別居して家を出た側の住宅ローン
— 婚姻費用との関係を弁護士が解説
家を出て別居をはじめた方へ。守谷・つくばみらい・取手のTX沿線エリアでは、30〜40代でマイホームを購入された方が多く、別居によって「自宅の住宅ローンを払い続けながら、別居先の家賃も発生する」二重負担に直面される方が少なくありません。さらに自宅に妻子が住み続けている場合、相手方からの婚姻費用請求も重なります。本記事では、家を出た側が知っておくべき住宅ローンと婚姻費用の整理を、TX沿線特有の事情を踏まえて解説します。
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家を出た夫が住宅ローンを払い続けるとき、婚姻費用も別途払うのですか?
夫婦には民法上、婚姻から生ずる費用を分担する義務があります。別居中であっても、法律上の婚姻関係が続いている限り、この義務は消えません。住宅ローンの支払いには「住居費」と「資産形成」の両面があるため、ローンを払っているから婚姻費用を払わなくてよい、という整理にはなりません。
「夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。」
家庭裁判所の調停・審判では「養育費・婚姻費用算定表」(令和元年改定版)を目安として金額を算出するのが通常です。算定表は夫婦双方が標準的な住居費を自分で負担している前提で組まれているため、夫がローンを払って妻子が自宅に居住している場合、算定表の額から妻側の標準的住居関係費を控除する処理が広く行われています。
義務者である夫が自宅を出て妻子と別居し、賃貸アパートで生活、自宅売却までの間、自宅の住宅ローンを全額負担していた事案。「標準算定表は、別居中の権利者世帯と義務者世帯が、統計的数値に照らして標準的な住居費をそれぞれ負担していることを前提として標準的な婚姻費用分担金の額を算定するという考え方に基づいている」とした上で、算定表上の婚姻費用額から「権利者の総収入に対応する標準的な住居関係費を控除するのが相当」と判断されました。
住宅ローン全額が婚姻費用から差し引かれないのはなぜですか?
住宅ローンを払うとローン残高が減り、その分だけ自宅不動産という資産の正味価値が増えます。これは支払った側の財産形成にあたります。一方で、配偶者と子の住居を確保している生活費(住居費)の側面もあります。
この二面性のため、家裁実務では算定表額から控除する金額を「権利者の年収に応じた標準的な住居関係費」に限定する処理が主流となっています(司法研修所『養育費、婚姻費用の算定に関する実証的研究』法曹会・令和2年・31頁の資料による標準的住居関係費の数値が用いられています)。
たとえば、算定表で月10万円が相当とされる事案で、夫が住宅ローン月7万円を払い、妻の年収が200万円未満であれば、10万円から約2万2,247円を差し引いた7万円台後半が婚姻費用月額となるのが一例です(あくまで目安であり、個別事案により異なります)。
住宅ローン額が突出して大きい事案、住宅ローン額が時期で変動する事案などでは、別の処理(夫の年収から住宅ローン額の一部を控除する方式・段階的控除等)が用いられる場合もあります。算定方法は一律ではなく、個別事案に応じた判断となります。
自分の不貞が原因で家を出た場合、住宅ローンの控除は受けられますか?
住居関係費の控除は、当事者間の公平を図るための例外的な調整です。別居の原因を作り出した側に有利な調整を行うことは公平に反するため、義務者に不貞などの有責性がある場合には、控除を否定する判断が示されることがあります。近年の裁判例も同じ傾向にあります。
義務者(夫)が不貞行為を行い、自宅を出て不貞相手と同居していた事案。「住宅ローンの返済については離婚の際の財産分与において清算すべきであり、これを婚姻費用の分担額の算定にあたって考慮するのは相当でない」と判示。別居の原因が主として義務者にあるとして、家賃と標準的住居関係費の差額を婚姻費用分担額から控除することを認めませんでした。
住宅ローンの調整について「公平の観点から権利者に留保されている住居関係費の限度で調整をすることは考えられる」としつつ、「義務者が不貞関係を生じて自宅を出て行った場合、これによって権利者に不利益を負わせるのは疑問であり、信義則上、分担額を減じないのが相当」と判示しました。
別居した夫が住宅ローンを負担しているとしても、別居の原因を作り出した夫に有利に婚姻費用額を調整することを認めない判断を下しました。
逆に、別居の主たる原因が婚姻費用を請求する側(権利者)にある場合や、相手方の暴力により居住を余儀なくされた事案など、信義則の評価は事案ごとに異なります。家を出た経緯と原因の整理は、別居開始の早い段階で記録化しておくことが大切です。
別居理由と「ローンを払っている事実」をどう主張・立証するかは、個別事案によって有利・不利が変わります。早めに弁護士にご相談されることをおすすめします。
別居の経緯・有責性の評価・住宅ローンの処理は、個別事情の組み合わせで結論が大きく変わります。早期に整理することで、調停・離婚協議全体の見通しが立ちます。
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守谷・つくばみらい・取手で調停を起こす場合、どこの裁判所ですか?
