祖父・曾祖父名義のままの不動産を相続したとき
— 数次相続の遺産分割の進め方
| Q | 親が亡くなり相続手続きを進めようとしたら、実家の土地が祖父名義のままでした。どうすればよいですか? |
| A |
結論として、祖父の代までさかのぼって相続人を確定させ、遺産分割と名義変更(相続登記)を行う必要があります。
不動産の名義は、亡くなった方(被相続人)から相続人へ自動的に書き換わるわけではありません。相続登記をしない限り、登記簿上の名義は祖父のままです。相続人は相続開始の時から被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継しますが(民法896条)、それを登記簿に反映するには別途、相続登記の申請が必要です。 まず、登記事項証明書(登記簿)で現在の名義人を確認します。名義が祖父のままであれば、祖父が亡くなったときの相続から順に整理していくことになります。「親名義のはず」と思っていた土地が、実は祖父・曾祖父名義のまま、というケースは珍しくありません。
根拠|民法(明治29年法律第89号)第896条:相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。
|
| Q | 「数次相続」とは何ですか?相続人が増えるというのは本当ですか? |
| A |
結論として、数次相続とは、ある相続の遺産分割が終わらないうちに相続人が亡くなり、次の相続が重なって発生することをいいます。遺産分割に加わるべき相続人は、世代を経るごとに増えていきます。
たとえば祖父が亡くなり、その遺産分割をしないうちに父も亡くなると、祖父の相続人だった父の地位(相続分)が、今度は父の相続人(母・自分・きょうだいなど)に引き継がれます。曾祖父名義のままであれば、曾祖父→祖父→父→自分と、複数の相続が積み重なっていることになります。 民法898条は「相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する」と定めています。遺産分割が済むまで、不動産は相続人全員の共有状態に置かれます。相続が重なるほど共有者(=遺産分割の当事者)が増え、中には一度も会ったことのない遠縁の親族が含まれることもあります。
根拠|民法第898条第1項:相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。
「数次相続」と似た言葉に「代襲相続」があります。代襲相続は、本来相続人になるはずの人が被相続人より先に亡くなっている場合に、その子(孫など)が代わりに相続するものです。祖父が亡くなった時点で父がすでに亡くなっていれば代襲相続、祖父の相続後に父が亡くなれば数次相続、と整理されます。どちらに当たるかで相続人の範囲が変わるため、確認が必要です。
数次相続で「遺産分割の当事者」が増えていくイメージ
— 具体的な相続人の範囲は戸籍を確認して確定します —
|
| Q | 祖父や曾祖父の代の相続だと、相続人や取り分が今のルールと違うと聞きました。本当ですか? |
| A |
結論として、違うことがあります。相続には「亡くなった時点(相続開始時)に施行されていた法律」が適用されます。昭和22年5月2日以前に亡くなった方の相続には、現在とは異なる旧民法の「家督相続」が適用されることがあり、現在の法定相続分をそのまま当てはめると誤ります。
不動産の名義人がいつ亡くなったかによって、適用される相続のルールが変わります。大きく分けると、次の3つの時期があります。
亡くなった時期で「適用される相続のルール」が変わる
たとえば、曾祖父が戦前に亡くなり、戸主だった曾祖父の家督を長男が単独で相続していた、というケースでは、その土地はその時点で長男1人のものとして承継されています。これを知らずに「曾祖父の子全員で均等に分ける」という前提で進めると、相続関係を誤って整理してしまうことになります。 そのため、数次相続では、各世代の被相続人がいつ亡くなったかを戸籍で一件ずつ確認し、その時代の法律に従って相続人と取り分を判断する必要があります。古い相続が混じっている場合は、特に慎重な確認が必要な部分です。
根拠|相続に適用される法律(相続開始時の法律):相続は、被相続人が死亡した時点で施行されていた法律によって規律されます。現在の相続に関する規定(共同相続・法定相続分)は、昭和23年1月1日から施行されています(民法の一部を改正する法律〔昭和22年法律第222号〕附則)。それより前に開始した相続には、当時の旧民法(家督相続など)が適用されます。
|
| Q | 遺産分割協議は相続人全員でやらないといけませんか?一人でも反対したり、連絡がつかない人がいたらどうなりますか? |
