吉津和輝(登録番号57714 茨城県弁護士会所属) 市川法律事務所に所属する弁護士です。
目次
- こんな変化はありませんか?
- 高次脳機能障害とは
- 4つの症状
- なぜ見逃されやすいのか
- 後遺障害等級と症状の目安
- 被害者と家族が直面する3つの問題
- 適切な認定を受けるために今すぐできること
- まとめ
1. こんな変化はありませんか?
交通事故後にこんな変化はありませんか?
- 新しいことを覚えられなくなった
- 約束をよく忘れるようになった
- すぐ怒る、興奮しやすくなった
- 仕事でミスが増えた
- 「人が変わった」と言われるようになった
骨折や打撲と違い、こうした変化は目に見えません。本人も「気のせいかも」と思いがちで、家族や職場の人もなかなか気づきません。
しかしこれらは、交通事故による高次脳機能障害のサインである可能性があります。
2. 高次脳機能障害とは
交通事故などで頭部を強打し脳が損傷すると、記憶・判断・感情のコントロールといった人間特有の高度な脳の働きに障害が生じることがあります。これを高次脳機能障害といいます。
頭部外傷は、脳挫傷や脳内出血などの局在性のものと、脳震盪や軸索損傷などのびまん性のものに分類されます。
麻痺などの身体障害とは異なり、外見からはわかりにくいため、事故から時間が経った後に「何かおかしい」と気づくケースが非常に多いです。経験上、様々な症状を訴えられる方がいらっしゃいます。
3. 4つの症状
高次脳機能障害は、主に以下の4つの症状に分類されます。
① 記憶障害 新しいことが覚えられない、以前の記憶が思い出せない、同じことを何度も聞くなど。
② 注意障害 気が散りやすい、疲れやすい、複数のことを同時にできない、ミスが増えるなど。
③ 遂行機能障害 物事を計画・実行する能力が低下する。段取りよく行動できない、話が回りくどくなるなど。
④ 社会的行動障害 感情のコントロールができなくなる。すぐ怒る、暴力的になる、場の空気が読めなくなるなど。
4. なぜ見逃されやすいのか
本人が気づかない 認知能力の低下や性格の変化は、本人には自覚しにくいものです。「最近なんかおかしい」と感じるのは、むしろ家族や職場の人が先というケースが多いです。
事故直後は気づきにくい 脳に損傷を負うような重大事故では、事故直後は救命・治療が優先されます。意識が回復した安堵感もあり、認知・行動の変化に気づくのは事故からしばらく後になりがちです。
5. 後遺障害等級と症状の目安
高次脳機能障害の症状は人によって大きく異なります。
第9級10号——一般就労は維持できるが、作業効率や作業維持力に問題がある
- 仕事の覚えが悪くなった
- 記憶力が低下し物忘れが多くなった
- 簡単な失敗が多くなった
- イライラするようになった
第7級4号——一般就労は維持できるが、一般人と同等の作業ができない
- 職場で人間関係が上手くいかない
- 場違いな発言や行動で周囲を混乱させる
- 目的地に行けない、計画を立てられない
第5級2号——単純繰り返し作業に限定すれば就労可能。一般人に比較して作業能力が著しく制限されている
- 計画の立案や実行ができなくなった
- どこにも勤まらずすぐに退職する
- 同じことを何度もしつこく繰り返す
第3級3号——一般就労が全くできないか、困難なもの
- 外出を避け、ほとんど家にいる
- 近所への買い物にも監視が必要
- 感情の起伏が激しく大声で怒鳴ったり泣き叫ぶ
6. 被害者と家族が直面する3つの問題
① 病院で適切な診断と治療が受けられない 高次脳機能障害の診断には専門的な医学知識が必要です。外見的に健常者と同じに見えるため、症状を見逃すことがあります。最悪の場合、急性期を過ぎると治療を打ち切られ、リハビリも受けられないケースも見受けられます。医療機関選びは納得のいく解決を獲得するためのファーストステップです。
② 後遺障害の重さが正当に評価されない 医師が高次脳機能障害を十分理解していない場合、後遺障害診断書にその深刻さが明記されません。等級認定が低く見積もられ、損害賠償にも大きな影響を及ぼします。
③ 介護料が認められにくい 2級以下の高次脳機能障害の場合、加害者側は「随時介護で事足りる」と主張してくることがあります。しかし事故前後の変化や日常生活の困難さを丁寧に立証することで、「常時介護」が必要と認める判決も多数出ています。「随時」と「常時」では介護料に極めて大きな開きが出るため、諦めずに相談することが重要です。
7. 適切な認定を受けるために今すぐできること
早期に専門医を受診する 脳神経外科・神経科・リハビリテーション科などの専門医に診てもらうことが重要です。
早期かつ経時的なMRIを撮影する 事故後できるだけ早くMRIを撮影してください。
意識障害・記憶障害を記録する その内容・程度・継続時間を必ず医師に告げ、診断書に記載してもらってください。
日常生活報告書を作成する 家族など事故前の状況を知っている方が、事故前後の変化を詳細に記録することが後遺障害認定の重要な資料になります。職場に復帰している場合は職場での状況報告、就学中であれば学校の担任教師の報告書も重要な証拠になります。
後遺障害診断書を確認する 診断書に記載されていない内容は、認定の場面では「ない」ものとして扱われます。
8. まとめ
高次脳機能障害は、適切な対応をしなければ正当な後遺障害として認定されないリスクもあります。保険会社の提示額をそのまま受け入れる前に、一度弁護士に相談することをお勧めします。
本サイトの記事は一般的な情報提供を目的としており、個別事案への法的アドバイスではありません。具体的なご相談は弁護士にお問い合わせください。
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