社内不倫・不貞・浮気の慰謝料請求|同じ職場だからこそ知っておきたいこと

【離婚・男女問題】

社内不倫・不貞・浮気の慰謝料請求|同じ職場だからこそ知っておきたいこと

弁護士 吉津和輝(茨城県弁護士会所属)市川法律事務所に所属する弁護士です。

東京などの大都市圏と異なり、茨城県南部は人口規模が小さく、職場の外で新しい人間関係が生まれる機会が限られています。職場が日常の人間関係の中心になりやすい環境だからこそ、社内での不倫が起きやすい土壌があるともいえます。
また、人事異動で数年ごとに顔ぶれが変わる職場では、「どうせすぐ異動になる」という気軽さが関係のきっかけになることもあります。しかし異動後や発覚後に問題が表面化し、慰謝料請求に発展するケースは少なくありません。
社内不倫には、通常の不倫とは異なる問題が伴います。慰謝料の請求方法から接触禁止の取り決め方まで、ポイントを解説します。

Q社内不倫でも慰謝料を請求できますか?
A

はい、請求できます。社内・社外を問わず、不貞行為(配偶者以外との肉体関係)があれば、不法行為に基づく慰謝料請求が認められます。

【根拠】民法(明治二十九年法律第八十九号)第709条:「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」

同第710条:「他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。」
不貞行為は「夫婦の貞操義務」や「婚姻共同生活の平和」という法律上保護される利益を侵害するとして、慰謝料請求の根拠になります。
Q請求できる相手は配偶者だけですか?それとも不倫相手にも?
A

原則として、配偶者と不倫相手の双方に請求できます。両者が共同で不法行為を行ったと評価されるためです。

【根拠】民法第719条第1項:「数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。」
ただし、不倫相手が「相手に配偶者がいることを知らなかった」「知らないことに過失もなかった」と証明した場合、不倫相手への請求が認められないこともあります。
また、受け取れる慰謝料の総額は損害の範囲内であり、配偶者と不倫相手の双方から「二重取り」ができる訳ではありません。
Q社内不倫の慰謝料は通常の不倫と比べて変わりますか?
A

慰謝料額は、関係の継続期間・頻度、婚姻期間、子どもの有無、婚姻関係への影響の大きさなど、個別の事情を総合して判断されます。

上司・部下など立場の差がある関係で、その立場を利用した経緯が認められる場合は、悪質性の一事情として考慮される可能性はあります。ただし、これも社内不倫に限った話ではなく、不貞行為の態様・悪質性という一般的な考慮要素の一つです。慰謝料の見通しについては、個別の状況を踏まえて弁護士にご相談ください。
Q相手は毎日顔を合わせる同僚です。請求すること自体、ためらってしまいます。
A

社内不倫の難しさの一つが、この「請求しづらさ」です。相手が見知った同僚・上司・部下であること、内容証明を送った翌日にも職場で顔を合わせること、共通の同僚に知られるリスク――こうした事情が、被害を受けた側の行動を心理的に縛ります。

守谷・取手・つくばみらいといった茨城県南部のエリアでは、同じ沿線・同じエリア内で人事異動を繰り返す職場も多く、「あの会社の人」「あの町の人」という狭いコミュニティの中での話になりがちです。職場だけでなく地域全体に知れ渡るリスクを感じやすく、「大事にしたくない」という気持ちが請求をためらわせる一因になります。

また、証拠の収集においても、相手との距離が近い分、調べようとすると気づかれやすいという問題があります。

こうした状況では、弁護士に交渉を委任することで、自分が前面に出ずに手続きを進めることができます。相手との直接のやりとりを避けながら請求できるのは、弁護士に依頼することの実際的なメリットの一つです。
⚠️ 「職場に知られたくない」という気持ちから請求をためらい続けると、不法行為の時効(損害および加害者を知った時から3年)が経過してしまう場合があります。早めに状況を整理することをお勧めします。
【参考】民法(明治二十九年法律第八十九号)第724条第1号:「不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。一 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。」
Q合意のときに「接触禁止」を入れたい。でも同じ職場だと難しいのでは?
A

社内不倫では、接触禁止条項の組み方が通常の不倫と異なります。
同じ職場にいる以上、「一切の接触を禁止する」と書いても実態にそぐわない部分が出てきます。業務上どうしても発生するやりとりまで禁じることはできないためです。

【実務上のポイント】
①「業務上必要な最小限の連絡を除く」と但し書きを入れて、業務外の私的な接触・連絡を禁じるかたちにする
②私的な連絡の禁止などを定める
③違反した場合の違約金条項を設ける(もっとも、心理的な制約の側面が大きいです。)
⚠️ 「接触禁止」の文言だけを入れても、職場での業務上のやりとりは「違反」かどうか解釈が割れやすくなります。条項の内容を具体的に定めておくことは重要です。
Q職場に居づらくなることへの対処はできますか?
A

社内不倫が発覚した後、当事者が同じ職場で働き続けることで、精神的な負担が生じるケースは少なくありません。

ただし、相手を退職させることは強制できません。労働者には就労の自由があり、当事者間で取り交わす示談書によって相手の雇用関係を左右することはできないためです。仮に示談書に「退職する」と記載しても、相手が拒否した場合に法的に強制する手段はありません。

現実的な対応としては、示談書に「部署異動・配置転換を会社に申し入れることに協力する」という条項を盛り込む方法があります。ただしこれも、会社の人事権の問題となるため、実際に異動が実現するかどうかは会社の判断次第です。状況に応じた対応方法については、弁護士にご相談ください。
⚠️ 不倫相手や配偶者に対して過剰な職場内での働きかけ(噂の流布・嫌がらせ等)を行った場合、名誉毀損や不法行為として逆に責任を問われる可能性があります。まず、弁護士に確認することをお勧めします。
Q証拠がない場合でも請求できますか?
A

慰謝料請求には、不貞行為があったことの証明が必要です。証拠なしに請求しても、相手方が否認した場合に請求が認められないことがあります。

社内不倫の場合、2人でやり取りしたメッセージ、出退勤の記録、宿泊・外出の状況などが証拠として活用されることがあります。
どのような証拠を収集できるか、また取得方法に問題がないかについては、弁護士にご相談ください。
⚠️ 証拠の収集方法によっては、プライバシー侵害等の問題が生じることがあります。自力での収集を始める前に一度ご相談はお勧めします。

社内不倫の問題は、慰謝料請求に加えて、職場環境・示談書の内容・証拠収集など複合的な要素が絡みます。状況をお聞きした上で、取り得る対応をご説明します。

弁護士 吉津和輝
茨城県弁護士会所属
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本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別事案への法的アドバイスではありません。具体的なご相談は弁護士にお問い合わせください。なお、本記事の内容は令和8年(2026年)4月時点の情報に基づいています。法律・実務の取り扱いは今後変更される可能性があります。