| A |
結論として、遺産分割協議には共同相続人全員の合意が必要で、一人でも欠けた協議は無効です。全員の合意が得られないときは、家庭裁判所の調停・審判を利用することになります。
民法907条1項は、共同相続人はその協議で遺産の全部または一部の分割をすることができると定めています。これは相続人全員が参加して合意することを前提としており、一部の相続人を除いてまとめた協議書は効力を持ちません。 そのため、まずは相続人を漏れなく確定させる必要があります。確定には、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍(戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍)を集め、相続人を一人ずつ追っていく作業が必要です。数次相続では、各世代についてこの作業を行うため、集める戸籍は膨大になりがちです。 連絡がつかない・話し合いに応じない相続人がいて協議が調わない、あるいは協議そのものができないときは、各相続人が家庭裁判所に遺産分割を請求できます(民法907条2項)。
根拠|民法第907条(抜粋):第1項 共同相続人は、…いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる。/第2項 遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その全部又は一部の分割を家庭裁判所に請求することができる。
|
| Q | 名義をそのまま放置しておくと、何か問題がありますか? |
| A |
結論として、放置している間も不動産は相続人全員の共有状態が続き、他の相続人の持分の差押え、さらなる数次相続による当事者の増加といったリスクがあります。加えて、相続登記の義務化により過料の対象にもなり得ます。
共有状態では、各相続人が自分の法定相続分(持分)を持っています。たとえば他の相続人がその持分について債務を抱え、債権者が代わりに相続登記をしたうえで持分を差し押さえる、といった事態も起こり得ます。こうなると、自分の知らないところで権利関係が動いてしまうことがあります。 また、放置している間にさらに相続人が亡くなれば、当事者はいっそう増え、話し合いはより難しくなっていきます。後の世代に問題を引き継がせないためにも、早めに整理しておくことが大切です。
⚠️ 令和6年4月1日から相続登記が義務化されました。正当な理由がないのに期限内に申請しないと、10万円以下の過料の対象となり得ます(不動産登記法164条1項)。祖父・曾祖父名義のまま放置されている過去の相続も対象です(詳しくはこのあと相続登記の項目で説明します)。
根拠|不動産登記法(平成16年法律第123号)第164条第1項(抜粋):…第七十六条の二第一項…の規定による申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、十万円以下の過料に処する。
|
| Q | 相続登記の義務化で、いつまでに手続きをしないといけませんか?祖父・曾祖父の代の古い相続も対象ですか? |
| A |
結論として、相続登記の義務化は令和6年4月1日に始まり、過去に開始した相続も対象です。施行日より前に開始した相続については、令和9年(2027年)3月31日まで(不動産の取得を知った日から3年が後に来る場合はその日まで)に登記を申請する必要があります。
不動産登記法76条の2第1項は、相続により所有権を取得した相続人は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その所有権を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記を申請しなければならないと定めています。 施行日(令和6年4月1日)より前に開始していた相続も義務化の対象で、この場合は施行日から3年、つまり令和9年3月31日までが期限とされています(不動産を相続で取得したことを知った日が令和6年4月以降であれば、その日から3年)。祖父・曾祖父名義のまま放置されている不動産は、まさにこの対象になります。 すぐに遺産分割がまとまらない場合には、「相続人申告登記」という簡易な方法があります(不動産登記法76条の3)。自分が相続人である旨を法務局に申し出ることで、ひとまず申請義務を果たしたものとみなされる制度です。ただしこれは暫定的な対応で、遺産分割が成立したら、その日から3年以内に正式な相続登記を申請する必要があります。また、相続人申告登記だけでは、その不動産を売却したり担保に入れたりすることはできません。
