高額所得者の養育費・婚姻費用 — 算定表の上限を超えたとき|守谷・つくばみらい・取手・常総

家族法・離婚
YOSHITSU LAW · COLUMN

高額所得者の養育費・婚姻費用
— 算定表の上限を超えたときの計算方法

年収2000万円超 / 算定表に載っていない場合の実務的アプローチ
弁護士 吉津和輝 / 茨城県弁護士会所属
弁護士 吉津和輝(よしつ かずき)
茨城県弁護士会所属(登録番号57714)/2018年12月弁護士登録
主な取扱分野:離婚・婚姻費用・養育費・親権、相続、刑事弁護、交通事故
別居中または離婚協議中の方へ。
「相手の年収が2000万円を超えていて、養育費・婚姻費用の算定表が使えないと言われた」「算定表の上限金額より多くもらえるのか知りたい」——そのような疑問をお持ちの方は少なくありません。

標準算定表(令和元年12月改定)には収入の上限が設けられており、当事者の一方または両方がこの上限を超える高額所得者の場合、算定表をそのまま使うことができません。このような場合にどのような計算方法が用いられるのかを、弁護士の視点から解説します。
— 養育費・婚姻費用についてお困りの方へ —
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弁護士 吉津和輝(茨城県弁護士会所属)/〒302-0128 茨城県守谷市けやき台3-28-7
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01 標準算定表の「上限」とは何か

令和元年12月に改定された養育費・婚姻費用の標準算定表(「改定標準算定方式・算定表」)には、収入の上限が設けられています。

給与所得者(源泉徴収票の「支払金額」ベース)については総収入2000万円、自営業者(確定申告書の「課税される所得金額」ベース)については総収入1567万円(改定前の標準算定方式では1409万円)が上限です。

標準算定表の収入上限(改定標準算定方式)
給与所得者
上限:総収入 2,000万円
(源泉徴収票の支払金額)
自営業者
上限:総収入 1,567万円
(確定申告書の課税所得金額)
出典:裁判所「養育費・婚姻費用算定表」(令和元年12月改定)に基づく

当事者のいずれかの収入がこの上限を超える場合(以下「高額所得者」といいます)、算定表が対応していないため、別の計算方法を検討することになります。

婚姻費用の分担義務は、民法(明治29年法律第89号)第760条に「夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する」と規定されており、夫婦の収入に応じた柔軟な判断が求められます。

02 3つの計算方式

高額所得者の婚姻費用の計算方法として、実務上主に以下の3つの方式が用いられています。養育費については後述のとおり、方式の幅が異なります。

高額所得者の婚姻費用 — 主な3つの計算方式
① 上限頭打ち方式
算定表の上限年収(給与2000万円等)に対応する金額をそのまま適用する。最もシンプルで義務者に有利になりやすい。
② 基礎収入割合修正方式
高額所得者の税負担の増加等を反映して基礎収入割合を引き下げた上で、標準算定方式で計算する。義務者の年収が上限を1億円超えるまでが目安とされる。
③ 貯蓄率控除方式
高額所得者は収入のうち貯蓄・資産形成に充てる割合が大きいとして、統計上の貯蓄率を基礎収入の計算から控除する方式。②と考え方・仕組みは近い。
いずれの方式を採用するかは個別の事情により異なります

これらの方式はいずれも、単純に年収が高いほど際限なく婚姻費用・養育費が増えるわけではなく、高収入になるほど生活費に回せる割合が下がるという考え方を基礎としています。

⚠️ 予測の精度について
高額所得者の案件では、どの方式を採用するかが個別事情に大きく左右されるため、標準的な案件と比べて金額の予測精度が低くなる傾向があります。事前に弁護士に相談のうえ、具体的な見通しを確認されることをお勧めします。

よくあるご質問
Q1 算定表に上限があることは知りませんでした。なぜ上限があるのですか?
算定表は統計データをもとに作成されたものであり、高額所得者に対応するデータが十分でないため、上限が設けられています。

標準算定表は、総務省の家計調査等の統計データをもとに作成されています。改定標準算定方式の数値は平成29〜30年(まで)の統計データが基礎となっています。

高額所得者については、一般的な家計データに比べてサンプル数が少なく、統計的な裏付けが取りにくいこと、また収入が高い層では生活費・貯蓄・税負担のバランスが標準的な世帯と大きく異なることから、算定表の射程外とされています。

関連条文
民法(明治29年法律第89号)第760条(婚姻費用の分担)
「夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。」

民法第877条第1項(扶養義務)
「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。」

このように、婚姻費用・養育費はいずれも「資産、収入その他一切の事情を考慮」して決めるものであり、算定表はあくまで迅速な算定のための目安です。算定表の上限を超える場合には、個別事情を踏まえた計算が必要になります。

Q2 上限を超えた場合、どの計算方式が使われますか?
義務者の年収が上限をどの程度超えているかによって用いられる方式が異なり、超過が500万円程度までは上限頭打ち方式、それを超えると基礎収入割合修正方式または貯蓄率控除方式が用いられることが多いとされています。

実務上の目安として、以下のような整理がされることがあります。

義務者の超過額と計算方式の目安(婚姻費用)
超過が約500万円程度まで
①上限頭打ち方式が用いられることが多い
超過が500万円〜1億円程度
②基礎収入割合修正方式または③貯蓄率控除方式が用いられることが多い
あくまで目安であり、個別の事情により異なります

