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相続放棄したら空き家・農地の管理義務はどうなる? |守谷市・取手市・つくばみらい市・常総市| 改正民法940条と、茨城で実家を放棄する前の注意点

YOSHITSU LAW · COLUMN

相続放棄したら空き家・農地の管理義務はどうなる?
— 改正民法940条と、茨城で実家を放棄する前の注意点

相続・遺産分割
弁護士 吉津和輝 / 茨城県弁護士会所属
弁護士 吉津和輝(よしつ かずき)
茨城県弁護士会所属/2018年12月弁護士登録(登録から約7年)
主な取扱分野:相続・遺産分割・相続放棄/家族法/不動産をめぐる紛争
茨城県南・県西で、誰も住まなくなった実家・空き家や、農地・山林の相続放棄をお考えの方へ。「相続放棄をすれば、その不動産の管理から完全に解放されるのか」は、令和5年4月1日に施行された改正民法によって扱いが整理されました。本記事では、相続放棄をした後の管理義務(保存義務)が、誰に・いつまで生じるのかを、改正民法940条にもとづいて解説します。
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弁護士 吉津和輝(茨城県弁護士会所属)/〒302-0128 茨城県守谷市けやき台3-28-7
Q 相続放棄をすれば、空き家や農地の管理義務からも完全に解放されますか?
A
結論として、放棄の時にその財産を「現に占有していない」場合は、改正民法940条のもとで保存義務を負いません。

相続放棄をすると、その人は初めから相続人とならなかったものとみなされます(民法939条)。もっとも、放棄をした人がその後も財産にまったく関わらなくてよいかどうかは、別の条文で定められています。

従来の民法940条1項は、相続を放棄した人について「放棄によって相続人となった者が管理を始めることができるまで」管理を継続しなければならないと定めていました。占有しているかどうかを問わず管理義務が残ると読めたため、遠方の不動産まで負担を負うのか、いつまで続くのかが必ずしも明確ではありませんでした。

令和5年4月1日に施行された改正民法940条1項では、義務を負う人が「放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているとき」に限定されました。これにより、遠方に住み、管理に一切関与していなかった実家や農地について相続放棄をした場合は、保存義務を負わないと整理されています。

【根拠】民法(明治29年法律第89号)第939条:「相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。」
改正前(〜令和5年3月31日)
・放棄した者が「管理を継続」する義務
・占有の有無は条文上明確でない
・終わる時期が分かりにくい
現行(令和5年4月1日〜)
・放棄時に「現に占有」する者のみが対象
・義務の内容は「保存」(最小限)
・引き渡すまで、と期間が明確
— 図1:占有していない遠方の不動産は、現行法では保存義務の対象になりません —
Q 「現に占有している」とは、具体的にどういう状態ですか?
A
結論として、「現に占有している」とは、その財産を事実上支配・管理している状態を指し、直接の占有と間接の占有のいずれも含みます。

典型的なのは、被相続人と同居していて、相続放棄をした後もその家に住み続けているケースです。自分は別に住んでいても、鍵を持って実家を管理し、出入りして家財を保管しているような場合も、事実上の支配があると評価されることがあります。

反対に、一度も住んだことがなく、管理にも一切関与していない遠方の実家・農地・山林は、一般に「現に占有」に当たらないと整理されます。改正前は占有していない遠隔地の不動産まで負担が残り得ましたが、相続放棄本来の趣旨(相続の負担から解放される)にそぐわないため、現行法では対象から外れることが明確にされました。

当たりやすい例
・同居していて放棄後も住み続けている
・鍵を管理し、出入り・家財保管をしている
・事実上その不動産を支配している
当たりにくい例
・遠方に住み、一度も住んだことがない
・管理・出入りに一切関与していない
・存在を知っていただけで支配していない
— 図2:判断のイメージであり、最終的な評価は事実関係によって異なります —
⚠️ 「現に占有しているか」は事実関係で評価が分かれることがあります。同居の有無や管理の度合いが微妙なケースでは、放棄の前に確認しておくことをおすすめします。判断に迷う場合は弁護士にご相談ください。
Q 保存義務を負う場合、いつまで・何をすればいいですか?
A
結論として、相続人または相続財産清算人にその財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって「保存」する義務を負います。

改正民法940条1項は、保存義務の終わる時期を「相続人又は相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間」と定めています。次順位の相続人が相続して財産を引き継いだり、相続財産清算人に引き渡したりすれば、義務は終了します。逆に、誰にも引き渡せていない間は義務が続くことになります。

「保存」とは、財産を滅失させたり損傷させたりしないという最小限の内容で、改正前の「管理を継続」よりも限定された義務とされています。たとえば建物が朽ちて他人に危険が及ばないように最低限の状態を保つ、といったイメージです。

【根拠】民法(明治29年法律第89号)第940条1項:「相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。」
Q 相続人全員が放棄したら、その空き家や土地は誰が管理するのですか?
A
結論として、相続人が不存在となるため、家庭裁判所に相続財産清算人の選任を申し立てる必要が生じる場合があります(民法952条)。