さらに、遺産分割が成立して不動産を取得した場合は、その遺産分割の日から3年以内に、結果を反映した登記を申請する必要があります。
根拠|不動産登記法第76条の2第1項(抜粋):所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。
過料は、期限を過ぎたら直ちに科されるものではなく、登記官が申請を促す催告をし、それでも正当な理由なく申請しない場合に裁判所へ通知される運用とされています。過料は行政上のペナルティで、いわゆる前科がつくものではありません。とはいえ放置するメリットはありませんので、早めの対応をおすすめします。
|
| Q | 古い相続だと、長年その土地を守ってきた人の貢献や、生前の贈与は考慮してもらえないのでしょうか? |
| A |
結論として、相続開始(被相続人の死亡)から10年を過ぎてから行う遺産分割では、原則として「寄与分」や「特別受益」を反映できず、法定相続分(または指定相続分)で分けることになります。祖父・曾祖父名義の古い相続は、この期間を過ぎていることが多く、注意が必要です。
通常の遺産分割では、被相続人の財産の維持・増加に特別に貢献した人の取り分を増やす「寄与分」や、生前に多額の贈与を受けた人との公平を図る「特別受益」を考慮して、各相続人の取り分(具体的相続分)を決めます。 しかし、令和5年4月1日に施行された制度(民法904条の3)により、相続開始から10年を経過した後の遺産分割では、原則としてこれらの主張ができなくなり、法定相続分などによる画一的な分割になります。古い相続では「先祖代々この土地を守ってきた」という事情が取り分に反映されにくくなる、ということです。
⚠️ 過去に開始した相続には経過措置があり、令和10年(2028年)3月31日まで(相続開始から10年が後に来る場合はその日まで)に家庭裁判所へ遺産分割を申し立てれば、寄与分・特別受益を主張できます。話し合い(協議)だけでは足りず、家庭裁判所への申立てが必要な点に注意が必要です。
前の項目の相続登記の期限(過去の相続は令和9年3月末まで)とあわせて、古い相続には「登記」と「取り分の主張」で別々の期限がある、と意識しておくと安心です。
なお、相続開始から10年を過ぎていても、相続人全員が合意すれば、寄与分・特別受益を踏まえた分割をすること自体は可能です。また、10年を経過する前に家庭裁判所へ分割を求めていた場合や、やむを得ない事由があった場合などの例外もあります。
根拠|民法第904条の3(抜粋):前三条の規定は、相続開始の時から十年を経過した後にする遺産の分割については、適用しない。ただし、次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。(第一号・第二号として、10年経過前などに家庭裁判所へ遺産分割を請求した場合等が定められています。)
※「前三条」とは、特別受益(903条・904条)と寄与分(904条の2)の規定を指します。 |
| Q | 相続した先祖の土地が、正直なところ使い道がありません。手放すことはできますか? |
| A |
結論として、相続放棄や、一定の要件を満たす場合の相続土地国庫帰属制度といった選択肢が考えられます。ただし、いずれも要件・効果に注意が必要で、安易な判断はおすすめできません。
相続放棄をすれば、その相続については初めから相続人でなかったものとみなされます(民法939条)。ただし、放棄は不動産だけを選んで行うことはできず、預貯金などプラスの財産も含めてすべてを放棄することになります。また、原則として自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内という期間制限があります(民法915条1項)。 一方、相続土地国庫帰属制度(令和5年4月27日施行)は、相続した土地を国に引き取ってもらう制度です。もっとも、建物がないこと、担保権や使用収益権が設定されていないこと、権利関係に争いがないことなど一定の要件があり、さらに管理費用相当額の負担金の納付が必要です。すべての土地が対象になるわけではありません。 どの選択肢が適しているかは、財産全体の状況や相続人の意向によって変わります。
相続放棄や国庫帰属の利用は、他の財産への影響や期間制限を踏まえた検討が必要です。判断に迷う場合は、財産の全体像を整理したうえで弁護士にご相談ください。
|
| Q | 相続人が多く、自分では話をまとめられそうにありません。弁護士に相談するとどう違いますか? |
| A |
