形で現れることがあります。
第7級4号(保険金額1,051万円)
「神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの」
目安:一般就労は維持できるが、周囲と同等の作業ができない状態。職場での人間関係の摩擦、場違いな言動、計画的な行動の困難などの形で現れることがあります。
第9級10号(保険金額616万円)
「神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの」
目安:一般就労は維持できるが、作業効率や持続力に問題がある状態。仕事の覚えが悪くなった、物忘れやミスが増えた、イライラしやすくなった等の形で現れることがあります。
【根拠】自動車損害賠償保障法施行令(昭和30年政令第286号)別表第一・別表第二(e-Gov法令検索で確認)

なお、上記の等級に至らない比較的軽い症状の場合でも、別表第二の第12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」や第14級9号「局部に神経症状を残すもの」の認定が問題となる場合があります。どの等級に該当し得るかは、症状・検査結果・生活状況により個別の判断が必要です。

Q 慰謝料や賠償金は、どのくらいになりますか?
A
結論として、裁判基準(いわゆる赤い本の基準)による後遺障害慰謝料の目安は、第1級2,800万円・第2級2,370万円・第3級1,990万円・第5級1,400万円・第7級1,000万円・第9級690万円です。ただし、いずれもあくまで一応の目安であり、事案により増減します。

交通事故の慰謝料には、①自賠責基準、②任意保険会社の基準、③裁判(弁護士)基準の3つがあり、一般に「自賠責基準 < 任意保険基準 < 裁判基準」の順で金額が大きくなります。上記の目安は③の裁判基準(「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」=いわゆる赤い本)によるものです。

また、高次脳機能障害の賠償では、慰謝料以外の損害項目が大きな比重を占めます。等級に応じた労働能力の低下を前提とする逸失利益(事故がなければ得られたはずの収入)、別表第一の等級では将来介護費が問題となり、常時介護か随時介護かによって金額が大きく変わり得ます。介護の要否・程度は示談交渉で争いになりやすい部分であり、事故前後の生活状況を丁寧に立証することが重要です。

重度の後遺障害(第1級・第2級等)の場合には、ご本人の慰謝料とは別に、ご家族(近親者)固有の慰謝料が認められる場合もあります。

【根拠】民法(明治29年法律第89号)第709条「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」/同法第710条(財産以外の損害=慰謝料の賠償)(e-Gov法令検索で確認)
Q 仕事に影響が出ています。逸失利益(働けなくなった分の損害)は、どのように計算しますか?
A
結論として、後遺障害の逸失利益は、原則として「基礎収入 × 労働能力喪失率 × 就労可能期間に対応するライプニッツ係数」で計算します。労働能力喪失率の実務上の目安は、第1級〜第3級100%・第5級79%・第7級56%・第9級35%です。

逸失利益とは、後遺障害によって労働能力が低下し、事故がなければ将来得られたはずの収入を得られなくなったことによる損害のことです。各要素の考え方は次のとおりです。

① 基礎収入——原則として事故前の現実の収入(給与所得者であれば事故前年の年収など)を基礎とします。

② 労働能力喪失率——等級ごとの目安が、労働省労働基準局長通牒(昭和32年7月2日付け基発第551号)別表の労働能力喪失率表に定められており、国土交通省もこれを公表しています。高次脳機能障害で問題となる等級では、第1級〜第3級はいずれも100%、第5級79%、第7級56%、第9級35%(第12級は14%、第14級は5%)が一応の目安です。

③ 就労可能期間と中間利息控除——原則として症状固定時から67歳までを就労可能期間とし、将来の収入を一括で受け取ることによる利息分を、法定利率(令和2年4月1日以降に発生した事故については年3%)で差し引いて現在の価値に引き直します(ライプニッツ方式)。

【根拠】民法(明治29年法律第89号)第404条第2項「法定利率は、年三パーセントとする。」/第417条の2(中間利息控除)・第722条第1項(不法行為への準用)(e-Gov法令検索で確認)

