配偶者の浮気・不倫・不貞|職場や地域に知られず慰謝料請求を進めるには

家族法・離婚

配偶者の浮気・不倫・不貞|職場や地域に知られず慰謝料請求を進めるには

弁護士 吉津和輝(茨城県弁護士会所属)市川法律事務所に所属する弁護士です。

守谷市・取手市・つくばみらい市などの茨城県南部は、同じ小学校の保護者同士で顔がつながっていたり、職場と自宅が車で15分という距離感の方も多いエリアです。配偶者の不倫が発覚したとき、「慰謝料はきちんと請求したい。でも、子どもの学校や職場に話が広がるのは避けたい」というご相談は珍しくありません。こうした場合に実務上どのような進め方があるのか、Q&A形式で整理しました。

Qそもそも、配偶者の不倫相手に慰謝料を請求できる根拠は何ですか。
A
配偶者のある方と肉体関係を持つことは、他方配偶者の「婚姻共同生活の平和の維持」という法律上保護される利益を侵害する行為にあたり、不法行為として慰謝料請求の対象になります。根拠条文は民法の不法行為と慰謝料の規定です。
【根拠】民法(明治29年法律第89号)第709条:「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」
同法第710条:「他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。」
請求できる金額は、婚姻期間の長さ、未成年の子の有無、不貞関係の期間・頻度、発覚後の夫婦関係(離婚に至ったか、別居にとどまったか)等によって個別に変わります。一律に「いくら」と決まるものではありません。
Q取手や守谷は生活圏が狭いので、地域に話が広がるのが怖くて動き出せません。弁護士を入れれば噂は止められますか。
A
率直にお答えすると、弁護士が入ったからといって噂を完全に封じ込めることはできません。口が堅くない人はどこまでいっても口が堅くないですし、相手方が周囲に話してしまえば止める手段はありません。この点は正直に申し上げておきます。

それを前提にした上で、弁護士を入れるかどうかで差が出やすいのは「当事者同士の直接対峙によるエスカレーション」の部分です。ご本人が直接不倫相手に連絡を取ると、売り言葉に買い言葉で感情的なやり取りになりやすく、結果として双方が自分の家族・友人・職場の同僚に事情を話してしまい、両サイドから噂が広がっていくという流れが起きがちです。弁護士が窓口になると、少なくとも交渉のやり取り自体は冷静に進みやすく、当事者同士が直接言い合う場面を減らすことができます。

また、相手方にも配偶者がいる、いわゆるダブル不倫のケースでは、ご本人が直接内容証明を送ったことをきっかけに相手方の配偶者がその事実を知り、相手方の配偶者がご本人の自宅に押しかけてくる・ご本人の配偶者に接触してくる、といった事態に発展することもあります。弁護士を窓口に立てても相手方の家庭内の事情まではコントロールできませんが、少なくともご本人が直接その矢面に立たされるリスクは下げられます。

もう一点、見落とされがちですが重要なのがお子さんへの影響です。ご本人が自宅で不倫相手や配偶者と感情的な電話をしたり、押しかけてきた相手方配偶者と玄関先で言い争ったりする場面を、お子さんが日常的に見聞きしてしまうケースは少なくありません。お子さんの年齢にもよりますが、こうした場面の記憶は長く残ります。弁護士を窓口にして書面と電話のやり取りを事務所経由にまとめるだけでも、自宅で問題が展開される頻度は大きく下げられます。これは慰謝料の金額以上に、ご家庭にとって意味のある部分だと感じています。
「弁護士を入れたのに結局広まった」というケースもあり得ます。もっとも、重要なのは、噂をゼロにすることを目的にするのではなく、エスカレーションを避けながら法的な請求を進める、という現実的な落としどころを考えることです。
Q示談書に「他の人に話さない」という約束を入れることはできますか。
A
示談(和解)で解決する場合、合意書に「口外禁止条項」を入れることは一般的な実務です。具体的には、本件の存在・経緯・解決内容を第三者に口外しないことについて内容を定めます。

ただし、口外禁止条項は噂の発生そのものを物理的に止める仕組みではありません。相手方が自暴自棄になり、約束を破って誰かに話してしまえば、事実として広まるのを止めることはできず、事後的に問題になる得るという枠組みです。それでも、「契約違反になる」「違約金が発生する」という心理的な歯止めをかける意味で、実務上は広く使われています。

あわせて、職場・自宅への架電や訪問を禁じる条項、接触禁止条項などを状況に応じて組み合わせていくことになります。
「相手の勤務先に事実を通知する」といった行為は、名誉毀損等の別の法的問題を生じさせる可能性があります。どれだけ憤りがあっても、相手の職場に直接連絡するようなことにより逆に名誉棄損等で訴えを起こされるリスクもあります。
Q相手から「関係は合意ではなかった」と言われるリスクがあると聞きました。
A
交渉の過程で、不貞相手側が「合意ではなかった」という主張を持ち出してくるケースがまれにあります。こうした主張が出てくる背景・事実関係は事案ごとに大きく異なり、刑事の問題に発展するかどうかも含め、個別の検討が必要です。ここで重要なのは、ご本人(不貞をされた側の配偶者)が単独で相手方と直接やり取りを続けると、感情的な応酬の中で相手方の主張の構図に巻き込まれやすいということです。

不貞の事実関係・証拠の状況・相手方の主張を冷静に整理する段階で、弁護士が間に入ることの意義は大きいと感じています。
Q離婚までは考えていません。それでも相談していいですか。
A
もちろん問題ありません。実務上、不倫発覚後のご相談のうち、離婚を前提としないケースは一定数あります。お子さんの年齢、住宅ローン、地域のつながり、ご両親との同居など、離婚以外の選択肢を検討する理由はご家庭ごとに様々です。離婚するかどうかを決めないまま、まずは不倫相手との関係清算(接触禁止の合意)と慰謝料の取得だけを目的として交渉を行う、という進め方も可能です。ご相談の段階では、方針を一つに決めておく必要はありません。

配偶者の不倫問題は、感情・生活・経済のすべてが絡む難しいテーマです。まずは状況をお聞きした上で、取り得る方針の選択肢をご説明します。離婚するかどうかを決めていない段階でのご相談もお聞かせいてただいております。

弁護士 吉津和輝(登録番号57714)
茨城県弁護士会所属
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本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別事案への法的アドバイスではありません。具体的なご相談は弁護士にお問い合わせください。なお、本記事の内容は令和8年(2026年)4月時点の情報に基づいています。法律・実務の取り扱いは今後変更される可能性があります。