子・親・兄弟姉妹といった相続人が全員放棄すると、最終的に相続人が誰もいない状態になります。この場合、利害関係人(債権者や、財産を現に占有している人など)または検察官の請求により、家庭裁判所が相続財産清算人を選任します。清算人が選ばれて財産を引き継げば、現に占有していた人の保存義務もそこで終わります。

もっとも、清算人の選任を申し立てるには、清算人の報酬などにあてる予納金が必要になることがあります。金額は財産の内容や事案によって異なるため、申立てを検討する際は家庭裁判所や弁護士にご確認ください。「放棄さえすれば、誰かが自動的に片づけてくれる」とは限らない点に注意が必要です。

【根拠】民法(明治29年法律第89号)第952条1項:「前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の清算人を選任しなければならない。」
⚠️ 相続人全員が放棄しても、空き家や土地が自動的に国や自治体のものになるわけではありません。誰も清算人を選任しないまま放置されると、現に占有している人に保存義務が残り続ける場合があります。
Q 相続放棄すれば、固定資産税や草刈り・近隣対応からも逃れられますか?
A
結論として、放棄時に現に占有していなければ民法940条の保存義務は負いませんが、固定資産税など税の扱いや近隣トラブルへの対応は、保存義務とは別の問題として整理する必要があります。

民法940条の保存義務は、あくまで「放棄の時に現に占有している財産」を滅失・損傷させないための義務です。占有していなければこの保存義務は生じません。

一方、固定資産税は地方税であり、誰がいくら負担するか・いつ課税されるかは税法と市区町村の取り扱いの問題です。税の具体的な扱いについては、市区町村の窓口や税理士にご確認ください。また、現に占有・管理している空き家を放置して他人に損害が生じた場合などは、保存義務とは別の責任が問題になることもあります。

【補足】税負担の有無・金額・名義の扱いは、相続放棄の効果とは切り分けて考える必要があります。固定資産税・相続税など税に関する点は、市区町村または税理士にご相談ください。
Q 放棄ではなく、いらない土地を国に引き取ってもらう方法はありますか?
A
結論として、相続や遺贈で土地を取得した人が、その土地の所有権を国庫に帰属させることができる「相続土地国庫帰属制度」があります。相続放棄とは別のルートです。

相続放棄は「初めから相続人でなかった」とみなされ、その相続に関する財産を一切引き継がない手続きです。これに対して相続土地国庫帰属制度は、いったん相続・遺贈で土地を取得したうえで、その土地の所有権だけを国に帰属させる制度です。両者は性質が異なり、どちらを選ぶかで結論が変わります。

国庫帰属制度には、引き取ってもらえない土地の類型(建物がある土地、担保権が設定されている土地など)があるほか、審査手数料や負担金が必要になります。手続は法務局が所管しているため、利用を検討する際は法務局や司法書士にご確認ください。

ルートA:相続放棄
初めから相続人でなかったとみなされ、預貯金も借金も土地も一切引き継がない。プラスの財産も放棄する。
ルートB:相続して国庫帰属
いったん相続・遺贈で土地を取得し、要件・審査・負担金を満たしたうえで、その土地の所有権だけを国に帰属させる。
— 図3:どちらが適しているかは、ほかの財産や借金の有無によって変わります —
【根拠】相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(令和3年法律第25号)。同法は、相続又は遺贈(相続人に対する遺贈に限る)により土地の所有権等を取得した者が、その土地の所有権を国庫に帰属させることができる制度を定めています。
茨城県南・県西で実家を相続する方へ
守谷・つくば・都内などに移り住んだ世代が、常総・坂東・八千代などの旧村部にある実家や農地・山林を相続する、という構図は珍しくありません。こうした土地は買い手がつきにくく、誰も住まないまま管理だけが残りやすいため、「放棄したのに草刈りや管理から逃れられないのでは」という不安につながります。現行法では放棄時に現に占有していない不動産は保存義務の対象になりませんが、相続人全員が放棄した後の清算人選任や、国庫帰属制度の利用など、選択肢は事案ごとに変わります。なお、相続放棄の申述先は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。
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相続放棄をすべきか、空き家や農地・山林の管理がどうなるのか、相続財産清算人や国庫帰属制度のどれが適しているのか——状況をお聞きしたうえで、見通しをご説明します。判断に期限のある手続きもありますので、お早めにご相談ください。

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参考資料・情報源

民法(明治29年法律第89号)(e-Gov法令検索・デジタル庁)
相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(令和3年法律第25号)(e-Gov法令検索・デジタル庁)
e-Gov法令検索(デジタル庁)

更新履歴

2026年6月19日:記事を公開しました。

本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別事案への法的アドバイスではありません。具体的なご相談は弁護士にお問い合わせください。なお、本記事の内容は令和8年(2026年)6月時点の情報に基づいています。法律・実務の取り扱いは今後変更される可能性があります。
公開日:2026年6月19日/最終更新日:2026年6月19日