ただし、労働能力喪失率表はあくまで一応の目安です。実際の裁判・交渉では、被害者の職業・年齢・症状の内容と、仕事にどのような支障が現実に生じているかを踏まえて判断されるため、表の数値から増減する場合があります。

高次脳機能障害では、外見上は働けているように見えても、ミスの増加・対人関係の摩擦・作業の持続力の低下といった形で就労への影響が現れます。「事故の前と比べて仕事のどこに支障が出ているか」を具体的に立証できるかどうかが、逸失利益の算定を左右します。

Q 適切な等級認定を受けるために、本人や家族が今すぐできることは何ですか?
A
結論として、①専門医の受診、②早期かつ経時的なMRI撮影、③意識障害の記録、④日常生活の変化の記録、⑤後遺障害診断書の内容確認——の5点が特に重要です。

① 専門医を受診する——脳神経外科・神経内科・リハビリテーション科など、頭部外傷や高次脳機能障害の診療に対応する診療科を受診してください。

② 早期かつ経時的にMRIを撮影する——脳挫傷痕・脳内出血・脳萎縮などの画像所見は、等級認定における重要な資料です。事故直後だけでなく、時間を置いた撮影で初めて分かる変化(脳萎縮の進行など)もあるため、医師と相談のうえ経時的な撮影を検討してください。

③ 意識障害の内容を記録し、医師に伝える——事故直後に意識障害(呼びかけに反応しない、事故前後の記憶がない等)があった場合、その内容・程度・継続時間は認定上重視されます。必ず医師に伝え、診療録・診断書に残してもらってください。

④ 日常生活の変化を記録する——事故前の様子を知るご家族が、「事故前はできていたが、今はできないこと」を具体的なエピソードとともに日付入りで記録してください。等級認定の際には、ご家族が作成する「日常生活状況報告」が重要な資料となります。復職している場合は職場での状況、就学中であれば学校での様子の記録も有力な資料になります。

⑤ 後遺障害診断書の内容を確認する——症状固定時に医師が作成する後遺障害診断書は、認定審査の中心的な資料です。診断書に記載されていない症状は、認定の場面では存在しないものとして扱われるおそれがあります。実際の症状が漏れなく反映されているか、提出前に確認することをお勧めします。

⚠️ 高次脳機能障害は外見から分かりにくいため、日常生活の支障が後遺障害診断書に十分反映されないまま申請され、症状の実態より低い等級にとどまってしまう場合があります。診断書の作成段階からの準備が大切です。
Q 後遺障害等級の認定手続は、どのように進みますか?
A
結論として、症状固定後に「事前認定」(加害者側任意保険会社経由)または「被害者請求」(被害者側から自賠責保険へ直接請求)のいずれかで申請します。高次脳機能障害が疑われる事案は、専門医を中心とする専門部会で審査される仕組みになっています。
1
症状固定
治療を続けても大きな改善が見込めない状態と医師が判断
2
認定申請
事前認定または被害者請求で診断書・画像・報告書等を提出
3
等級認定
結果に不服があれば異議申立ての制度もあります

自賠責保険では、高次脳機能障害に該当する可能性がある事案について、意識障害の推移や日常生活状況などの詳細な情報をもとに、専門医を中心とする審査会の高次脳機能障害専門部会が等級を審査する仕組み(高次脳機能障害認定システム)がとられています。その分、提出資料の質と量が結果を左右しやすい類型といえます。

被害者請求の方法をとると、どのような資料を提出するかを被害者側で検討・準備できるという特徴があります。どちらの方法が適しているかは事案によりますので、申請前の段階でご相談いただくことをお勧めします。

Q 子どもが交通事故で頭を打ちました。大人と違う注意点はありますか?
A
結論として、お子さんの場合は症状が「成長の個人差」や「思春期の変化」と区別されにくく、進級・進学で求められる能力が高度になって初めて障害が表面化することもあるため、学校生活の記録を残しておくことが特に重要です。