②基礎収入割合修正方式では、改定標準算定方式の上限年収における基礎収入割合(給与所得者は38%、自営業者は48%)を出発点に、高額所得者の実情に合わせて割合を引き下げて計算します。年収が上がるほど、公租公課(税・社会保険料)の負担割合が高くなり、自由に使える部分(基礎収入割合)が下がることが根拠とされています。

③貯蓄率控除方式は、②と考え方が近く、収入のうち貯蓄・資産形成に回る部分を基礎収入の計算から控除する手法です。

⚠️ 実務上の注意
どの方式を採用するかは、調停・審判の場での当事者間の交渉・主張によっても変わります。義務者側は低い金額になる方式を、権利者側は高い金額になる方式を主張することが多く、基礎収入割合の数値等について対立が生じやすい論点です。
Q3 養育費と婚姻費用で計算方式に違いはありますか?
養育費については、高額所得者の場合でも算定表の上限額を用いることが実務上の原則とされており、婚姻費用と比べて上限を大きく超える算定が認められにくい傾向があります。

婚姻費用と養育費は、根拠となる義務の性質が異なります。婚姻費用は夫婦間の「生活保持義務」(互いに同水準の生活を維持させる義務)を含むのに対して、養育費は親子間の扶養義務に基づくものです。

高額所得者の養育費については、算定表の上限額(給与所得者の場合、年収2000万円に対応する金額)を用いることが一般的とされています。算定表の上限を超える算定方式(②基礎収入割合修正方式等)が用いられることもありますが、婚姻費用と比べて採用される場面は限られる傾向にあります。

なお、過去の審判実例では、子1人あたり月額20万円に収まるケースが多かったとの指摘もありますが、個別の事情によって異なります(参考:判例タイムズ1111号292頁)。

⚠️ 婚姻費用に準じた養育費が設定されるケース
有責配偶者(不貞行為をした側など)が離婚を求めるケースでは、相手方(不貞をされた側)が算定表の上限を超える養育費を離婚に応じる条件とすることがあります。この場合、実質的に婚姻費用に準じた金額で養育費が合意されることもあります。
Q4 高額所得者の養育費について参考になる裁判例はありますか?
福岡高等裁判所平成26年6月30日決定では、給与所得が約6000万円の義務者について基礎収入割合を27%として養育費を算定した事例があります。

この裁判例は高額所得者の養育費算定においてしばしば参照されます。概要は以下のとおりです。

参考裁判例:福岡高等裁判所平成26年6月30日決定(養育費変更)
義務者の収入
給与所得者(医師・医療法人代表者)として総収入約6,172万円
裁判所の判断
年収2000万円を超える高額所得者の場合は基礎収入割合がさらに低くなるとして、基礎収入割合を27%と認定
判例タイムズ1410号100頁・判例時報2250号25頁・家庭の法と裁判1号88頁

この裁判例では、改定前の標準算定方式の上限年収(当時1409万円)での基礎収入割合が34〜42%とされていたところ、約6000万円という高額の収入に対してはそれよりも低い27%を採用しました。

この決定を意識した調停・審判において、高収入の義務者の基礎収入割合として27%前後の数値が参照されることがあります。ただし、裁判例はあくまで個別事案の判断であり、同様の結果が保証されるものではありません。

Q5 当事者間の合意で算定表の上限を超える金額を設定できますか?
はい。婚姻費用・養育費の金額は当事者間の合意で自由に決めることができ、算定表の上限を超える金額を合意することも可能です。

婚姻費用・養育費の金額は、基本的に夫婦・元夫婦間の合意で決めることができます。算定表はあくまで調停・審判での目安であり、合意があれば算定表と異なる金額を設定することは法律上禁止されていません。

ただし、合意した金額が著しく低額の場合(特に養育費)、子どもの利益の観点から後に問題になる可能性もあります。また、合意した金額については、強制執行を可能にするため公正証書(強制執行認諾文言付き)や調停調書などの書面にしておくことが重要です。

⚠️ 一度合意した後の変更について
調停・審判等で合意した養育費・婚姻費用は、その後の事情変更(義務者の収入の大幅な変動、子の進学等)があった場合に、変更を求める手続きを取ることができます。合意内容が適切かどうか、締結前に弁護士に確認することをお勧めします。
▌ 守谷・取手・つくばみらいエリアの事情

守谷市・つくばみらい市・取手市はつくばエクスプレス(TX)や常磐線沿線に位置し、東京都心へのアクセスがよいことから、都内に職場を持つ会社員・経営者世帯が多く居住しています。高額所得者の離婚案件は、こうした沿線エリアで一定数見られます。婚姻費用・養育費の調停・審判は、守谷市・取手市・つくばみらい市・常総市では水戸家庭裁判所下館支部が、龍ケ崎市・牛久市・つくば市等は水戸家庭裁判所土浦支部が管轄しています。管轄については個別にご確認ください。算定表の上限を超えるご事情がある場合、早めに弁護士にご相談いただくことで、調停・審判に向けた準備が整えやすくなります。

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参考・情報源
更新履歴
  • 2026年6月11日:公開

本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別事案への法的アドバイスではありません。具体的なご相談は弁護士にお問い合わせください。本記事の内容は令和8年(2026年)6月時点の情報に基づいており、法律・実務の取り扱いは今後変更される可能性があります。
公開日:2026年6月11日 | 最終更新日:2026年6月11日