婚姻費用分担調停の申立先は、原則として相手方の住所地を管轄する家庭裁判所です(夫婦の合意により他庁に申し立てる合意管轄もあり得ます)。守谷・つくばみらい・取手はTX(つくばエクスプレス)沿線として一括りで語られることが多いですが、家庭裁判所の管轄区域では2つの支部にまたがります。
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龍ケ崎支部
守谷市・取手市
龍ケ崎市内に所在。守谷駅・取手駅のいずれからもJR・路線バス利用となります。
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土浦支部
つくばみらい市・つくば市
土浦市内に所在。つくばみらい市はTXの最寄駅から土浦支部までバス・タクシー等の移動が必要です。
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同じTX沿線に住んでいても、別居先・相手方の住所が変わると申立先の支部が変わります。たとえば「守谷の自宅から夫が出て、つくばみらい市内のアパートに住む」場合と「夫が自宅に残り、妻子が取手市内に転居」する場合とでは、相手方の住所が異なるため申立先支部が変わる場合があります。
支部が変わると期日の往復時間、地域の慣行(調停委員の進行スタイル等)が異なります。別居後すぐに調停申立てを予定されている方は、早い段階で見通しを立てることをおすすめします。
親からの頭金援助・親族間借入が絡むケースはどう整理しますか?
TX沿線エリアでマイホームを購入する際、頭金の一部を親が援助されているご家庭は珍しくありません。別居・離婚の場面では、その援助が「贈与」だったのか「親への借入」だったのかが争点になりやすい部分です。
争いになりやすいのは、「親からの援助は贈与だと聞いていた」「いや、いずれ返すつもりの借入だった」と当事者の認識が分かれるケースです。書面が残っていない場合は、当時の通帳記録、税務上の処理(贈与税の申告の有無等)、家族間のメッセージのやり取りといった間接的な事情から事実関係を組み立てることになります。
税務上の取扱い(贈与税の課税関係)については、税理士にご相談ください。財産分与や債務認定の場面での扱いと、税務上の扱いは別の整理になります。
守谷・つくばみらい・取手の地域実情
守谷市・つくばみらい市・取手市は、TX(つくばエクスプレス)の開業以降、子育て世代の流入が続いた地域です。守谷駅周辺やみらい平駅周辺の戸建てエリアでは、30代前半でフルローンを組んで4,000万円台のマイホームを購入される方が多く、別居が始まると「ローン3,000万円超が残った状態で、別居先の家賃も発生する」という構造になりがちです。
取手駅周辺の旧市街地・戸頭・井野エリアと、守谷・みらい平の新興住宅地では、住宅価格と購入時期の世代に違いがあり、別居・離婚時の財産関係も様相が変わります。子の小学校・幼稚園・保育園の校区を変えたくないという理由で、家を出た側が割高な家賃のアパートを単身で借りるケースもよく見られます。
こうしたTX沿線特有の事情は、画一的な「相場」では捉えきれません。住宅ローン残高、世帯収入、子の年齢と学校区、親からの援助の有無、別居の経緯——これらを総合的に整理して、婚姻費用と財産分与の見通しを立てる必要があります。
家を出た直後は、住宅ローンの支払い・別居先の家賃・婚姻費用の請求が同時に動き出し、月々のキャッシュフローが急に苦しくなります。早い段階で見通しを立てることが、その後の調停・離婚協議に向けた負担の分散につながります。
守谷市・取手市・つくばみらい市・常総市・龍ケ崎市・牛久市・つくば市・土浦市・野田市・我孫子市・北柏をはじめ、茨城県南部・千葉県北西部にお住まいの方からのご相談をお受けしています。
参考資料
・e-Gov法令検索 民法(第752条・第760条)
・茨城県内の管轄区域表(裁判所)
・裁判所ウェブサイト 養育費・婚姻費用算定表(令和元年改定)
・司法研修所編『養育費、婚姻費用の算定に関する実証的研究』法曹会・令和2年
2026年5月6日: 初版公開
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別事案への法的アドバイスではありません。具体的なご相談は弁護士にお問い合わせください。なお、本記事の内容は2026年(令和8年)5月時点の情報に基づいています。法律・実務の取扱いは今後変更される可能性があります。
公開日: 2026年5月6日 | 最終更新日: 2026年5月6日