結論として、相続人の調査・確定、遺産分割協議の取りまとめや交渉、まとまらない場合の遺産分割調停・審判の代理は、弁護士が代理人として対応できる業務です。
数次相続では、相続人の確定だけでも戸籍収集が大量になり、所在の分からない相続人を探す必要が生じることもあります。弁護士は、相続人の調査から、各相続人との連絡・協議のとりまとめ、遺産分割協議書の作成まで、代理人として進めることができます。 話し合いで合意に至らないときは、家庭裁判所の手続きに移行します。遺産分割の調停は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所または当事者が合意で定める家庭裁判所に申し立てます(家事事件手続法245条1項)。調停でまとまらなければ審判に移り、審判は相続が開始した地(被相続人の最後の住所地)を管轄する家庭裁判所が扱います(同法191条1項)。
茨城県南部の家庭裁判所(相手方の住所地に応じて):
・龍ケ崎支部…守谷市・取手市・牛久市・龍ケ崎市・稲敷市・利根町など ・土浦支部…つくばみらい市・つくば市・土浦市・かすみがうら市・阿見町など ・下妻支部…常総市・坂東市・下妻市・結城市・筑西市・古河市など なお、相続登記の具体的な申請手続については司法書士、相続税については税理士が専門としています。弁護士は、相続人間の話し合いや争いの解決という部分を担います。必要に応じて、これらの専門家と連携しながら進めることもあります。 |
守谷市・取手市・常総市・坂東市・つくばみらい市などの茨城県南部は、つくばエクスプレスや常磐線沿線で宅地化が進む一方、農地・山林や旧家の宅地が今も多く残る地域です。先祖代々受け継がれてきた土地が、祖父・曾祖父名義のまま登記されずに残り、子や孫の世代が東京方面など各地に出て、相続人が広く分散しているケースが見られます。とくに旧家では、戦前に亡くなった戸主(家の代表者)名義のまま土地が残っていることもあり、その場合は当時の旧民法(家督相続など、本記事Q3参照)が適用され、現在の法定相続分とは相続人も取り分も異なることがあります。誰がいつ亡くなったか(相続の開始時期)によって適用される法律が変わるため、市町村合併で本籍地が変わっている場合も含め、戸籍をたどって一件ずつ確認することが出発点になります。何代も前の名義のままの不動産は、早めに現状を整理しておくことが、後の世代に負担を残さないことにつながります。
祖父・曾祖父名義のままの不動産の遺産分割は、相続人の確定から協議のとりまとめ、場合によっては家庭裁判所の手続きまで、段階を追って進めていく必要があります。まずは現在の状況をお聞きしたうえで、進め方をご説明します。守谷市・取手市・常総市・つくばみらい市・坂東市をはじめ、茨城県南部・千葉県北西部にお住まいの方からのご相談をお受けしています。
📞 050-3623-1320
守谷市・取手市・つくばみらい市・常総市・坂東市など、TX(つくばエクスプレス)沿線・常磐線沿線の地域からのご相談に対応しています。お住まいの地域のページもご覧ください。
守谷市の法律相談 › 取手市の法律相談 › つくばみらい市の法律相談 › 常総市の法律相談 › 坂東市の法律相談 › 弁護士 吉津和輝 トップページ ›守谷市・取手市・常総市・つくばみらい市・龍ケ崎市・牛久市・つくば市・土浦市・野田市・我孫子市・北柏をはじめ、茨城県南部・千葉県北西部にお住まいで、祖父・曾祖父名義のまま残っている不動産の相続・遺産分割についてお困りの方からのご相談をお受けしています。弁護士 吉津和輝(茨城県弁護士会所属)までお気軽にどうぞ。
・e-Gov法令検索「民法」(デジタル庁)
・e-Gov法令検索「不動産登記法」(デジタル庁)
・e-Gov法令検索「家事事件手続法」(デジタル庁)
・法務省「相続登記の申請義務化について」
・法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」
・裁判所「茨城県内の管轄区域表」
2026年6月24日:記事を公開しました。
2026年6月24日:旧民法(家制度・家督相続)が関わる古い相続の注意点(Q3)と、相続開始から10年経過後は寄与分・特別受益の主張が制限される点(Q7、民法904条の3)を追記しました。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別事案への法的アドバイスではありません。具体的なご相談は弁護士にお問い合わせください。なお、本記事の内容は令和8年(2026年)6月時点の情報に基づいています。法律・実務の取り扱いは今後変更される可能性があります。
公開日:2026年6月24日|最終更新日:2026年6月24日