お子さんは、事故の時点では日常会話や簡単な学習に大きな支障がないように見えても、学年が上がって学習内容や集団生活で求められる能力が高度になるにつれ、学習のつまずきや友人関係のトラブルという形で症状が現れてくることがあります。周囲が「もともとの性格」「思春期のせい」と受け止めてしまうと、事故との結びつきに気づくのがさらに遅れがちです。

そのため、担任の先生に事故前後の様子の変化を報告書にまとめてもらうこと、通知表や成績の推移、連絡帳など、事故の前後で変化が分かる学校関係の資料を保存しておくことが、後の等級認定において有力な資料になります。

また、まだ働いていないお子さんの逸失利益は、将来の就労開始が見込まれる年齢から67歳までを対象に、統計上の平均賃金(賃金センサス)を基礎として算定するのが一般的です。具体的な算定方法は個別の事案により異なりますので、弁護士にご相談ください。

事故直後の意識障害が比較的軽い場合や、画像所見がはっきりしない場合でも、高次脳機能障害が残る可能性は指摘されています。「画像に異常がなかったから大丈夫」と自己判断せず、気になる変化があれば医師に伝え、記録に残してください。
Q 保険会社から示談金額の提示がありました。そのまま受け入れてよいですか?
A
結論として、示談に応じる前に、①認定された等級が症状の実態に見合っているか、②提示額がどの基準で算定されているか、の2点を確認することをお勧めします。

Q4のとおり、慰謝料の算定基準には3種類があり、提示額が裁判基準を下回っている場合には、交渉や訴訟により金額が変わる可能性があります。また、そもそも認定された等級が症状の実態より低い場合には、異議申立てにより等級自体を争う余地もあります。

一度示談が成立すると、原則としてやり直すことはできません。高次脳機能障害は賠償額が大きくなり得る類型であるだけに、示談書に署名する前の段階でのご相談をお勧めします。

当職は、守谷市を拠点に、茨城県南部・千葉県北西部の交通事故のご相談をお受けしています。守谷市で弁護士をお探しの方へのページもご覧ください。

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守谷市・取手市・つくばみらい市・常総市・坂東市など茨城県南部は、通勤・買い物・通院のいずれも自動車の利用が生活の前提となっている地域です。高次脳機能障害が残ると、記憶や注意の障害から運転を控える判断が必要になる場合があり、ご家族の送迎負担や、TX(つくばエクスプレス)・常磐線での都内通勤の継続の可否など、生活と仕事への影響が具体的な形で現れやすい実情があります。「事故の前はどこまで一人でできていたか」という生活の変化そのものが等級認定の資料になりますので、この地域特有の車中心の生活を含め、事故前後の変化を具体的に書き残しておくことが大切です。

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弁護士 吉津和輝
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参考資料・情報源

自動車損害賠償保障法施行令(昭和30年政令第286号)(e-Gov法令検索)
民法(明治29年法律第89号)(e-Gov法令検索)
労働能力喪失率表(国土交通省・労働省労働基準局長通牒 昭和32年7月2日基発第551号別表)
脳外傷による高次脳機能障害の後遺障害認定(損害保険料率算出機構)
・民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準(公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部)

更新履歴

2026年7月4日:Q&A形式に全面改訂。後遺障害等級の条文(自賠法施行令別表第一・第二)、自賠責保険金額、裁判基準の慰謝料の目安、逸失利益の計算方法(労働能力喪失率・中間利息控除)、認定手続(事前認定・被害者請求)、子どもの事故の注意点の解説を追加。
2026年3月29日:初版公開。

本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別事案への法的アドバイスではありません。具体的なご相談は弁護士にお問い合わせください。なお、本記事の内容は令和8年(2026年)7月時点の情報に基づいています。法律・実務の取り扱いは今後変更される可能性があります。
公開日:2026年3月29日|最終更新日:2026年7月4日