【2026年改正】危険運転致死傷罪に「数値基準」
— 時速何キロ・飲酒どのくらいで対象になるのか
| Q | 危険運転致死傷罪と過失運転致死傷罪は、何が違うのですか? |
| A |
結論として、最も大きな違いは「法定刑の重さ」です。同じ死傷事故でも、どちらの罪で扱われるかで結論が大きく変わります。
危険運転致死傷罪とは、特に危険・悪質な運転によって人を死傷させた場合に成立する犯罪で、自動車運転死傷処罰法(正式名称:自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律)の第2条に定められています。人を死亡させた場合は1年以上の有期拘禁刑(上限は20年)、負傷させた場合は15年以下の拘禁刑です。 これに対して過失運転致死傷罪(同法第5条)は、運転上必要な注意を怠って人を死傷させた場合に成立し、法定刑は7年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です。両者には大きな差があります。 現行の第2条は、危険運転を次の8つの類型で定めています(要旨)。
図:危険運転致死傷罪(第2条)の8類型〔要旨〕
① アルコール・薬物の影響で正常な運転が困難な状態での走行
② 進行を制御することが困難な高速度での走行 ③ 進行を制御する技能がない状態での走行 ④ 人や車の通行を妨害する目的での著しい接近など(妨害運転) ⑤ 妨害目的で走行中の車の前方で停止する等の方法での運転 ⑥ 高速道路・自動車専用道路での妨害目的の停止等により他車を停止・徐行させる行為 ⑦ 赤信号などを殊更に無視して重大な交通の危険を生じさせる速度での運転 ⑧ 通行禁止道路を重大な交通の危険を生じさせる速度で進行する行為
【根拠】自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(平成25年法律第86号)第2条・第5条。条文の正確な文言はe-Gov法令検索でご確認いただけます。
なお、第2条の類型に当てはまらない場合でも、第3条は、アルコール・薬物の影響で「正常な運転に支障が生じるおそれがある状態」で運転して正常な運転が困難な状態に陥り人を死傷させた場合を、別途処罰の対象としています(死亡で15年以下、負傷で12年以下の拘禁刑)。今回の改正は、このうち①の飲酒・薬物型と②の高速度型に関わるものです。 |
| Q | 今回の改正で「数値基準」が導入されたと聞きました。何が変わるのですか? |
| A |
結論として、高速度と飲酒に明確な数値の基準が設けられ、その基準に違反した状態で死傷事故を起こすと、原則として危険運転致死傷罪の対象になります。
これまで危険運転の要件は「進行を制御することが困難な高速度」「正常な運転が困難な状態」という言葉で書かれており、どの程度なら当たるのかが必ずしも明確ではありませんでした。重大な事故でも、より刑の軽い過失運転致死傷罪として扱われる事案があるとの指摘があり、被害者やご遺族が要件の明確化を求めてきた経緯があります。 改正法(2026年6月25日成立)では、次の数値基準が設けられました。
飲酒の0.5ミリグラムは、報道によると、体重60キロの男性や50キロの女性が、ビール大瓶2本、または日本酒2〜3合を飲んだ状態にあたるとされています。あくまで目安であり、体質や条件によって個人差があります。
このほか、殊更にタイヤを滑らせたり浮かせたりするドリフト走行で死傷事故を起こした場合も、新たに同罪の対象に加えられました。あわせて道路交通法も改正され、酒酔い運転の要件にも呼気1リットルあたり0.5ミリグラム以上という数値基準が加えられています。 施行の時期について、改正法は公布から20日を経過した後に施行されるとされており、2026年7月中の施行が見込まれています。 |
| Q | 数値基準を下回っていれば、危険運転にはならないのですか? |
| A |
結論として、基準を下回っていても、対象になる場面があります。数値基準は「ここまでくれば原則として対象」という線であり、下回れば必ず安全という性質のものではありません。
改正法では、数値基準に加えて「重大な交通の危険を回避することが著しく困難な高速度」という要件も設けられました。これにより、数値の上では基準に届かない速度でも、状況によっては危険運転として扱われる余地が残されています。 法務省の国会答弁によると、基準値を時速10キロ下回る範囲内で、多くの児童が下校中だったり、路面が凍結していたりした場合は、対象になり得るとされています。つまり、同じ速度でも、その場の状況によって評価が変わり得るということです。 飲酒についても同様に、改正後も、基準を下回っていても、アルコールの影響で正常な運転が困難な状態にあったと判断されれば、現行の規定(第2条第1号・第3条)によって危険運転として扱われる可能性があります。
⚠️ 「基準に少し届かないから大丈夫」という考え方は危険です。数値はあくまで取り締まり・処罰を明確化するための一つの線であり、実際の事故では、速度・飲酒の程度に加えて、現場の状況が総合的に評価されます。安全運転を心がけることが何より大切です。
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| Q | 9月から生活道路の速度が変わると聞きました。守谷やつくばみらいの住宅街も関係しますか? |
| A |
結論として、関係します。2026年9月1日から、中央線などのない生活道路の法定速度が時速60キロから30キロに引き下げられ、守谷・つくばみらいのような住宅街の道路は影響を受けやすい地域です。
改正道路交通法施行令により、2026年9月1日から、生活道路における自動車の法定速度が時速60キロから30キロに引き下げられます。ここでいう生活道路とは、中央線や車両通行帯のない一般道路で、道幅5.5メートル未満が一つの目安とされています。これまでは「標識がなければ時速60キロまで」でしたが、9月以降は、道路標識がなくても時速30キロが上限になります。政府の広報によると、こうした道路は全国の道路のおよそ7割を占めるとされています。
【根拠】道路交通法施行令(昭和35年政令第270号)第11条の改正(2024年7月公布、2026年9月1日施行)。詳細は警察庁の案内をご確認ください。
守谷市・つくばみらい市は、つくばエクスプレスの開通後に宅地開発が進んだ地域で、ニュータウンや住宅街には、中央線のない生活道路が数多くあります。取手市や常総市の住宅地も同様です。日常の送り迎えや買い物で、こうした道路を通る場面は多いのではないでしょうか。 この点は危険運転致死傷罪とも関係します。9月以降、法定速度が時速30キロの生活道路で、時速80キロ以上(30キロ+50キロ超過)を出して死傷事故を起こすと、高速度型の危険運転致死傷罪が適用される可能性があります。住宅街の道路だからといって速度を出してよいわけではない、という点に注意が必要です。 |
| Q | 改正法が成立した今、いつ起きた事故から新しい基準が適用されるのですか? |
| A |
結論として、施行日以降に行われた運転(事故)に適用されます。施行日より前に起きた事故には、現行の規定が適用されます。
改正法の成立は2026年6月25日ですが、成立した日からすぐに新しい基準が使われるわけではありません。改正法は公布から20日を経過した後に施行されるとされており、2026年7月中の施行が見込まれています。新しい数値基準が適用されるのは、この施行日以降の運転です。 これは、刑罰を定める法律は、施行前にさかのぼって重く処罰してはならないという考え方(遡及処罰の禁止)によるものです。したがって、施行日より前に起きた事故については、改正前の規定に基づいて、危険運転に当たるかどうかが判断されます。すでに起きた事故についてご心配がある場合は、その事故がいつの時点のものかも含めて、弁護士にご確認いただくとよいでしょう。 |
| Q | 家族が交通事故の加害者・被害者になった場合、どう動けばよいですか? |
| A |
結論として、危険運転と過失運転のどちらに当たるかで結論が大きく変わるため、早い段階で弁護士に相談することが、加害者側・被害者側のいずれにとっても重要です。
加害者側の方へ。事故の状況によっては、過失運転か危険運転かが大きな争点になります。取調べや供述の段階での説明が、その後の手続に影響することがあります。ご家族が捜査の対象となった場合、どの類型に当たり得るのか、どのように対応すべきかを、できるだけ早く確認しておくことが大切です。 被害者・ご遺族の方へ。過失運転として扱われた事案であっても、事情によっては危険運転に当たると考えられる場合があります。そうした場合には、捜査機関への働きかけや、ドライブレコーダー・防犯カメラ映像などの証拠の確保が問題になります。何が記録として残っているかは、時間の経過とともに失われることもあるため、早めの確認が望まれます。 当職は、刑事弁護と交通事故の双方を取り扱っています。加害者側・被害者側のどちらの立場であっても、まずは状況をお聞きしたうえで、見通しと取り得る対応をご説明します。 |
茨城県南部のTX沿線・常磐線沿線は、通勤も送り迎えも買い物も自動車が中心の地域です。とりわけ守谷市・つくばみらい市は、つくばエクスプレス開通後に新しい住宅地が広がり、中央線のない生活道路が住宅街に張り巡らされています。9月の法定速度引き下げは、まさにこうした「自宅の周りの道」に直接関わる変更です。日常的に運転する地域だからこそ、速度や飲酒に関するルールの変更点を、家族で確認しておく意味は大きいといえます。
交通事故の加害者・被害者いずれの立場でも、危険運転か過失運転かによって見通しは大きく変わります。当職は刑事弁護と交通事故を取り扱っており、まずは状況をお聞きしたうえで、取り得る対応をご説明します。お困りの際はご相談ください。
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・自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(e-Gov法令検索/デジタル庁)
・生活道路における自動車の法定速度が引き下げられます(警察庁)
・常識が変わる!生活道路は法定速度30km/hへ(政府広報オンライン)
・法務省(自動車運転死傷処罰法・道路交通法の一部改正に関する情報)
2026年6月25日:改正法成立を受けて公開。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の事案への法的アドバイスではありません。具体的なご相談は弁護士にお問い合わせください。なお、本記事の内容は令和8年(2026年)6月時点の情報に基づいています。改正法は2026年6月25日に成立し、施行は公布から20日経過後(7月中の見込み)です。施行日・政令・運用の詳細は、今後の公布内容により変わる可能性があります。最新の情報は法務省・警察庁・e-Gov法令検索等でご確認ください。
公開日:2026年6月25日|最終更新日:2026年6月25日
